一五日目 八月一一日
第三〇章 忙しい割に
第一三五話 久しぶりの朝の行事
久しぶりに朝、西島さんに起こされてしまった。
「折角いい温泉にいるんです。出来るだけ楽しんだ方がいいと思います」
なお上野台さんも同様に起こされている。ただ今日は浴衣では無くTシャツなので少しだけましだ。
こんな格好でもましと言える位に慣れてしまった事に、我ながら何だかなとは思うけれど。
周囲が板張りの女性用露天風呂の方で、40分くらい浸かりながら、菓子パン主体の朝食。
そしていつも通り、朝6時に宿を出発。
「46号をまっすぐ走って、13号に出たらあとはそのまま飽田の市街地まで走るルートでいいですか」
「それでいいと思うよ。ただ秋田南インター付近まででも1時間半以上かかるようだ。だから途中、道の駅で休憩しよう。格館の先、山を越えたあたりにあるからさ。魔物が出なければちょうど1時間くらいだ、そこまで」
そんな訳で朝一番は長距離ドライブだ。
そして今日は途中で魔物が出てこない。
格館までは昨日とほぼ同じ道だし、他はほぼ山の中だから当然かもしれない。
結果、七時三分に、休憩地点の道の駅へと到着。
山の中に突如広大な駐車場があって、高速のサービスエリアと似たような感じで建物が配置されているといった感じの場所だ。
売店部分の鍵を作動魔法で開けて、中へ。
「このプリン、賞味期限が長めでちょうどいいです。前にストックしていた美味しいプリンが無くなったから、代わりに少し多めに持っていきます」
西島さんが早速『秋田はちみつプリン』なんてのに引っかかった。
見るとこの道の駅の独自商品のようだ。
そして独自商品、プリンはともかくとして、なかなか面白いというか、変わったものがある。
「酒と一緒につまむには良さそうだな、これ」
岩魚の燻製のパックと、胡桃を割って詰めたらしい袋を、上野台さんがガシガシと収納。
更にその先にジビエの冷蔵庫があり、兎肉、猪肉、鹿肉、更には熊肉まで冷凍パックになっている。
レトルトカレーに熊肉があるのは、昨日寄った道の駅と同じだ。こちらには鹿肉版もあるけれど。
昨日の道の駅と同じような物も多いな。そう思って気づいた。同じ市の道の駅で、同じ市の特産品を売っているのだから、ある意味当然だと。
もちろん同じ市の中でも、そこの地域独自というものも少しはあるようだけれど。
「とりあえずめぼしい物を確保したら次に行こう。今日で五分の二経過だからさ。また新しい規則の開示なり変更があるかもしれない。ここから二十分位のちょうどいい場所にファミレスがある。そこで本日分のレポートを聞きながら作戦を立てたい」
「わかりました。それじゃささっと回ります」
個人的には、ジビエの冷凍肉に惹かれる。兎肉、猪肉、鹿肉、熊、どれも食べた事が無いから。
ただ調理出来るかというと、全く自信がない。自分で作れる自信があるのは、袋入りラーメンくらいだ。
だからやめるのが正解、そう思ったのだけれど、気になる。
なんて思ったところで、上野台さんが当然のような顔をして、ジビエ冷凍肉各種をキープしていった。
「料理とか、大丈夫ですか?」
思わず聞いてしまう。
「問題無い。今から収納しておけば、夕方くらいにはいい感じで解凍されているだろうからさ。何事も挑戦だ。こういう時でないと値段を気にせず味比べとか出来ないしさ」
うーむ、強い。
「ありがとうございます」
「いや、実際この辺の肉ってどんな味か、興味があるしさ。だから他にどうしてもという物がなければ、今夜はジビエ肉メインににしよう」
そんな感じで食材を入れて、また車に戻る。
少し走るとやっと周囲が拓けてきた。
道の両側にぽつぽつと家が建っていて、そしてそのうち家が並ぶようになっていく。
そして俺の察知+魔法が遠くに敵を捉えた。
一キロ程度先に一体、そう強く無さそうだ。
◇◇◇
レベル三のゴブリン一体、レベル四のホブゴブリン二体、レベル五のホブゴブリン一体の、合計四体を倒した後。
そこそこ規模の新興住宅地の中にある、ショッピングセンターの駐車場に入る。
このショッピングセンターは大きな建物一つに多くの店舗が入っているという形式ではなく、郊外型の大規模店が駐車場を取り囲んでいるという形だ。
その中にある、全国チェーンでハンバーグが有名なファミレスへと入店。
席についた後。
「さて、そろそろ八時だ」
上野台さんがそう言うとほぼ同時に、スマホが通知音と振動を発した。
『一四日経過時点における日本国第1ブロックのレポート
多重化措置後一四/三五経過
ブロック内魔物出現数累計:一七万二八七八体
うち二四時間以内の出現数:一三〇七体
魔物消去数累計:三万五六五九体
うち二四時間以内の消去数:一四七四体
開始時人口:一一九人
現在の人口:九四人
直近二四時間以内の死者数:〇人
うち魔物によるもの:〇人
累計死者数:二五人
うち魔物によるもの:一七人
現時点でのレベル状況
人間の平均レベル:三九・二
人間の最高レベル:レベル五四
人間の最低レベル:六
魔物の平均レベル:六・五
魔物の最高レベル:四四
魔物の最低レベル:一
なお現時点以降、発生時の魔物レベルが最大一四となります。ご注意下さい。
本ブロックにおける魔物出現率:五四・二パーセント
歪み消失率 四三・二パーセント』
ここまでの傾向は昨日とそう変わらない。
問題はこの後だ。
『全期間の五分の二が経過しました……』
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