第一三二話 久しぶりの魔法、スキル取得
「これで六〇〇メートルに合っていると思います」
「ありがとう」
俺は西島さんからライフルを受け取る。
今回は長距離なので、スコープを変更したのだ。
普段つけている一倍のドットサイトから、三〇倍まで倍率を上げられるスコープに。
なお西島さんのライフルにも同じスコープがついている。
今回は通常使っている・三〇八ウィンチェスター弾仕様の方ではなく、高威力長射程の三〇〇WinMag仕様の方だ。
ライフルそのものは同じ機種だから、外見はいつものとほぼ同じだけれど。
ライフルの弾倉に弾を込め、一発を薬室内に送り出してもう一発こめる。
これで合計五発、二丁あわせて一〇発までは撃てる。
今回は俺も本気で銃撃に加わらせて貰う。
敵が多いから少しでも火力を上げる為と、実戦訓練と、両方の目的で。
長距離で役に立たないのでは、この先不便だろう。
これからは、銃も使える機会に使っていこうと思っている。
ただし近距離の場合、銃で外した後にリカバーできる余裕がない。
だから実戦訓練の場としては、今みたいな状況がベストだ。
銃を一通り確認していると、上野台さんから声がかかった。
「あと一分くらいで撃てる位置にくる。そろそろ準備しようか」
「わかりました」
家の影から出て、敵が出てくる方向を狙う。距離が遠目だから照準より少し上を狙ってと。
構える姿勢はこれで正しい筈。
サイトを通して目標の路上がしっかり見えている。
俺の魔法では六〇〇メートル先までは確認出来ない。だから目だけが頼りだ。
「足音が近づいてきました。もうすぐです」
西島さんがゆっくり銃を構えた。
上野台さんも、双眼鏡を目に当てる。
敵が見えても焦ることはない。
火球魔法の射程は概ね四〇〇メートル程度の筈だ。
だからここまでは届かない筈。
それにもし他に長射程の攻撃があったとしても、俺の魔法で危険には気づけるだろう。
だから取り敢えず今は狙いやすい場所、狙いやすい体勢を重視して敵を待つ。
そして……
見えた瞬間、俺はゆっくり引き金を絞った。
西島さんの方が先に、そしてガンガン撃っているが、今の俺はそれで当てる事は出来ない。
だから慎重に、一発ずつを大事にして撃つ。
スマホの通知を音バイブともに切っているから、当たっているかどうかはわからない。
三発撃ったところで、敵から火球魔法が放たれたのを確認。
「危険察知の魔法が発動しないので大丈夫です」
そう二人に言って、そして更に二発を撃つ。
銃を持ち替えたところで敵の火球魔法が落下した。
俺達から見て二〇〇メートル位先なので、こちらにはそよ風程度が届いた程度。
落ち着いて、更に五発を撃つ。
これで俺の方は打ち止めだ。弾を込めるよりは敵が近づく方が早いだろう。
此処へ来るまで敵が残っていればだが。
「私の方は魔力を温存したいから、ここで打ち止め。あと一〇体、多分もう遠距離魔法を撃てるのはいない」
なら後は雑魚ばかりだ、心理的には。
西島さんの銃声が変わる。おそらく銃を・三〇八ウィンチェスター弾の方に変えたのだろう。
ほどなくして。
「今ので最後だな」
上野台さんの言葉で、西島さんからの銃声が止んだ。
「車に戻ろう。暑い」
「あと、そこの道の駅に寄りませんか。何があるか見たいです」
「だな。この先は行く必要がないだろう。今の集団がほとんどの魔物を片付けているだろうからさ。そこの道の駅を見て、来る途中にいた魔物一体を倒して、あとは温泉へ直行しよう」
上野台さんが言う通り、確かに暑い。
ただ八月の午後だからというのではなく、此処の気温か湿度、あるいは両方が船台あたりよりも高い気がする。
でも急いで走ると余計汗をかきそうなので、普通に歩くペースで車へ向かう。
歩きながらスマホで今回の成果を確認。
『アークゴブリン1体、メイジゴブリン1体、ホブゴブリン5体、ゴブリン1体を倒しました。経験値一六二を獲得。田谷誠司はレベルアップしました。現在のレベルは四一です』
やっとレベルが四一まで来た。最近は一日に一上がるか上がらないかのペースだから、本当にやっとという感じだ。
さて、レベル四一なら魔法が増えている可能性がある。
なので早速ステータスを確認。
察知が察知+になっている。あと、自動照準魔法もついている。
早速スマホで確認だ。
『察知+:敵の居場所を知ったり危険を事前に知ったりする事が出来る魔法です。常時起動で初歩は魔力を十五使用します。一〇〇〇メートル以内の敵の位置、及び自分及び対象の五秒以内の身体の危険、及び十分以内の潜在的危険性を知る事が可能です。またこれらの危険を睡眠時に感じた際は自動的に起床します』
ついに俺にも遠距離の敵を把握することが可能になったようだ。
危険を知る能力もかなりパワーアップした。
自動照準魔法についても確認しておく。
『遠距離攻撃実施時、適正な射程距離内にいる敵に自動的に遠距離攻撃武器、または魔法の照準をあわせる。敵が危険を察知して回避行動をとらない限り、攻撃を命中させることが可能。ただし射程外の敵や動きの変化が大きい敵には使用不可。三分間につき、魔力六を使用』
一気に使える魔法とスキルが来た、という感じだ。
ここ最近新しい魔法の習得が無かったからだろうか。
それとも今のライフルでの攻撃が何かのトリガーになったのだろうか。
わからないけれど、とりあえずは嬉しい。
これで遠距離でも経験値を稼ぐ事が出来る。
あと、俺がレベルアップしたという事は、西島さんもレベルアップしているだろう。
魔法やスキルが追加されただろうか。
ただその辺は個人的な事だから、聞くのも何だろう。
出来ればいい魔法かスキルが手に入っていればいいなと思う。
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