第6話 圧倒的多数派

 涙だけじゃなくて……

 

 この後、登川とがわ君と話す想像だけで、心臓が飛び出しそうなくらいバクバク!

 どうしよう!


 まず涙を拭いて、深呼吸して、落ち着こう!


 そして、重要な事を思い出して!


 私が好きな人は、原田君!


 登川君は、今までいなかったような耽美たんび的なルックスで、予期しない現れ方だったから、気になっているだけ!


 その認識にんしきしていないと、登川君と話すうちに、また気持ち持って行かれる!


 玄関で待っていた登川君に、いさぎく近付いた。

 他に誰もいなくて、良かった!


「ごめん、僕がかせた?」


「ううん、もう帰るところだった」


 私が図書室に入った時点で気付かれてたら、とんぼ返りっぼくて不自然に感じられるかも。


沙希菜さきなちゃんと話したかったんだ」


 また、呼び……

 それだけで、心拍数しんぱくすうが上がりそうになるのに……


「私も、言いたい事が有った」


 ハッキリ言わなきゃ!

 原田君が好きって伝えたら、もう、登川君のペースに巻き込まれなくて済むんだから!


「沙希菜ちゃんからどうぞ」


 レディファースト……

 そんな心配こころくばりされるのも、最初で最後って考えると、その事を言ってもいいのかまよってしまう……


「あの……」


「先に僕から話した方が、話しやすい? 転校していきなり、あんな事を言って、ゴメンね。沙希菜ちゃんに好きな人がいたら、迷惑めいわくだっただろうなって後悔こうかいしていたんだ」


 後悔するくらいなら、少し様子見てから言うべきじゃない?

 

「そう迷惑だった! 私、原田君という好きな人がいるの!」


 後悔なんて言葉聞かされて、思わず、売り言葉に買い言葉になった。


「中二だし、好きな人がいても当然か。僕は気にしないけど」


 気にしない……って?

 気配きくばりした後は、図太ずぶとさアピール?


 分からない、この人……

 何が言いたいの?


「大体、って何? よくいわれるたましい片割かたわれとかだったら、2人とも前世を分かっているシンクロ現象が起きそうでしょう?」


「僕ら、魂の片割れ同士ってわけじゃないから」


 アッサリ言い切られた!


 そうなんだ……

 残念な気持ちになっているのは……気のせい?


「どうして、登川君は前世を知ってて、私は知らないの?」


「本人の魂の選択せんたくだよ。僕は知っている状態を選択した。君は忘れる事を選択したってだけ」


 圧倒的大多数派……って!

 もしかして、ディスられた?


 何、この人……?

 私、ホントに無理なんだけど!

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