第一九章 対集団戦
第八一話 合流
車のデジタル時計が一〇時四三分になったところで、車は橋を渡った。
俺と西島さんがレベル二四、上野台さんがレベル一五。
レベル七前後の魔物と五分に一回以上戦った結果だ。
「この先左側にあるコンビニで待っているそうだ」
狭めの二車線道路でカーブが多い坂道。おかげで運転に神経を使う。アクセルを踏まないと止まるし踏みすぎると危ないしで結構難しい。
カーブを曲がった先、道路が二股に分かれた左側にコンビニの青い看板が見えた。
アクセルを戻しブレーキを軽く踏む。ほぼ真ん前、道路上で車は停止。
パーキングブレーキを引いたところで店内から身長高めの20代くらいの男性が出てきた。
勿論これがシンヤさんだろう。他に人がいる可能性はほぼ無いし。
「お待たせ。それじゃ早速だけれど運転手交代」
俺は扉を開け、外へ出る。
シンヤさんは運転免許を持っている。それも誰かのようにお情けで取れたものではなく、普通に車もバイクも運転できるようだ。
なので俺は神経が疲れる運転から無事解放され助手席へ移動。
「すみません。いきなり運転して貰って」
「事情は聞いている。大丈夫だ。それでどこへ行けばいい?」
「なら田谷君、カーナビのセットお願い。ゴコスの山羊山店。あそこならここから魔物無しで行けるだろうしさ」
「わかりました」
カーナビを操作して気づいた。この店って……
「最初に会った時に昼食を食べたファミレスですか」
確かに地図上は此処からそう遠くない。なおかつこの先はほとんどが大学施設。
だから案外簡単に行けそうだ。
◇◇◇
なるほど、車のまともな運転とはこういう感じなのか。
なんて事を観察しつつ、途中で魔物一体を西島さんが倒して、そして見覚えのあるファミレスへ。
シンヤさんは俺達とは違い車を駐車場内に入れて停める。
「それじゃ行こうか」
「先に行って下さい。すぐ行きます」
俺はそう言って、そして車を停めた場所の先の壁際方向へ。
昨日まで乗っていたスクーターが停まっていた。まあ俺が停めたのだから当たり前だけれど。
やっぱりスクーターの方が俺にはあっている気がする。
交差点等でも車の脇を走り抜けられるし、運転もそこまで気を使わないで済むし。
ただ上野台さんを含めての三人乗りは流石に辛いだろう。
車の方が冷房が効いている分楽だし、荷物を運べるというのはある。
だから船台で三人で暮らしている間は今のままだ、きっと。
経験値を考えたら船台に留まっている方がいい。
それに上野台さんは移動手段がないから、車で移動する必要がある。
その辺はわかっているのだけれど。
このスクーターも此処でこのままだろうか。
そう思いつつ、この場を離れて店の方へ。
見るとこの前の席にシンヤさんだけが座っていた。
「二人はキッチンですか」
「ここで待っててくれだと」
なるほど。なら俺もここで待つとしよう。シンヤさんの対面側に座る。
「とりあえず料理は期待していいと思います。上野台さんはここでバイトしていたそうなので、一応ファミレスレベルの料理は出てきますから」
「市場で仕入れた冷凍ものがまだまだあると言っていた。ずっとレトルトとかラーメンだったからさ。正直ありがたい。
敗走してきた後というのはちょっと格好つかないが」
ある程度は車の中で状況は聞いている。
「いきなり七体が襲ってきたって聞きましたけれど」
「ああ。間をとりつつ二体倒したところで矢が飛んできて、これはまずいと思って逃走にシフトした。
だから手下の雑魚しか相手にしていない。統率種が何だかは不明だ」
なるほど。
「俺達四人で勝てますか」
「手数があって、遠距離攻撃を使えるなら問題無いないと思う。今回は遠距離攻撃と魔物の数でやられた形だ。
僕の武器は警察拳銃。攻撃範囲は三〇メートルまで。ただしその範囲なら拳銃を確実に当てられる。五発しか弾が入らないからそれ以上だと銃ごと持ち替え。
そっちはどんな感じだ」
どうせ共闘するから言っても大丈夫だろう。
俺はそう判断する。
「俺が槍を使った近接攻撃専門。あと2人は魔法と銃撃で、見える範囲なら一〇〇メートル位は大丈夫のようです」
「遠距離から叩いて数を減らしてから突撃という形になるか。集団戦は初めてだが」
「こっちもそうですね。基本的に一対一でしたから」
「そうだな。集団で襲ってくる敵なんて昨日初めて遭遇した」
確かにその通りだ。
「他はどんな感じなんでしょうか。例えば関東とか」
「二十三区やその周辺はここより酷い事になっている筈だ。ただ情報発信が無いから確かめられない。六本木にいた馬鹿二人も一昨日から更新しなくなった」
ああ。六本木の高級ホテル最上階にいたあの女二人か。あれはそう長い事ないなと思っていたので納得だ。
見る価値がないどころか見るとうんざりするので確認をしていなかったけれど。
「そう言えば今、後から来たけれど何かあったのか」
「ここまで来たスクーターを停めているので、その確認に」
シンヤさんはそこで笑顔を見せた。
「いいな。トリシティ300だっけか。こういう時には最適なバイクだろう。
ビッグバイクは高速で長距離移動の時は確かに楽だ。しかし街中でちまちま止まる分には不便だし足元の熱が酷い。
あとで乗ってみていいか。どんな感じか確認したい」
「勿論いいですよ」
そこまで話したところで西島さん達がやってきた。
料理等は魔法収納に入れているようで手ぶらだ。
「おまたせ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます