第一五九話 掲示板の管理?

 確かに、そう考えると絶望的な気になる。

 しかしだ。


「それでも、まだ二週間ありますし、これ以上魔物は増えません。なら一週間は特に複雑な事をせず、出来る限り東北の魔物をクリアしながら様子をみる。それでいいんじゃないですか」


 上野台さんの不安はもっともだ。

 しかし俺達に出来る事は限られている。

 それでも、まずは最善を尽くすしかないだろう。

 上野台さんは俺の言葉に、頷いた。


「ああ、確かにそうだな。少し焦ってしまった。ついでに言うと東北以外についても、それぞれ走り回っている奴はいるようだ。それを考えれば、焦らず一週間くらい様子を見るのが正解なんだろうな。下手に工作とかをしないでさ」


「工作ですか?」


「ああ」


 上野台さんは西島さんに頷いた後、付け加える。


「多分、もう掲示板に書き込んでいる奴はいると思うぞ。という事で、私も見てみるとしよう」


 どれどれ、そう思いつつスマホの画面を見る。

 表示が変わった。


『確かに魔物が出なくなった。これで俺、生存確定か』


『まだ魔物が多い場所、情報求む』


『一般的に人口密度が多いところほど、魔物も多い筈。なら東京、名古屋、大阪辺りに出るしかないか、やっぱり』


『一人だと不安なので一緒に行動してくれる人、募集します。17歳の女子校生でレベルは25、炎の魔法を使います。家は横浜の青葉区でしたが、自転車で避難して今は真鶴にいます。助けてくれる人は個別に連絡下さい。アドレスは******です』


 うーん、ほとんど落書きみたいな感じだと思う。

 あと、女子校生って表記がいかにも嘘くさい。

 高校生なら高2ですとか、学年を書くだろうと思うし。


 なお個人名とかハンドルネームとかは一切出ない形式のようだ。

 だから誰が何を書いたのかはわからないし、一見続きに見える投稿でも、同じ人が書いた物かはわからない。


 現状ではそこまで考えるような内容は無いけれど。


「まだ落書き程度の内容ですね」


「もっと陰謀を感じるようなのを期待したんだけれどさ。○○○に真の敵がいるとか、○○○辺りにはまだ魔物が残っているなんてのとか。流石にまだ無理か。

 という事で、そろそろ行くか」


「そうですね」


 俺達は立ち上がる。


 ◇◇◇


 予定通り、八辺は高速道路でパス。


「市街地方向に、それなりに大きい単独の歪みがある。多分あれがここに住んでいる誰かなんだろう。大体レベル50程度かな。どんな人かわからないから、取り敢えず近寄らない方向で行こう」


 その後すぐに高速を下りて、三辺、二辺、一辺と回って、あとは森岡から南下といういつものルート。

 そこそこ程度に魔物を倒して粟原まで行ったら、午後三時過ぎだ。


「明日は太平洋岸に点々とする街を回ってみようと思う。まあここへ来るまでに話した通りだけれどさ。その上でおすすめの宿は何処になる?」


「成子温泉が距離的には近いですけれど、反対側なんですよね。ならこの前も泊まった松島のホテルでいいと思います」


 あの松島のホテル、西島さんは結構気に入っているようだ。


『宿としては大きすぎますし、泉質は掛け流しのところと比べるとやっぱり劣りますけれど、なんと言っても景色が最高です。お風呂を楽しみながら見えるのが最高で、芭蕉ではないけれど、気の抜けた句でも詠みたくなります』


 前にそんな感じで評価していたなと、思い出す。


「なら少し遅くなるけれど、船台で冷凍食品を仕入れておこう。そろそろ朝食のパンがないしさ」


「そうですね。」


 そんな訳で船台を回って、冷凍食品の店二店舗からパンとピザを中心に朝食分を確保。

 松島に行く途中、何処から来たかは不明な魔物一二体の集団をあっさり倒して、宿に到着。


「今回も露天風呂付きの部屋を二つでいいですね」


「ああ。松島を見ながら風呂ってのは悪くないな」


 今回も上野台さんが一部屋、俺と西島さんで一部屋だ。

 露天風呂つきの部屋は三部屋あるのだけれど、と思ってはいけない。

 同じ部屋にするなら女子二人にするべきだろう、なんてのも。


 宿に到着してすぐ、見晴らしのいい露天風呂へ直行するのはお約束。


「やっぱりここは景色がいいよな」


「そうですね。あちこち回った中でも、一番という気がします」


 俺としてはあちこち視線をやるのは申し訳ないので、スマホ画面に注力。

 いや、いいかげん毎日見ているのだから、だいぶ慣れてはいる。

 だからこの辺は、あくまで礼儀という事で。


 さて、掲示板だけれど、半日のうちにだいぶ進化したようだ。

 話題別にタグをつけて、検索しやすいようになっている。


『当初の仕様では必要な情報を確認しにくいという事で、内容を検索しやすいよう、#をつけてタグを登録できるように設定変更しました。なおタグは自分で設定する他、自動的に内容に応じたものがつけられます。また書き込み時に推奨タグが表示されるようにもなっています』


 なるほど、運営側チェックが入るという事か。

 試しに『#デマ』というタグを見てみる。


『まだまだ魔物が多い場所はたくさん! 当方、独自の調査網でリアルタイムで確認中。特に中京方面に自信があります。連絡はメールかSNSで。*****@****、@***** #仲間募集 #中部地方 #デマ #悪意のある投稿』


 うーむ、なんというか、容赦ない。

 なお朝に見た自称女子校生の投稿にも、似たようなタグがついていた。


『#仲間募集 #関東地方 #デマ #悪意のある投稿』


 悪意があるというのは、どういう意味だろう。

 この投稿で誘い出して殺害して経験値にするとか、同族統率の魔法を使って支配下に置くとかだろうか。


 スマホの画面を確認するが、新たな表示は出ない。

 そこまでは情報を教えてくれないようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る