七日目 八月三日
第一八章 突然の連絡
第七七話 ある意味想定通りの朝
危険な予感はしていた。
だから念の為、午前四時に起きられるようにスマホのバイブをセットしておいた。
何故午前四時かと言うと、スマホで確認した日の出の時間が午前四時四一分だったから。
つまりはまあ、早朝の風呂対策。
更には俺が収納しているもののうち、グラノーラとヨーグルト、更にはプリンと桃ロールケーキ、桃シュークリーム、桃ジュース各銘柄を西島さんに渡しておいた。
これで予想される事態はほぼ防げる筈だ。多分きっと。
翌朝、スマホのバイブで起きた時は問題はなかった。
西島さんも上野台さんも熟睡しているようだ。
もちろん実際に見て確認なんて事はしない。
西島さんが寝ている最中どんな状態かはよく知っているから。
部屋を出て、作動の魔法で鍵を閉めて、隣の大浴場へ。
こちらは昨日使わなかった、露天風呂がない方の大浴場。
東南の角にあるので景色がよく見える。
無事到着してから、西島さんにSNSで連絡しておく。
部屋にいないけれど、隣で風呂に入っているから問題無い。朝5時半には部屋に戻ると。
考えられる対策は全てやった。
だからこれで問題はない筈だ。
そう思いつつ、ヨーグルト&シリアルでいつもの朝食。
当たり前だが室温高めで少し蒸しているので涼却魔法を起動。
だいぶ快適になった。
空が少しずつ明るくなってくる。
手前側が小さな港、あちこちに松の木、そして海と島という景色。
成程、確かに悪くない景色だ。
それでも景色をずっと見ていると飽きる。だから今日の行程を調べておこう。
まずは潮竈神社へ行って刀の確認。
この付近は市街地なのでそれなりに魔物が出るだろう。
そしてそのまま国道に沿って船台を目指せばいい。
しかしこれだけ市街地化しているなら少し回ってみてもいいかもしれない。
勿論経験値稼ぎの為だ。
何せ三人いるから、しっかり回らないと経験値が稼げない。
上野台さんは攻撃回数が限られているから大物を回す必要があるし。
あとは基本的に船台の、中央より北側を西に向かって回ればいいだろう。
西島さんが宿は秋兎温泉と言っていたから、最後に西北側から西南側へ回れば。
あとは観光で青葉城を回るなんてのもした方がいいのだろうか。
他の場所も確認してみる。
シンヤさんが泊まっているという温泉も調べてみた。
なるほど、新しくて綺麗で悪くなさそうな施設だ。
ただ見た目が温泉というよりビジネスホテル的というかやや殺風景に感じる。
元々温泉を楽しむと言うより、併設されている自転車の施設を楽しんだ後の宿泊所という感じだし。
なんて朝食を食べながら景色を見ながら、ネットをやりながら。
完全に陽が出て明るくなり、朝食のシリアル&ヨーグルトもなくなったところで。
ガラッ。引き戸を開ける音がした。
うん、まあ、何を注意してもそうなる気がしていたけれど。
もちろん引き戸を開けたのは魔物ではない。
「やっぱりこっちの方が景色がいいな」
「そうですね。日の出だけでなく松島の方までよく見えます」
予想通り2人ともやってきた。
一応タオルは巻いているけれど。
「露天の方がいいんじゃないですか、朝ですし」
「悪くはないんだけれどさ。どうせなら広い風呂も堪能したいと思って」
「あとやっぱり涼しくしていますね。田谷さんの事だからきっと室温を涼しくしているだろうし、なら一番快適かなと思ったので」
はいはい。
もうこうなったら仕方ない。
隅で地蔵化していよう。
◇◇◇
「確かに朝風呂に入れば目覚めはすっきりするし、早朝に出れば時間を有効に使える。
なかなか実用的だな、この習慣も」
「ええ。だから宿はいいお風呂がついている事が絶対条件なんです」
何だかなと思いつつ、今日も朝六時に宿を出発する。
「まずは潮竃神社でいいですね」
「ああ。あそこへ行けばそれなりに刀はあったと思う。槍も少しはあった記憶がある」
国道に出て、そして船台方面へ。道は二車線でそこここに停まっている車がいるのでそれなりに気を使う。
ただ車の運転は結構慣れた。ウィンカーなんかは省略しているし車線は左右両方使うしで教習所では通用しない運転だけれども、今更文句を言う人はいないだろう。
左に並木っぽい松と海、右に土産物店という辺りで早速スマホが警告音を発した。
車を止めてパーキングブレーキをかけ、エンジンはかけたまま外へ出る。
「魔物の強さはどれくらいですか」
「うーん、多分そんなに強くないと思う」
上野台さんは魔物の強さを見えなくてもある程度把握できる。
朝風呂でそんな話を聞いて知った。
上野台さんの能力に『自分から一〇〇メートルの範囲の歪みを見る』というものがあるそうだ。
イメージ的には『概ね間隔一〇センチで南北、東西、上下に白線が引かれているように世界を認識する。その線の歪みで魔物や人間の存在、強さがわかる』そうだ。
そして今回の魔物はそんなに強くない模様。
「なら魔法や弾が勿体ないから俺が倒します」
一応銃の弾はオートのライフル用、警察の拳銃用とも充分な在庫がある。また入手する事も可能だ。
でもこういう時に倒しておかないと、レベル的に西島さんにおいていかれる。
遠距離攻撃出来る敵の場合、西島さんのライフル銃や拳銃を使う方が楽だから。
察知で場所がわかるので出てきそうな場所へ先回り。黄色い身体が出てきた瞬間長い方の槍で突き刺す。
スマホで確認。ホブゴブリンのレベル5だった。
ちょっと前はこれでも結構強い、というか速いと感じていたんだけれどな。
そう思いつつ車へ戻る。
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