第9話 仲を取り持つ事に

登川とがわ君に、お姫様抱っこされたの覚えてる? 沙希菜さきな、マジでズルイ~!」


 翌朝、通学途中の待ち合わせ場所に着くなり、佑香ゆうかからの大ブーイング。


「お姫様抱っこ!?」


 昨日、保健室に運ばれる前、そんな事になっていたの!


 私が気を失ってて、お互い良かったのかも。

 気付いてたら、うれしくても反抗して下ろしてもらいそう……


 お姫様抱っこか……

 気付いていて、その感覚味わいたかったな。


「登川君、あんな線が細いのに、沙希菜を抱き上げれるとは、細マッチョなんだ~! 私も、沙希菜と代わりたかった~!」


「登川君が心配しているのは、私じゃなくて、前世の私だよ」


 今の言葉は、自分にも言い聞かせたつもりだった。

 お姫様抱っこで、有頂天うちょうてんになっている自分に……


 だって、お姫様抱っこも、心配している相手も、私じゃなくて、全て瑤子ようこちゃんに対してだから!


「そうなんだ~。沙希菜の事は、どうでもいいの?」


「うん、私は原田君が好きって伝えた」


「じゃあ、私がこくったら、付き合ってくれるかな?」


 それは別問題な気がする……


「分かんないけど、まあ、佑香はカワイイから」


「沙希菜から登川君に頼んでよ~!」


 どうして、私が、そんな役を引き受けなきゃならないの?

 登川君が好きなのは、今でも瑤子ようこちゃんなのに……



 ところが、登川君に話したら、意外にも……


「佑香ちゃん? ああ、あの明るくてカワイイ子。いいよ」


「OKなの?」


 えっ、こんな簡単に決めちゃっていいの?


「その方が、沙希菜ちゃんもいいなら」


「あっ、うん。ありがとう。佑香に伝えるね」


 何だか拍子ひょうし抜けしちゃった!


 まさか、佑香と付き合う事、OKするなんて……

 だ、瑤子ちゃんだ……なんて言っても、結局、登川君もただの年頃の男子、カワイイ子には弱かったんだ。


 あっ、そうか……

 瑤子ちゃんの転生後が可愛かったら、そのまま付き合う予定だったけど、私みたいのだったからガッカリで、その穴埋あなうめしたかったんだ……

 そこへ、ちょうど佑香のようなカワイイ子が現れたから、そくOKした!

 はぁ~、別にいいんだけどね……



 いつも一緒に帰っている佑香が、登川君と一緒に帰るって言うから、こうなったら、図書室で勉強って思って、掃除当番の後、図書室に向かったら……

 

 登川君と佑香が一緒に並んで、教科書広げて勉強していた……


 それを見るなり、思わずUターンしちゃったけど、2人に見られてなかったよね?


 佑香は、浮かれて気付いてなかったと思うけど、登川君は、前回の事が有るから、気付かれていたかも知れない。

 

 ガリ勉の私が、どうしてここで引け目を感じて、引き下がらなきゃならないのか疑問だけど……


 佑香と登川君、遠目からでも絵になる2人だった……

 横に私がいても、そんな風にはならない……


 あの2人が視界に入る所で、勉強なんて出来ない。

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