二四日目 八月二〇日

第三六章 俺が気づけなかったこと

第一六五話 道の駅と自称している空港

「今日は高速で一気に回って、魔物が残っていないか確認する。二日もあれば奥地にいた魔物だって、それなりの場所に出ている筈だからさ。

 具体的には青盛から飽田、横出、北神から一度森岡へ行った後、南へ下って船台、山型、そして与根沢経由で福縞という予定だ。まあどこまで行けるかはわからないけれどさ。

 東北は最後になるかもしれないから、必要な土産品その他はしっかり確保しておこう」


「わかりました。宿も船台、山型、与根沢、福縞あたりを探しておきます」


 そんな感じで高速の旅、スタートだ。

 ただし他の車はいないし、魔物の反応もない。


「この辺、何度か回って狩ったしなあ。元々の人口もあまり多くないし、ほぼいなくなったんだろうな」


 なんて上野台さんが言う中、ひたすら走って1時間ちょっと後。


「そろそろ休憩と、名産品補填にしよう。次のインターで下りてくれ」


 上野台さんの案内のままに運転して、着いたのは空港だ。


「この空港は道の駅も兼ねているんだ。名物は秋田犬のお出迎え。まあ今の情勢じゃいないだろうけれど、特産品探しとレポート確認にはいい場所だろう」


 空港といっても、羽田とか成田などとは全然違う。

 駐車場と建物の関係は、一番近いのはサービスエリアのアプローチ部分。


 無料の駐車場から、タクシーや送迎車、バス等が走る道路を歩いて横断すれば、『出発』『到着』二箇所の入口が待ち受けている。

 中は繋がっているようだけれど。


「売店は出発側の二階だけれどさ。ここは到着側に名物があるらしい」


 そう言って上野台さんは『到着』側から中へ。

 入ったところで上野台さんは首を傾げる。


「おかしいな。確かここにあるとネットにはあったんだが。二階かな」


「何があるんですか」


 包丁と桶を持った巨大なまはげ人形があるけれど、上野台さんが探しているものは違うようだ。


「大したものじゃない。それじゃ二階へ行こう」


 到着ロビーから歩いてエレベーターに乗り、二階へ。

 二階へついて左側を見て、上野台さんは頷いた。


「どうやらこっちに来ていたようだ」


 分からないので聞いてみる。


「何がですか?」


「これ、秋田犬の大型ぬいぐるみだ。以前は一階の到着ロビーにいると書いてあったんだけれどさ」


 そこそこ広い売店の店頭に、秋田犬のぬいぐるみが置かれている。

 結構大きいのが一頭、そこそこの大きさのが一頭。そして販売されている全長二〇センチメートル位のものが多数。


「ここはローカル空港で便も利用者も少ないからさ。利用者促進で、毎月8がつく日は秋田犬がお出迎えをしてくれるというサービスをやっていたんだ。そのサービスがない日は、現実の秋田犬のかわりにこのぬいぐるみが一階ロビーにいる。そうWeb記事で読んだんだけれど、どうやらこっちに来ていたようだ」


「確かに可愛いですね、この犬のぬいぐるみ。大きいのも小さいのも」


「結構人気があるみたいだぞ、これ。という事で、8時半にあそこの食堂集合にして、この機会でしか手に入らない物をゲットしておこう」


 道の駅やスーパーなんかと同様の、物色タイムだ。

 とりあえず俺は、肉コーナーへ。

 比内地鶏の真空パックが、冷蔵ショーケースに並んでいる。

 

 比内地鶏スモークの半身が美味しそうだった。

 薄切りの方が使いやすいことはわかっているけれど、塊肉には抗しえない魅力がある。

 賞味期限を確認、まだ大丈夫。冷蔵なら1か月以上持つようだ。

 同じコーナーにある味噌漬けをふくめ、しっかりキープさせて貰う。


 肉は確保したから、他は何にしようか。きりたんぽと地鶏スープが入った鍋セットとかを見ながら歩いていく。

 とりあえず肉やフリーズドライ野菜まで入った、これ一箱できりたんぽ鍋が出来るというセットが、賞味期限ぎりぎりOKだったのでキープしておく。


 いちご煮という、果物のイチゴではなくウニを煮たらしい缶詰。これは飽田ではなく青盛名物らしいけれど、美味しそうなのででキープ。

 あと地元メーカーのサイダーも各種。

  

 レベルがここまで上がると、収納容量も無茶苦茶大きい。

 なので容量を気にせず収納しても問題ない。


 ひととおり回ったところで時間を確認。あと5分で8時だった。

 まだ西島さんも上野台さんも物色しているけれど、先に行って席を準備しておこう。


 食堂へ行って、テーブルを2つ繋げてやや広めの席を作ったところで、2人がやってきた。


「つい色々あったんで、見てしまった」

 

「準備ありがとうございます」


 上野台さんと西島さんが座ったところで、スマホの通知音が鳴った。


『二三日経過時点における日本国第1ブロックのレポート

 多重化措置後二三/三五経過


 ブロック内魔物出現数累計:一九万六五五七体 

 うち二四時間以内の出現数:〇体  

 魔物消去数累計:一八万六五九三体

 うち二四時間以内の消去数:四五四体

 開始時人口:一一九人

 現在の人口:八五人

 直近二四時間以内の死者数:〇人

  うち魔物によるもの:〇人

 累計死者数:三四人

  うち魔物によるもの:二六人


 現時点でのレベル状況

 人間の平均レベル:五六・五

 人間の最高レベル:レベル一〇四

 人間の最低レベル:六

 魔物の平均レベル:九・五

 魔物の最高レベル:二六

 魔物の最低レベル:一


 本ブロックにおける魔物出現率:一〇〇パーセント

 歪み消失率 九〇・八パーセント

 なお一八日八時以降、魔物の発生はありません』


 俺の今のレベルが、一〇四。

 ついに日本第一ブロックでは、トップになったようだ。

 もちろんレベル一〇四が一人とは限らない。

 けれどこれで、特典を得られる可能性が高くなった気がする。

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