第5話 事件1
ある日、自転車で仕事から帰ってきて、いつもの様に玄関のドアを開けて、「リュウただいまー」と、言うとリュウがいつもの様に「おかえりにゃぁ~!」と出迎えてくれました。
当時、私の住んでいた部屋は、お風呂無しの6畳一間でキッチン4畳半の和式トイレでした。
22歳と言う若さもあり、そんなにお給料も貰えなかったので、この部屋を借りるのが精一杯でした。
しかし、リュウが一緒だったので、苦しいとか全然感じませんでした。
リュウが出迎えてくれたので、玄関を上がってふと玄関のまん前にあるトイレのドアが少し開いているのが見えました。
「ん?」と私は思いました。
リュウも隣で、私と一緒に見ています。
私は、トイレのノブをつかみ、ドアを開けました。
開けた途端、「ひょえぇぇぇぇええええええ!!!!!」と、声を出してしまいました。
リュウは私の隣で何食わぬ顔をしています。
トイレの中は、トイレットペーパーの紙でいっぱいになっていました!!
私はリュウを見ました。
リュウと目が合いました。
リュウは「え?」と言わんばかりに猛ダッシュで6畳の部屋の背の高い家具の上に逃げて行きました。
私は「リュウゥゥゥウウウウウウ!!!!」と、叫んだのは言うまでもありません。
リュウは、私が完全にトイレの扉を閉め忘れた、少しの隙間から手を入れてトイレに入り
トイレットペーパーを見つけ、爪で引っ掛けてどんどんトイレットペーパーが出てくるのが楽しかったのか?ワンロール近くを出してしまったのでした。
私はこの大量のトイレットペーパーをどうしようかと考えました。
捨てるのはもったいない。濡れてないし。
仕方なく、残りのロールに巻いていく事にしました。
その様子を見に、リュウはやってきました。
「おかあしゃん。何してるにゃ?お腹空いたにゃ!」と言っているようでした。
しかし、私はこの作業が終わるまでリュウにはご飯をあげませんでした。
お仕置きです。
本人は悪いことをしたとは思ってはいないようでした。
ただ、楽しいことをしたとしか認識していないようでした。
でも、猛ダッシュで逃げたと言う事は、やはり悪いことをした…と、言う気持ちがあったのでしょうか?
やっと、トイレットペーパーのロールを巻き終わったので、夕飯にする事にしました。
ようやく、リュウもご飯です。
相変わらず、私の肩にのり「おかあしゃん、ご飯まだ?」と言っていました。
カルカンをあげると食べること、食べること。
食べ終わると、部屋中を駆け回ります。
私が食べている夕飯も欲しがるので、少しあげたりします。
「リュウちゃんね、もうトイレットペーパーで遊んじゃダメなんだからね?」
そうリュウに話すと「??」と言う感じで首を傾けます。
これは、またやるだろうな?と、感じた私でした。
リュウとは知恵比べかも知れないと思いました。
どう、リュウに勝つか?それが問題でした。
リュウはイタズラの天才でした。
この事件がいわゆる「トイレットペーパー事件」でした。
しかし事件はまだまだ続くのです。
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