三一日目 八月二七日
第四二章 最終決戦
第二〇〇話 作戦の最終確認
シンヤさんは予定より少し早く、夜中の一時三〇分過ぎにやってきた。
最初に船台で会った時と同じ位大きく、もっと速度が出そうなバイクを操って。
「敵の反応は無かったな。何もなく、スムーズに着いたってところだ」
その後、シンヤさんも二階にテントを張って、そして就寝。
翌日、朝八時のレポートでの消去率は、昨日と同じ九一・四パーセント。
人間側の最高レベルも一〇六と変わらず。
掲示板の書き込みを含めて、変わった展開は全くないまま、プールで時間を潰したり、シンヤさんが皇居周辺その他をバイクで確認しに行ったり。
なお確認の結果はこんな感じだ。
「新宿のハイアットかヒルトンかどちらかに、二つの敵反応がある。他の反応は確認出来なかった。遠くへ行ったのか、逃げたのかはわからない」
そんな感じで時間が過ぎて、そして二七日となった。
まずは朝七時半に起きて、朝食を食べながら八時のレポートを確認。
やはり変化がない事を確認した後は、そのまま二階で作戦会議だ。
後ろに寄せたテーブルを二脚、椅子を四脚持ってくる。
更に上野台さんが何処からか持ってきたプロジェクターをパソコンにつないで、天井からスクリーンを下ろして、皇居東御苑の航空写真を投影した。
「田谷君、東御苑の魔物の方は、今のところ敵の反応はないよね」
「今のところ俺の魔法では、敵の反応はありません」
「なら一応、東御苑内の魔物の配置について、私が見てわかる限りを説明しておこうか」
上野台さんはそう言って、パソコンを操作する。
航空写真に赤く囲まれた場所が幾つか表示された。
「こんな感じで、北側の北桔橋門、平川門、東側の大手門、南側の桔梗門と、富士見櫓の下。それぞれの直近に位置する建物に、最低でも三〇〇体ずつ程度の魔物が配置されている。門や供溜警備派出所前から内側へ入ると、この魔物が出てきて足止めをする。そういった感じじゃないかな」
スクリーン下側、桔梗門と大手門の中間地点にある建物に、星マークがついた。
「ここが皇宮警察本部。昨晩までは、アラヤちゃんは此処にいた。残りの魔物三〇〇体も、昨晩まではここにいたけれど、先程ここ本丸跡への入口となる三箇所、天守台前、汐見坂、中雀門前に一〇〇体くらいずつ移動した。あと大手門近くにいた三〇〇体のうち、一〇〇体が中雀門経由で移動して、本丸跡の売店近くに移動している。
もうこれをみれば、アラヤちゃんが何処にいるのかは明白だろう。偽装はないとして」
「本丸跡の、売店のところですね」
西島さんの言葉に、上野台さんは頷いた。
「ああ、間違いないと思う。アラヤちゃんは、隠れる気はきっとない。むしろ自分が倒されるつもりだと思う。だから、こんなわかりやすい配置にしたんじゃないかな。私の能力はアラヤちゃんに話したから」
「ただこれでは、北桔橋門のところが弱点だな。門を通れば、本丸跡まで一気に行けそうだ」
確かに画面ではそう見える。
しかし上野台さんは、首を横に振った。
「実際はこの天守台、この部分がかなり高くなっているんだ。だから北桔橋門から入ったら、左に曲がらなければならない。よほど速く駆け抜けない限り、遠距離攻撃の的になる。この樹木も本数は三本だけで、あとは低い植え込みだけだからさ。走る上での障害物にはなるけれど、遠距離攻撃を避けるのには適さない」
そういう地形になっている訳か。
それなら攻撃を避けるのは難しそうだ。
「だからもし、田谷君と咲良ちゃんが本丸跡を目指すなら、私のお勧めは、大手門から宮内庁病院側を通り、二の丸跡を突っ切って、汐見坂付近から本丸跡へ向かうコースだ。今の田谷君と咲良ちゃんなら、五メートル位の段差は飛び越えられるだろう。大手門から入った直後さえ何とかしのげば、後はそこまで難しくないと思うんだ」
画面上に、赤の点線でお勧めコースが示される。
確かに障害物が多く、遠距離攻撃は通りにくそうだ。
火球攻撃は弓なりの軌道だから、全力で走れば避けられる。
汐見坂も、この段差の高さなら、途中から上へと飛び上がる事が出来るだろう。
ただ、今の言葉だと……
「上野台さんとシンヤさんは、どうするんですか?」
「時間のちょい前に、車で気象庁前交差点へ移動して待機。ここだ」
画面の右上側に、点滅する星マークが現れる。
「ここなら何処に敵が出ても、急行しやすいだろう。なお第一優先目標は、新宿にいる二人組。魔物の集団はその後の予定だ。
名古屋から来た奴は、きっと自分では攻めてこない。自分が戦わなくても、魔物が戦って敵を倒せば経験値を稼げるからさ。そして魔物だけなら、動きは読みやすい。だからこっちは優先順位は下。あとは……」
上野台さんはそう言って、窓の外へと視線を向けた。
外は、どんよりとした曇り。今にも雨が降りそうだ。
「台風は、予定より少し遅れている。鹿児島はまもなく暴風雨圏内に入るとは思うけれど、それで簡単に向こうの魔物が全滅するかはわからない。
そしてこっちも、一時過ぎから雨が降るという予報だ。雨具は一応持っているし着るけれど、ちょっと面倒だよな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます