二七日目 八月二三日

第三九章 敵と自称する彼女と

第一八一話 次の予定

 のんびり起きて、冷凍パンを解凍して焼いたものとカップスープという朝食を食べて。

 シンヤさんからキャンプ用具一式を譲り受けて収納した後、合流したコンビニまで、シンヤさんの運転で戻る。


 八時のレポートは途中、車を停めて車内で確認した。


『二六日経過時点における日本国第1ブロックのレポート

 多重化措置後二六/三五経過


 ブロック内魔物出現数累計:一九万六五五七体 

 うち二四時間以内の出現数:〇体  

 魔物消去数累計:一八万六六四〇体

 うち二四時間以内の消去数:二〇八体

 開始時人口:一一九人

 現在の人口:八五人

 直近二四時間以内の死者数:〇人

  うち魔物によるもの:〇人

 累計死者数:三四人

  うち魔物によるもの:二六人


 現時点でのレベル状況

 人間の平均レベル:五六・八

 人間の最高レベル:レベル一〇五

 人間の最低レベル:六

 魔物の平均レベル:九・〇

 魔物の最高レベル:二六

 魔物の最低レベル:一


 本ブロックにおける魔物出現率:一〇〇パーセント

 歪み消失率 九一・二パーセント 

 なお一八日八時以降、魔物の発生はありません』


 昨日あれだけ倒して、更に他の人が倒した魔物とあわせても、歪み消失率は〇・二パーセントしか変わらなかった。

 なら東御苑の魔物を全部倒しても、九五パーセントまで行かないような気がする。


 魔物を探し回るしかないのだろうか。

 上野台さんがWebカメラで確認できないような場所にいるだろう魔物を、カンと運任せで探すしか。


 俺のレベルは未だトップのようだ。

 しかし、それを喜べる状態では無い。


「あの集団以外の魔物は、何処にいるんだろうな」


 シンヤさんの言葉に、上野台さんは首を横に振る。


「わからない。レポートでは一万体近くいるようだけれど。Webカメラも全てを網羅している訳じゃない。カメラで捉えきれない場所にいるのなら把握は無理だ。それに九州や四国までは、私も分析出来ていない。特に四国は掲示板でも情報がないから、全くわからないままだ」


「なら僕は四国に行ってみるとしよう。あそこは人口が三五〇万ちょっとだから、この世界になった時には三人か四人しかいない筈だ。なら人目につかない場所に魔物の集団がいても、不思議じゃない」


 なるほど、確かにそうだ。

 それにシンヤさんなら四国程度の広さなら、二日程度でひととおり回れるだろう。

 

 そうなったら、俺は一位ではなくなる可能性はある。

 かといって俺も、四国か九州へ行くべきだとは、思わない。

 東御苑の千体クラスの魔物の件があるからだ。

 西島さんの交渉だってあるし、俺達は東京方面に向かうのが正解だろう、きっと。


「私達はどうする?」


 ちょうどそこまで考えたところで、上野台さんが聞いてきた。


「関東に戻りましょう。気になる事が残っていますし」


「そうだな」


「私もそれがいいと思います」


 四国や九州は気になるけれど、仕方ない。

 

 そして無事、車とバイクを停めているコンビニの駐車場へと到着。


「それじゃまた」


「ああ、またね」


 またね、か。再会を期した挨拶だな。

 そう思いつつ、シンヤさんと別れて車に乗り込んだ。  

 運転席が久しぶりに感じる。


「高速道路を東京に向かえばいいですか?」


「ああ。魔物がいそうな場所も確認出来なかったしさ。とりあえず東京の、皇居東御苑近くへ向かうとしよう」 


「わかりました」


 コンビニからすぐのインターチェンジから、東京方面へ。


「あともしアラヤさんに聞けるならさ、こっちからのお土産、何がいいか聞いておくのはありだ。サービスエリアとかで調達できるもの優先でさ」


「まだ会う約束まで進んでいないですけれど、わかりました」


 ただ此処からのルート、三重県に出るまでサービスエリアがない。

 今走っているのは、高速道路に見えるけれど、実は料金がいらない一般道だし、この先三重県までは高速だったり一般道だったりするから。

 

「このルートだと、奈良県のお土産は天里パーキングエリアでしか買えないな。次は三重の御在書サービスエリアだ」


 この辺の地理は頭の中に入っていないけれど、何となく遠いのはわかる。

 でもまあ、焦ることはない筈だ。


「あと咲良ちゃんは、今日の宿を探しておいてくれ。東京近辺で、高速から近い方がいい」


「わかりました」


 ◇◇◇


 途中、五箇所のサービスエリアと一箇所のパーキングエリアに寄って、お土産というか土地のものを大量に確保してきた。


「冷凍の瓶入りプリンって、はじめて見ました。今回の戦いでレベルが上がったので、思い切り収納出来ます」


 最初の天里パーキングエリアで、早くも西島さんが暴走。

 次の御在書サービスエリアでは松阪牛関係をしっかり確保し、葉摩松サービスエリアでは餃子と鰻蒲焼きの冷凍をガンガン確保。

 更に冷凍おでんだの真空パックの干物だの、お菓子類大量だのを確保したりで、東京インターを通ったのは午後四時過ぎ。


「さて、今日の宿は何処にした?」


「それですけれど、宿の前に寄り道をしていいでしょうか?」


 西島さん、何処へ寄る気だろう。


「いいけれど、何処だい?」


「皇居です。連絡を貰えれば、坂下門までは出てきてくれるそうです」


 えっ。


「アラヤさんのOKが出たのかい」


 上野台さんも知らなかったようだ。


「ええ。お土産を持っていきたいという話をメールしたら、つい今、返事が来ました。ただ、来る一〇分前までに連絡が欲しいそうです。アラヤさんが中で移動したりするのに、それくらいは時間がかかるからと書いてありました」


「そこまで車で、この三人で入っていいって?」


「ええ。アラヤさんが出てきてくれるそうです」


 いきなりの急展開に、どう反応しようかとまどってしまう。

 車がふらつきかけ、あわててハンドルを真っ直ぐにする。

 取り敢えず運転に専念しよう。


「それで咲良ちゃんは、どうする気だい? お土産を渡すだけじゃない気がするんだけれど、違うかな?」


 会うのは当然として、その先があるのか。

 西島さんが頷いた気配。


「ええ。出来ればその後、一緒に近くのホテルに泊まって話をしたいと思います。急な話ですみません。メールで話をしていたら、会ってもいいって流れになったんです。だからこの調子で行けば、一緒に泊まるくらいは出来そうかなと思うんです」

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