第11話 ホントの気持ち

 原田君とお祭りに一緒に行くのは、あこがれてたけど……


 浴衣ゆかた草履ぞうりで、いつものようにスムーズに歩けなくて、おくれを取ってしまってた。


 でも、『手をつなごう』の一言が、言えなくて……

 原田君も、気付いたら私を待ってくれるけど、手を差し出しても、言ってもくれなくて……


 そんな時、自然に恋人つなぎしている佑香ゆうか登川とがわ君が目に飛びんで来た。

 浴衣の佑香は、りんごあめを持っていている方の手を私に振って来た。


 2人とも楽しそうな笑顔で……


 私達と違いぎる……


 かなしかった……

 思わず、目がうるんでしまっていた。

 

 哀しいのは、私達が、手も繫げていないせい……?

 

 それとも、佑香と登川君がすごく楽しそうだったから……?


 佑香達が通り過ぎた後、歩くペースが余計よけいに遅くなった。


「あっ、三池みいけさん、手を繋ごうか?」


 おそいよ……


 せめて、佑香達と会う前に言ってくれてたら……


 お祭りの場に不似合ふにあいなほど、涙腺るいせん決壊けっかいして涙があふれ出した。


「三池さん、どうしたの?」


「ごめんなさい。やっぱり、原田君と付き合えない。中一の時から、原田君の事は、ずっと好きだった。一緒の高校に行きたくて頑張がんばっていた。でも……」


「登川君が好きなんだね」


 私が露骨ろこつな反応したから、原田君にも一目瞭然いちもくりょうぜんだった。


「ごめんなさい」


「予感はしていた。けど、佐野さのさんと付き合い出したから、僕が入り込む余地よちが有るかもってこくっただけだから、僕の事は、気にしないで。友達の彼氏になって難しい状況だけど、本当に前世の御縁ごえんが有るなら、上手うまく行くと思う」


「でも、登川君が好きなのは、前世の私だから……」


 それなのに、佑香と付き合って、恋人繋ぎして、あんなに楽しそうにしていて……


 泣いているのは、私?

 それとも、私の中の瑤子ようこちゃん……?


「それなら、前世の恋人だったのは、この世で三池さんだけだよ!」


「確かに、そうだね」


 イヤな断り方をした私に対して、そんな風にはげましてくれるなんて、原田君って、こんなにいい人だったんだ……


「自信持って、前進してみなよ!」


「うん、ありがとう! 原田君を大好きでいて良かった!」


 お母さんに報告しなきゃ!

 私の大好きだった原田君は、頭も良いけど、性格も抜群ばつぐんって!

 こんな人をるなんて、どうかしてるんじゃないって思えるくらい!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る