五日目 八月一日
第一三章 順調な五日目?
第五七話 順調な五日目朝
朝は部屋の露天風呂で、朝食を食べる時間含む1時間を西島さんと一緒という苦行から始まった。
朝食はヨーグルト&シリアル&コーヒー。確かに冷たいヨーグルトとシリアルは風呂にあう。そしてあのコーヒーメーカーで入れたコーヒーは美味しい。
でもこれが毎日続くかと思うと……
まあ慣れるだろう。そのうち。
六時頃に宿を出た。氷山の街には寄らずに北上し、レベル四のホブゴブリンを何体か倒した後に警察署に到着。拳銃用の弾を補充し、割と近くにある銃砲店でライフル用の弾二種類を確保。
なお銃砲店へは
① シャッターの鍵を炎纏で破壊し、
② 扉の鍵をやはり炎纏で破壊する
という正面突破で侵入。一応鍵部分だけを壊したし帰りにはシャッターを閉めておいたから、外見はそう変わらないけれど。
朝のレポートは後でゆっくり確認することとして無視しつつ北上。
更に魔物を数体倒した後、福縞のひとつ手前の街でもう一軒銃砲店へ。ここは民家にくっついた形で家の鍵が開いていて、家探しして鍵を発見したので鍵破壊はなし。
「炎纏で鍵を壊すと魔力消費が大きいからなあ。他人の家や建物を壊すのはあまり好きじゃないし」
「田谷さん、残り魔力はどれくらいですか」
「一七。もうすぐレベル一五だから上がれば少し増えたけれど、炎纏を使えるのはあと二回。回復があるから夕方頃にはもう一回くらい使えるようになると思うけれど」
更に北上し数体魔物を倒して二人ともレベル一五になり、そしてついに福縞の市街地へ。
山っぽい場所から緩い坂を下りて周囲から緑が消えたところで国道から左折、昨日調べておいたイートインありのコンビニで休憩。
「そろそろ牛乳を飲んでおいた方がいい気がするんです。ロングライフもの以外は賞味期限がある筈ですから」
確かにそうだな。そう思ったので冷蔵の棚からパック牛乳を手に取って賞味期限を確認。
「思ったより長いな。製造からみて二週間くらいあるようだ」
「本当ですね。ならまだ焦らなくていいかも。でも気分なので小さいの一パック、貰っておきます」
更に気になったので他の食品についても賞味期限や消費期限を確認。
「パンはだいたい全部アウトです。特殊なもの以外は四日が限度みたいです」
「他もダメっぽいな。レトルトや缶詰、あとは乾いたお菓子類か」
「プリンとかゼリーとかはもう少し大丈夫みたいです。ケーキ類はだめですけれど」
結果、牛乳とプリン、あとは冷蔵ではない一般の棚にあった箱入りチョコケーキという内容でおやつの時間を開始。
「今日は順調ですね。まだ一〇時前なのに目的地の福縞に到着です。魔物もレベル三やレベル四が定期的に出またおかげで、あっさりレベル一五になれました。この調子ならレベル一六もそう遠くない気がします」
「確かにそうだよな」
俺の経験値は現在四九〇で、レベル一六間では残り六六。レベル四の魔物六体分だ。そして西島さんは俺より経験値が多めの筈。
だから午前中にはレベルアップ出来るだろう。
「五日目になってそこそこ魔物が蓄積していて、なおかつ倒す人がいなかった。魔物同士の戦いでレベルが低い魔物はいなくなった。そんな感じでしょうか」
「ああ」
今日ここまではそんな感じだ。途中で人口がそこそこの街を通ったというのもあるかもしれない。
なんて考えてそういえばと思い出した。
「今日のレポートを見てみようか。魔物の平均レベル等もわかるだろうし」
「そうですね」
スマホの向こう側が察してレポート表示画面になる。
『四日経過時点における本世界のレポート』
『多重化措置後四/三五経過。
魔物出現数累計:五四二万六四三〇体
うち二十四時間以内の出現数:六七万六〇五〇体
魔物消去数累計:一九七万一九二九体
うち二十四時間以内の消去数:三三万九六四〇体』
『当世界開始時人口:八〇四五人
現在の人口:七三三九人
直近二十四時間以内の死者数:四六人
うち魔物によるもの:三一人
累計死者数:六四六人
うち魔物によるもの:一八八人』
『現時点でのレベル状況
人間の平均レベル:一三・八
人間の最高レベル:レベル三四
人間の最低レベル:四
魔物の平均レベル:三・四
魔物の最高レベル:十四
魔物の最低レベル:一
なお現時点以降、発生時の魔物レベルが最大五となります。ご注意下さい』
『本世界における魔物出現率:一一・四三パーセント
歪み消失率 六・四パーセント』
最終目標歪み消失率(規定値)達成までややペース不足』
うーむ、大体昨日と同じ傾向だと思っていいのだろうか。
「うーん、これでもペース不足だと、最終的には六割くらいの魔物が倒される必要があるかもしれません。歪み消失率を魔物出現率で割ると五六パーセントくらいですから」
なるほど。でもそうなるとだ。
「結構厳しいかもしれないな。人が通らないような田舎に単独発生した魔物は倒せないだろうからさ」
「確かにそうです。ただ日本でだけ頑張っても意味はないんですよね、きっと。世界全体での話ですから」
「確かにそうだな」
俺達は俺達で生き残るしかない。出来る事以上を狙っても危険なだけだ。
「俺達は淡々と魔物を狩って、レベルアップしていくしかないな」
「そうですね。日が経つにつれて魔物の数は減って、そして強くなるでしょうし」
今は出てくる魔物も強くない。だから俺も西島さんも問題無く倒せる。
でも三五日間の終わり頃までこの調子で行けるとは限らない。同じ一〇レベル差であっても、
● 俺がレベル一一で魔物がレベル一
● 俺がレベル七〇で魔物がレベル六〇
では大分違いがあるだろう。
後半になったら出来るだけ人口密集地には近寄らないつもりだ。この場合の人口密集地とは首都圏とか名古屋近郊とか京阪神とか。
それでも最終日には何処であろうとレベル三五が出てくる可能性がある。
対策は移動場所の選択と、経験値を稼いでレベルアップする事くらい。幸い奥の細道ルートをのんびり辿る分にはそう大きい街は通らない。次に行く船台が最大だ。
「ところでもうすぐレベル一六じゃないですか。今度はどんな魔法が手に入るのでしょうか」
うーん、難しい。
「収納魔法と察知魔法は便利だけれどさ。あと使っているのは炎纏くらいか。鍵を壊すのに」
「そうですね。私もとりあえず察知は欲しいです。これで目標が見えなくても狙えます」
西島さんの射撃は既にチートに突入している気がする。見えなくても当たるかどうかわかるなんて能力を持っているし。
これで察知を取られたらますます俺の戦力的意味が……
でもまあ、西島さんが嬉しいならいいとしよう。
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