第一〇五話 雨が降りそう

 上野台さんは北側でも同じようにスマホに魔物の位置を入力。

 そしてノートパソコンを取り出して、地図の確認をする。


「やっぱり減っているね。魔物がいるのは中心部に近い部分と、車やバイクで通っていない部分ばかりだ。あとレベルも六前後が多い。より確実に確認するには明日もここで同じように観測する必要があるけれど」


「そうしてくれた方がわかりやすいしお願いしたい。ところで田谷君にお願いがあるんだが、いいだろうか」


 シンヤさんが俺にお願いか。


「何ですか」


「今日は西の空に雲が多い。天気予報を見てみると午後は雨になりそうだ。雨の具合によってはスクーターから車に乗り換えるつもりだが、スクーターはあのファミレス以外の場所に停めてもいいだろうか。もちろん屋根があるところと言う条件で」


 それなら問題無い。


「それは大丈夫です。後で取りにいける場所でしたら」


「何ならこの先に止めている、今朝宿から乗ってきたマツダを使うかい?」


「いや、自分独りなら車高が高くてもう少し大きい車が実は楽だ。だからそれはいい」


 大きい方が楽なのか、シンヤさんは。

 その辺の感覚は俺にはよくわからない。


「わかった。それでこの後回るのは、私達が北側、和泉方面、シンヤが東側と南側でいいかい?」


「ああ。今日はレベル上げ以外にも車探しとか銃の改造とかやろうと思っている。車は船台空港付近にあるレンタカー屋が在庫が多そうだ。銃の加工が出来そうな場所も永町付近で探したから、そっち方面がいい」


「銃の加工って、どんな事をやるんですか?」


 西島さんは銃メインだから気になるのだろう。

 

「銃床を切って削り、片手持ちが出来るようにしようと思っている。その方が撃つ際に素早く構えられるし、車から撃つときに楽だ。レベルが上がって握力も冗談みたいになったから、ライフルの反動でも問題無いと思う」


 ライフル銃のハンドガン化か。確かに普通の人なら反動を片手で処理するなんて無理だろう。


 ただレベルが上がると体力も冗談みたいに上がる。俺だって3階建てのビルの屋上にジャンプして上れる位に。

 そしてシンヤさんは俺よりずっとレベルが上の筈だ。だからライフルの反動だろうと問題無い気がする。


「残念ですが私では無理ですね。手の大きさもあるし、腕力もそこまで無いですから」


「あと船台南警察署と磐沼警察署へ行って、銃弾の補充もしておこうと思う。手持ちの弾が一〇〇発を切ったから」


 おそらく俺達三人の合計より、シンヤさんの方が魔物を倒している。そしてシンヤさんは基本的に銃使いで、それも警察拳銃がメイン。

 だから弾が無くなるのは早いのだろう。


「わかった。それじゃそろそろ移動しようか」


 エレベーターで1階に下りて、そして車に乗って、自動車とバイクを停めた場所へと移動する。


 ◇◇◇


 シンヤさんと別れた後、俺達は北へ。

 

「まずは確認出来た魔物を潰していこう。三つ先の信号を右で、駅前を左」


 上から見て確認した魔物の位置を回って、1体ずつ倒していく。


「やっぱりビルの上から見た程度の位置把握では誤差があるなあ。一〇〇メートル位だから把握は出来るけれど」


「でも大分効率的です。この辺も2日前くらいは三〇〇メートル走るだけで魔物が出ましたけれど、今日は確認しながら走らないと魔物に出逢えないです」


「それだけこの辺を通って魔物を倒したというのもあるんだろうけれどさ」


 そんな感じで倒しながら東へ西へと走る。

 更に船台北警察署で銃弾を補給したり、更にはこんな観光も。


「これが船台の珍名所のひとつ、船台大観音だ。ありがたいかとか敬虔な気持ちになるかとかはさておいて、目立つことは確かだろう」


「確かに大きいです」


「何せ高さが一〇〇メートルあるからさ。あと中もなかなか面白いぞ。なかなか近代的で」


 昼食はまた今までと違うチェーンのファミレスで、厨房を漁ってから。


「調理のシステム化という意味ではこの前のイタリアンのファミレスが進んでいるかな。まあありがたくいただくけれどさ」


 昼食は鰻丼と味噌カツ丼とネギトロ丼、これを全部ミニ丼サイズで作って食べた。


「上物はミニ丼サイズじゃないけれどね」


 食べ合わせは無茶苦茶だと思うけれど、美味しいことは美味しい。


 そして昼食が終わった頃には雨が降り始めた。しかも結構激しい。


「こりゃ外で討伐は面倒だね。レインコートを着ても車の中が濡れるし」


 俺と西島さんは店を出る前にアウトドア用の雨具を上下着用する。


「上野台さんの雨具、何処かで調達しますか」


「私のはそのうちでいいよ。車の中からも魔物を倒せるからさ。ただ車の方も雨対策が必要だね。防水のシートカバーとか、バスタオルとか」


「魔法でドライが出来るようになればいいんですけれどね。レベル七の魔物ならあと二体で魔法が手に入りそうなレベルになります」


 俺より西島さんの方が経験値が高めなのは、まあいつもの通り。


「なら取り敢えず次から魔物二体は咲良ちゃん優先でいいかい」


「ええ。俺だと四体必要ですから」


 俺の経験値は現在、二一七一。レベル三一まではあと六五必要だ。


「なら咲良ちゃんが雨に濡れても乾かせる魔法を取れることを祈って行くとしよう。駐車場を出たら右、和泉中央の方へ向かうよ」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る