おまけ それぞれの戦闘スタイル

 夕食の後。


「そう言えば銃の改造をすると聞いたけれど、どんな改造をしたのか、見せて貰っていいかい?」


 上野台さんの言葉にシンヤさんは頷く。


「ああ。弾倉は外してあるが、これだ」


 出したのはでっかい拳銃だ。警察用の拳銃の数倍はある。

 よく見ると銃そのものはライフルだ。ただ銃床部分が拳銃の銃把のように細く短くなっているだけ。


 そう言えばハンドガン化すると言っていたな、と思い出した。

 しかし実際に見ると、ちょっと凶暴すぎる大きさだ。


「これ、片手撃ち出来るんですか」


 シンヤさんは頷いた。


「ああ。ちょっとばかし長くて重いが、今の握力なら問題無い。スクーターに乗ったまま撃つなら片手の方が便利だ。それにこれなら、練習すれば二丁拳銃だって出来るかもしれない」


 ライフルの二丁持ち……

 威力的にあり得ないが、レベルを上げて腕力や握力を上げれば可能なのだろうか。


「ちょっと持ってみていいですか」


「ああ」


 受け取って、右手だけで構えてみる。

 無茶苦茶重い。しかも前が長いから手にはんぱない力がかかる。

 これを片手だけで支えて撃って、ライフルの反動に耐える……常識的には無理だ。


「ありがとうございます。実際に撃ってみましたか、もう」


「ああ。元のまま両手持ちするのに比べると有効射程は落ちる。それでも百メートル程度なら問題無い」


 シンヤさんは俺から受け取った銃を持って、右手だけで構える。

 確かに銃口が微動だにしない。何というか決まっている。 


「バントライン・スペシャルもかくや、という感じだね。銃身が長い方が命中率があがるし、弾速も速いらしいけれど」


 何だろう。バント何とかというのは。

 しかしシンヤさんには通じたようだ。


「ああ。実は少しイメージした。あれより長く重くなったが」


「気分はワイアット・アープかな」


「一対一の決闘ではなく、街中でガンガン撃ちながら敵を追い詰めていくイメージだ。中二病的なのは認める」


 映画か小説か何かだろうか。 

 そう思ったところで上野台さんが、俺と西島さんの方を見た。


「有名な西部劇さ。ワイアット・アープというのは西部開拓時代の保安官で、銃の名手だ。バントライン・スペシャルってのはただでさえでっかいコルト・シングルアクション・アーミーという銃に特注の長い長い銃身をつけたスペシャルモデル。それでもここまで凶悪な銃じゃないけれどね」


 西部劇か。

 聞いた事はあるし知識としては知っているけれど、実際に見た事はない。

 アメリカ西部の開拓時代を舞台にしたガンアクション物、という程度のイメージだ。


「しかしシンヤ氏の戦闘スタイルは、西部劇だったのか」


「ああ。馬のかわりがバイクだ。軍の武器が使えない中での戦闘スタイルとしては有効だろう。防御力は無いが、機動性は圧倒的だ」


「なるほどね。そして咲良ちゃんが固定砲台タイプで、田谷君が武者タイプか。いや、田谷君の場合は武者というより護衛かな、咲良ちゃんの」


 確かに言われてみれば、俺はそういうスタイルかもしれない。

 近づく敵を倒すという形で。

 西島さんがまさに固定砲台だから、結果的にそうなっただけだけれども。


 でもそれならばだ。


「上野台さんは何タイプなんですか。魔法は化学っぽいですけれど、マッド・サイエンテストというのとは違う気がしますし」


「個人的には魔女か、あるいは邪神かな。見た者を呪うという感じでさ。まあ実際にはシンヤほど戦闘のイメージを持っている訳じゃないけれどさ。あくまで気分として」


 魔女か邪神、か。

 何というか、上野台さんの言葉は時として危うさというか、狂気っぽいものを感じる。

 普段は物知りで親切なお姉さんという感じなのだけれど。

 内に秘めた中二病的なものなのだろうか。それとも……


「ところで二丁拳銃という事は、実はもう一丁、同じ仕様の銃を作っている?」


 上野台さんの言葉にシンヤさんは頷く。


「ああ。予備を兼ねてもう一丁作った。ただ試したが、この銃で二丁拳銃はまだ無理なようだ。身体がブレて連射すると当たらない。自動装填魔法を覚えたから、一丁で連射した方が良さそうだ……」

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