第一二〇話 久しぶりのお土産漁り

 冷凍食品店からは、街中を北上せず、トンネル経由で高速に乗るルートを選択。


「この前集団を倒したから、多崎までは魔物は少ないだろうしさ。それに高速ならパーキングエリアがある。この辺は店がないパーキングエリアが多いけれど、鶴須には店があるから何か面白いものが売っているかもしれない。そしてその先のスマートインターチェンジで降りれば、すぐ道の駅だ」


「何があるか楽しみです」


 理由はこんな感じだ。

 確かに高速を使わず街中を走っても、魔物はあまり出てこないだろう。


 宿から船台の中心部少し外れた冷食屋までの間に出た魔物は三体だけ。

 そして船台の北側は、ここ数日でみっちり走り回っている。

 それより北は上野台さんが言った通り、多崎まで多分魔物は出ない。

 だから高速で一気に行くのは間違っていないと思う。


 問題は買い物時間がどれだけ長引くかだけだ。

 ただ長い=楽しいという事でもあるので、あまり気にしないほうがいいだろう。


 そもそも何時までに何処に行くなんて決まりはない。

 楽しめて危なくないならそれでいい筈だ。

 

 高速を使えて魔物が出ないから、三〇分程度でパーキングエリアに到着。

 割とこじんまりとした感じだが、売店にレストラン、ガソリンスタンドとひととおりのものは揃っている。


「このパン、美味しそうですけれど冷蔵品だからちょっと無理ですよね」


「腐敗菌がいないから多分大丈夫だろうとは思うけれどさ。冷凍か、常温で持つものにした方が無難だな。という事でまずはこれ、ずんだ生クリーム大福、冷凍だから問題無い」


「確かに美味しそうです。なら……この『かもめの玉子』は大丈夫そうです。賞味期限がまだ10日以上残っています」


 俺は甘い物は嫌いではないけれど、特に欲しいとも思わない。

 だから別のコーナーを見てみる。

 冷凍牛タンは冷凍食品の店で大量に詰め込んだのを見たからいい。

 笹かまは真空パックならそれなりに持つようだ。

 だから、俺の甘くないおやつ用にキープ。


 あと、瓶詰めコーナーが結構面白い。

 濃厚熟成塩辛なんてのはちょっと試してみたいし、牛タンラー油なんてのも悪くないだろう。

 

「この冷凍生どら焼きもいいですね」


「いいけれど、こんなに買っても消費できるか」


「案外大丈夫です。船台に着く前にもプリンや桃関係を結構買ったんですけれど、ほぼ無くなってしまいましたから」


「そういえば風呂で食べるし、おやつの時間もあるな」


「考えたら一日五回、おやつの時間があるんですよね」


 西島さんの言葉で、思わず数えてしまう。

 朝風呂、朝の休憩時間、十時のおやつ、三時のおやつ、夜の風呂。

 確かに合計五回だ。

 どう考えても多過ぎる。 


「冷凍ならクーラーボックスに詰めればいいしさ。遠慮無く持っていこう」


「そうですね。冷凍で無くても、冷凍しておけば持ちます」


 今は俺の魔法収納アイテムボックス容量は二百キロを超えている。

 西島さんも同じ位はあるだろう。

 だからその気になれば、相当な量が……


 ◇◇◇


 次のパーキングエリアに併設された簡易な出口から高速を出て一般道へ。


「さっきのパーキングエリアは何も無かったですね」


「トイレ休憩用だろう、あれは。でも心配なく。次の大きい交差点を右」


 高速を出て五分かからずに道の駅に到着。


「ここは野菜が豊富だったんですね。しなびちゃっていますけれど」


「二週間近く経つから仕方ない。さて、さっきの店と違うお土産を探すぞ」


 お菓子系統は2人に任せるとして、俺はそれ以外の部分をぶらつく。


「このラングドシャ、さっきもありましたね」


「確かに美味しそうだからさ。さっき充分確保したから今はいいけれど」


「あと、此処はひまわり推しなんですね」


「みたいだな。この辺までは遊びに来ないから実は知らなかった」


 前に桃推しのパーキングエリアがあったなと思い出す。

 さて、店そのものはあまり広くない。

 別棟にある亜炭の博物館っぽいのが此処の道の駅のメインという感じで、こっちは食堂メインで、次が産直野菜、そしてお土産という感じだ。


 先程のパーキングエリアで打っているお土産はこの地域一帯、という感じだった。

 しかしこの売店で売っているのはもっと狭い範囲、多崎市中心という感じだ。


 だからアイテム数はそう多くない。

 その分短い時間で見終わってしまう。


「こっちの食堂が営業していればもっと楽しかったかもしれませんね」

 

「それは仕方ない。その代わりにお土産持ち帰り放題なんだからさ。

 ただ個人的には、店が営業していたらソフトクリームが欲しかったな。車で出かけて立ち寄った時、ソフトクリームってのは定番だと思うんだ」


「確かにそれは美味しそうです。暑いですし。

 とりあえずここはひまわりクッキーと、 ふんわりスフレチーズケーキ、ひまわりアイスで我慢しておきます」


 チーズケーキは地元の店が作ったものを冷凍して売っているもので、ひまわり関係も地元っぽい感じだ。

 お土産というか、ここから持っていくとすればきっと正しいのだろう。


 それだけ食べると太る、というのは今は考えない。

 長くともあと二十数日で、この世界は終わるのだから。

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