一八日目~ 八月一四日~一六日

第三四章 終盤戦の前に

第一五四話 今ひとつな一日

 六時ちょうどに宿を出て、横出で六体程の小規模の集団を倒し、再び高速に乗って飽田へ。

 飽田で、早速集団のひとつと戦う。


「まるまる二日間置いたけれど、二〇体規模の集団がひとつしか出ていないな。やっぱり魔物同士の淘汰は結構ある気がする」


 上野台さんが分析しつつ、いつも通りライフルによる長距離攻撃で集団を倒して、近くのファミレスでレポートを確認。


『一七日経過時点における日本国第1ブロックのレポート

 多重化措置後一七/三五経過


 ブロック内魔物出現数累計:二四万七五五七体 

 うち二十四時間以内の出現数:四七六二四体  

 魔物消去数累計:二二万一八四九体

 うち二十四時間以内の消去数:二万七二一三体

 開始時人口:一一九人

 現在の人口:八五人

 直近二十四時間以内の死者数:四人

  うち魔物によるもの:四人

 累計死者数:三四人

  うち魔物によるもの:二六人』


 ここまで三分の一弱が死んだという事か。

 そう思いつつ、更に続きを確認する。 

 

『現時点でのレベル状況

 人間の平均レベル:五六・五 

 人間の最高レベル:レベル一〇二

 人間の最低レベル:六

 魔物の平均レベル:一〇・六 

 魔物の最高レベル:二〇

 魔物の最低レベル:一 

 なお現時点以降、発生時の魔物レベルが最大一七となります。ご注意下さい。


 本ブロックにおける魔物出現率:一〇〇パーセント

 歪み消失率 九一・六パーセント』




「一気に魔物が出て、そして倒されたって感じだな。更に言うと、目標の歪み消失率は六割でもなかった」


「このペースだと、あと三日で消去率は九割です。もちろんそんな計算通りには行かないと思いますけれど」


 西島さんの言う通り、計算上はあと三日で九割だ。

 

「まあそうだけれどさ。それでも一気に進んだ感じだよな。おそらく今日明日も、同じ位に進むんだろうけれど。それでこの後のコースはどうする? 無難なのは一昨日通った能白、大楯、弘先、五所河原、青盛というルートだけれどさ」


 ここで一つ疑問に思っていたことを聞いてみる。


「前回八辺を回らなかったのは、そこにいる誰かを警戒してですか」


「バレたか。その通りだ。八辺はそれなりに人口が多いし、周囲に大きい街がないからそれなりに魔物が出たり集まったりする筈だ。それでも一人できっちり魔物を倒しているようだから、おそらくはそれなりのレベルなんだろう。なんで、とりあえずは近寄らない方針で行こうと思う」


「一人という事はわかっているんですか」


「男性一人が車を運転している様子をWebカメラで確認した。それ以上はまだ情報が入っていない。動いていない人がいたとしても、これ以上知るのは無理かな」


 ひょっとしたら上野台さんは、他にも情報を持っているのかもしれない。

 Webカメラでの他の画像とか、それ以外の情報とか。

 ただ上野台さんが近寄らない方針としているのは、信用していいと思う。

 

 となると、今日回る予定は……


「青盛と弘先周辺以外は、人口一〇万を下回るんですよね」


「ああ。だからそれ以外の街では、集団という程の数は出ないだろう。せいぜい三体から五体くらい集まった程度で」


 地図を確認する。飽田の周囲には大きい街はない。

 そしてある程度の人口がある場所を回っていくのなら、やはり青盛方面がベストな気がする。


「予定通りが一番無難そうですね」


「そういう事だ。さて、飽田市内に取り敢えず二体、出てきたようだ。これだけさっさと片付けて、それから出るとしようか。あと今日の宿は、青盛付近か別の場所か、どうしようか」


「青盛付近なら黒意志温泉郷でいいと思います。黒意志市なら人口三万人いませんから、いきなり近くに出現する可能性は低いと思いますから。高速が使えて移動も便利ですし。

 それ以外でも高速を使っていいなら、場所を探すのは難しくないです」


「それじゃまずは魔物を探しながら北上しよう。あと魔物一体ごとに近づいて倒していくのは面倒だから、最低三体はいるところという感じでいいか?」


 確かに、一体ずつ倒すのは効率が悪い。飽田に最初に来た時、かなり動いた割に経験値がそこまでではなかった事を思い出す。

 ただ、そうやって倒さない魔物がいると……。


「魔物を全部倒しておかないと、最終的な達成率が足りなくなるって事はないですか?」


「まだ日数はあるんだ。魔物が出るのがあと四日くらいというだけでさ。だから一八日になって、それでもまた達成率が足りないようなら、落ち穂拾い的に倒していけばいいだろう」


 そうか、後で倒してもいいのだ。


「それもそうですね」


「それじゃ行こうか」


 俺達はテーブルを片付けて、店を出る。


 ◇◇◇


 予想通り、能白にはあまり魔物がいなそうだったからパスした。

 そして大楯で出たのは六体の集団。レベルは一体を除けばレベル一五を超えていたけれど。


 出てくる魔物も、少し種類が変わった。

 具体的には集団のボスがゴブリンジェネラルになって、部下がゴブリンナイトが多くなった。


 ただしライフルは今のところ、同じように効いている。

 銃弾を強化する魔法も幾つか持っているし、この辺で出てくる魔物に対してはライフルで攻撃力が足りないという問題は無さそうだ。


 弘先を中心に津軽平野をぐるっと回ったところで早めの昼食を食べ、青盛で一五体の集団を倒して午後一時過ぎ。


「まだ宿に向かうには、早いですね」


 今日は昨日ほど経験値を稼げていない。

 倒した魔物は六〇体ちょっとでレベルは七九。今朝のレポートにあった最高レベルは一〇二だから、まだまだ遠い。


「焦る事はない。明日は青盛から森岡ヘ出て、人口が多めの場所を一気に回れる。この辺のエリアは魔物を倒しきっていないから、まだまだ稼げるだろうしさ」


 確かに焦っても、経験値を稼げそうな場所は近くにない。

 強いて言えば八辺近郊くらいだが、あの辺は行かない方がいいとなっている。

 となると次に近い、人口がそれなりに多い場所というと森岡市。高速経由でかかる時間は……


『二時間一七分』


 スマホの地図ソフトではそういう結果。なら到着は午後三時半過ぎになる。

 宿へ行く時間を考えると、それほど戦える時間はない。それに森岡は昨日魔物を一通り倒したので、出ても集団一つ程度だろう。


「確かに、そうですね」


「それじゃ早めだけれど宿へ行こう。咲良、助手席ナビ交代」


「わかりました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る