第一三九話 休む間が無さそうな状態

 集団と、その後の一体を倒した後、七体程魔物を倒した。

 レベル一四のバガブアーチャーが三体、同じくレベル一四のメイジバガブが三体、レベル一二のアークゴブリンが一体。


「これで私が感知出来る範囲には、魔物がいなくなった。あとは発生したのを叩けばいい。という事でお疲れ。次が出るまで休憩しながら飯と買い出しにしよう」


 ちょうど近くに、上野台さんがバイトをしていたのと同じ系列のファミレスが入っている総合スーパーがあった。

 そこへ入って、冷凍のピザや冷凍のデザート等を出して、昼食開始。


「これであとは、出現してくる魔物か、他からやってくる魔物だけを相手にすればいいんですね」


「ああ。でもきりが無さそうだから、三時過ぎたら宿の方へ向かおう。どうせ途中でも魔物が出てくるだろうからさ」


 そう言って上野台さんが、メキシコ風というピザもどきをつまんだところで。

 俺の察知+が魔物を感知した。北側、一キロよりちょっと手前くらいの場所だ。


「出ましたね」


「ああ。先程までと同じくらいの魔物だ。仕方ない。片付けて倒してくるとしよう」


「少し余裕があるから、私が全部仕舞います」


 西島さんが、テーブル上に出ていたピザ二枚とメキシコ風のピザっぽいの、温野菜サラダを収納する。


 店の前に停めていた車に乗って、そして。


「左回りで接近しますか?」


 魔物がいるのは北側なので、左へ曲がった方が近い。

 しかし待ち伏せするなら、ある程度距離があった方がいい。

 そうなると右へ曲がり、一度南側を迂回してから敵の前面に出る方がいいだろう。

 という事で、俺より敵の強さがわかる分情報を把握している上野台さんに、聞いてみたわけだ。


「右側を回ろう。飽田の魔物はひととおり倒したと思うから、出たとすれば統率種だろう。なら私達に反応してでは無く、南の百合本条あたりにいる魔物に反応している可能性が高い」


「わかりました」


 大回りしてでも確実に前に出る方を選ぶという事だ。

 大通りを二回右折して、魔物が歩いているだろう通りの手前まで行って停まる。


 距離は目の前の交差点の右、六〇〇メートル位。地図で見る限り道はまっすぐだから、交差点を出れば見えるはずだ。


「今回は田谷君に任せようか。運転している分、攻撃できない事が結構あるからさ」


「そうですね。お願いします」


「わかった。ありがとう。それじゃ車で待っていて」


 エアコンをかけたまま車を出て、歩道の角、道路を横断する為の地下道の入口の壁際で、敵が近づくのを待つ。

 俺のライフルだと四〇〇メートルちょっと位がちょうどいい距離。だからあと二〇〇メートル近づいてから撃ちたい。


 察知+でこっちに向かってきているのはわかるが、足が遅い。まだかまだかと思いつつ待つ。夏の日差しで焼けた道路の照り返しが暑い。


 三分くらい待って、ようやく四〇〇メートルの距離に出た。ライフルを取りだし、自動照準の魔法を起動し、歩道へ出る。


 構えながら前を確認。ゴブリンリーダーだな、そう思うとほぼ同時に、引き金を引く。

 念の為二発。相手は倒れた。スマホを見て確認。やはりゴブリンリーダーで、レベルは一四。


 車に戻って運転席に身体を滑らせる。吹き出し口からの風が心地いい。


「ゴブリンリーダー、レベル一四でした」


「お疲れ。それで、悪いお知らせだ」


 悪いお知らせか。今此処でとなると思いつかない。


「何ですか」


「また魔物が出た。同じ位の強さ、一体だ。取り敢えずこの道直進方向、五キロよりちょい遠いと思う」


 えっ!?


「もう出たんですか」


「ああ。遠くてよく見えないが、多分強さは同じ位だ。田谷君が魔物を倒す前に出た。どうやら魔物の補充は一体ずつじゃないらしい」


「わかりました。取り敢えず道なり真っ直ぐですね」


 アクセルを踏んで、車を出す。


「レベルの合計が三〇以下になった場合に次の魔物を発生させるんですよね。だからレベル一四を一体出してもレベル三〇にならない場合、連続して出る事があるのかもしれません」


 確かに西島さんの言うとおりかもしれない。でも、そうすると……


「さっき上野台さんが言った通り、きりがないかもしれないですね」


「ああ。だから午後三時までやったら、大人しく撤退しよう。倒した分だけ魔物が出るペースは減る筈なんだ。だから明日朝に、レベル一〇以上の魔物で出来た集団が出来ている、なんて事はないと思う。希望的観測だけれどさ」


「まあそうですね」


 夜は魔物が出ない、なんて規則は無いよな。少し期待してスマホを横目でちらりと見てみる。

 何か表示が出たが、読む余裕はない。


「西島さんごめん。夜に魔物が出ないなんて規則はないかと思ってスマホを見たら、何か表示が出たんだけれどさ。運転中だから読む余裕が無い。もしそっちのスマホで出るなら教えて欲しい」


「わかりました……『魔物の出現及び行動は、時間によって変化する事はありません』、だそうです」


「ありがとう」


 残念ながら、こっちに都合のいいようにはなっていないようだ。

 集団が出来てしまうと面倒なのは間違いない。

 でも睡眠時間なしで戦う訳にはいかないし、交代制にするのも無理だ。


 だからここは、上野台さんが言ったのが正解なのだろう。

 ある程度は頑張るが、無理せずきりのいいところで切り上げるのが。 

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