二一日目、二二日目 八月一七日、一八日
第三五章 新機能とメールと
第一五八話 今回の情報開示と新機能
一七日は飽田から百合本庄まで南下した後、再び北上して青盛まで。
ただしいつものルートより若干大回りして、極力取りこぼしがないように魔物を倒した。
「飽田から弘先回りで青盛までは、多分これで打ち止めだな」
「そうですね。飽田も魔物が出なくなったようですし、青盛も最後に倒した後、出ないみたいですから」
魔物が出なくなったからという事で、宿は朝虫温泉の以前泊まった、あの寝湯がある宿へ。
「前回は上にある『まるゆ』に入れなかったんですよね。だから良かったです」
この『まるゆ』とは三階にある円形の貸切風呂。
床が木製で、片側の壁の上部が開いていて、露天風呂に近い解放感がある。
お湯も完全なかけ流しで、一人で入る分には悪くない。
ただし浴槽の大きさは、一人なら思い切り手足を伸ばせるけれどというサイズ。
二人だと譲り合ってという感じで、三人は正座しないと無理。
「三人は無理だな。ここは二人に譲って、私は下の貸切風呂を使うとしよう」
「いえ、俺が下に行きますから」
結局ここは何とか脱出に成功したけれど、何だかなという感じだ。
そして翌日一八日。
いつも通り朝六時に宿を出る。
「青盛や弘先回りでは、もう魔物がいないだろう。だから野変地回りで、八辺だけは高速でパスする形で。残っている人には会わないよう、歪みを見て注意するから」
そんなルートで、野変地、塔北町と回って、三澤で一五体規模の魔物集団を倒したところで七時四〇分。
かつて上野台さんがバイトしていたのと同じチェーンのファミレスに入って、ついでに店の冷凍庫に入っている冷凍食品を確保。
「ここのメニュー用冷凍食品って、割と使いやすいんだよな。慣れているせいもあるけれどさ」
一通り確保した後、窓際のテーブルに陣取って、朝のレポートを確認。
『二一日経過時点における日本国第1ブロックのレポート
多重化措置後二一/三五経過
ブロック内魔物出現数累計:一九万六五五七体
うち二四時間以内の出現数:四一七一四体
魔物消去数累計:一八万六三四六体
うち二四時間以内の消去数:三万二六七三体
開始時人口:一一九人
現在の人口:八五人
直近二四時間以内の死者数:〇人
うち魔物によるもの:〇人
累計死者数:三四人
うち魔物によるもの:二六人』
三割弱がここまで死亡したという事か。
そう思いつつ、表示をスクロールさせる。
『現時点でのレベル状況
人間の平均レベル:五六・三
人間の最高レベル:レベル一〇一
人間の最低レベル:六
魔物の平均レベル:一〇・三
魔物の最高レベル:二五
魔物の最低レベル:一
なお現時点以降、魔物の発生はありません。
本ブロックにおける魔物出現率:一〇〇パーセント
歪み消失率 八九・九パーセント』
俺の現在のレベルは八九だ。
最高レベルの一〇一は、結構遠い。
東北に残っている魔物で、『西島さんを治療する。もしくは病気がない状態にする』特典に届くだろうか。
あと、魔物の最高レベルが一気に下がった。
何処かで高レベルの魔物集団のボスでも倒したのだろうか。
歪み消失率が九割行っていないのは、気にしなくていいだろう。
これは今日中には越えられるだろうから。
問題はどこまでやれば、この世界が終わりになるかだ。
九割以上だとすれば、かなり厳しい事になる。
『全期間の五分の三が経過しました。魔物は全て出現しましたが、まだ日本第一ブロックにおける歪みの総和は規定値以下とはなっていません。
ですので更なる歪み解消をはかる為、新たな情報の開示と、新たな情報伝達方法の提供を行います』
来たな、そう思いつつ、画面をスクロールさせる。
『まずはこの世界を解消して、元の世界に戻る為の歪み消失率を開示します。目標の歪み消失率は、九五パーセントです。超えた時点で、この世界は消失し、元の世界へと戻ることになります』
かなり厳しい値のような気がする。
『なおこの世界に残存する歪みは、レベル一に換算して一万二九〇六体分です。このうち魔物によるものが八八パーセントとなります。
元の世界に戻る為には、これらの歪みを、半分以下にする必要があります』
魔物による歪みが八八パーセント。
つまり残り一二パーセントの歪みは人間によるもの、という事だろう。
そう思いつつ、更に下へとスクロールする。
『そして効率良く歪みを解消するために、日本第1ブロック内の人間が全員読み書き可能な連絡掲示板を設置します。この情報を受け取っている画面を見て、掲示板を出すよう念じていただければ、表示可能となります。書き込みは音声入力でもフリック入力でも、キーボード等による入力でも構いません。テレビ等入力装置がない端末で使用する場合は、音声入力機能のみとなります。
今回の開示は以上です』
この掲示板、かなり危険な機能という気がする。
そう思ったところで、上野台さんの溜め息が聞こえた。
「これで何人が、自分以外の人間も魔物と同じ障害だと、改めて再認識してしまったんだろうか」
「でも魔物を八割から三割に減らせば大丈夫なんですよね」
「魔物の全部が倒せる対象なら、そうだけれどさ」
上野台さんはさっとスマホに目を走らせて、続ける。
「残った魔物のうち、二四パーセントは皇居東御苑にいると思う。だからそこに手を着けない場合、今いる魔物の八六・五パーセントを倒さなければならない。結構辛い気がするんだけれど、気のせいじゃないよな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます