第3話 注目と誤解

 転校早々、ただでさえ目立つ登川とがわ君が、なぞでしかない言葉をはっして来たから……


 先山さきやま先生と生徒の視線が、こっちに集中した!


「えっ……?」


 知らない!

 この人と顔見知りじゃない!

 間違いなく、初対面しょたいめん


 誰か、別の女子と勘違かんちがいいされてる?

 

 とか、言っていたけど、何?

 

 私として生まれて来る前の事なんて……

 分かるわけないのに!


 勘違いじゃなかったら……

 もっと目立ちたくて、からかっているだけ?


 わざと恋愛とはえんが無さそうな女子に、そんな事を仕掛しかけるなんて、見かけによらずあざとい性格している……


「どうして、三池みいけさん?」


「ただのガリ勉ブスじゃん!」


「このクラスには、可愛かわいい子いるのに」


ばつゲーム?」


 勝手な事を言うクラスメイト達。


 そりゃあ、そうでしょう……

 私だって、何かのドッキリ番組みたいな状況しか思いつかないもん。


「あのな~、登川! お前に用意した席は、こっちだが……」


 困り顔の先山さきやま先生が、席の方を指差した。


「分かってます。その前に、どうしても、彼女と話したかったんです」


 その登川の返答に、過剰かじょう反応を示す女子達。


「えっ、彼女だって!」


「三池さんを彼女呼び!」


 だから、勘違いは止めて!


 っていうのは、確かに、私を呼んだけど……

 この場合、は、恋人の意味じゃなくて、三人称単数の女性として私を指しているだけ!


 登川君も、登川君よ!

 どうして、誤解ごかいまねくような言い方するの?


 あっ、そうか……

 初対面で私の名前を知らないから、呼びでも仕方なかったのかも……


「私は、三池沙希菜さきなです」


 名乗る必要は、有るよね?

 そうしないと、また登川君は呼びしそうだから……


「現世では、沙希菜ちゃんというのか。教えてくれて、ありがとう」


 とかとか、引いてしまう事ばっか言っているのに……

 それでいて、思わず目を奪われる最上級の笑顔を浮かべてくるなんて……


 琥珀こはく色の優しいひとみ……

 その類稀たぐいまれな容姿にピッタリの、少しだけ甘い声。


 それに、って……

 男子から、名前で呼ばれたのって、久しぶりっていうか、多分、初めてかも。


 なんか、心地良い……

 このままずっといていたくなる……


「いえ……」


「沙希菜ちゃん、これから、よろしく」


 その耳あたりの良い声でサラリと言ってから、何事も無かったように、用意された席に座った登川君。


 女子達の羨望せんぼう嫉妬しっとまな差しが、チクチクと痛いくらいに向けられている。


 危険だ!


 登川君は、天使のような顔していながら、私の平穏へいおんな学生生活を台無しにする危険人物に違いない!

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