第四七話 そして高速へ

 ホームセンターから高速へ向かう途中、跨線橋の手前でレベル三のゴブリン一体が出現。その先しばらく走り、高速が見えたところでレベル三のホブゴブリンが出現。

 どちらも特に問題なく包丁槍で倒した。結果俺もやっとレベル一一に。


『田谷誠司の現在のステータス。レベル:一一。総経験値:二四六。次のレベルまでの必要経験値:五二。HP四六/四六。MP二一/二一。

 使用可能魔法(使用回数):風撃(一~三)。炎纏(一~三)。完全治療(一)。簡易治療(七)。簡易回復(二一)。灯火(二一)。収納(常時)。察知初歩(常時)』


 また魔力が減っている。


「今度は察知という魔法が増えてます」


『察知:敵の居場所を知ったり危険を事前に知ったりする事が出来る魔法です。常時起動で初歩は魔力を六使用します。初歩の場合、一〇〇メートル以内の敵の位置、及び自分及び対象の二秒以内の身体の危険を事前に知る事が可能です』


 なるほど。西島さんに頼らなくても敵の居場所がわかるのは便利だ。それ以外の危険を知る事が出来るのも今後敵が強くなった時には役立つに違いない。


「やっぱり田谷さんの方が魔法っぽい魔法を入手しますよね。完全治療とかもそうですし」


「ファンタジーとかなら補助魔法というジャンルで二戦級とされそうな感じだけれどな。常時起動分、使える魔力が少ないし」


 西島さんの聴覚調整能力は能力だから魔力を消費しない。俺の察知は魔法だから魔力が必要となる。勿論能力というか効果は少し違うけれど、この辺少し不便というか損というか、何か微妙に感じてしまう。


 しかしここは便利になった事をむしろ喜ぶべきなのだろう。だいたい俺は魔法をほとんど使っていない。西島さんに簡易回復と完全治療を使った位だ。だから魔力が少なくとも実用上は気にする必要はない筈だ。


「こうなったら補助系統の魔法は全部田谷さん任せにしてしまった方がいいのでしょうか。あ、そう言えば収納、初歩でなくなりましたけれどどう変わったのでしょうか」


『収納は物を異空間に収納、取り出す魔法。収納可能容量は重量依存で、魔力消費によって収納量を調節する事が可能。最大で魔力二〇まで使用可能』


 なるほど。


「違いは魔力を使用して容量を増やせる事だけ。時間停止機能は無いようだ」


「残念です。何か収納の上級で時間停止機能付きなんてのがあればいいんですけれど」


 西島さんはそう言って俺のスマホを覗き込む。表示に変化はない。


「うーん、回答は無しですか」


「今のままでも充分便利だとは思うな」


「確かにそうなんですけれどね」


 そうそう、今だって充分便利なのだ。電子レンジを持って旅するなんて普通ではあり得ないだろう。


「それじゃ行こうか。予定通り俺もレベル一一になったし、ライフルの試射もしたし」


「そうですね。氷山で経験値を稼いで温泉です」


 その温泉というか風呂原理主義が変わる事はないのだろうか。そう思いつつスクーターにまたがって発進。交差点を左、右と曲がって高速の高架を超えた所を左。


 ETCではなく一般の入口で、一応券を受け取ってポケットに入れて入る。


「今はこんな感じだから問題ないですけれど、高速ってバイク二人乗りで大丈夫なんですか?」


「一応このスクーターは排気量大きいし、高速で二人乗りしても問題ないタイプの筈だ。まあ免許を取ってから三年以上とかあった気がするけれどさ。そもそも俺は無免許だし」


「えっ、無免許だったんですか?」


「言っていなかったか?」


 そう言えば言った記憶はない。


「無免許にしては慣れてますね。後ろに乗っていても怖くないです」


「スクーターは操作が簡単だからさ。スロットルをひねれば加速するから。ブレーキは自転車と同じだし」


「私、自転車も乗れないんですよね。特に幼稚園の頃はすぐに喘息の発作を起こしたので、運動厳禁でしたから」


 しまった。自転車に乗れない話は以前聞いていたのだ。


「でもだからこそこうやってバイクに乗るのって楽しいです。自動車や電車とは全然スピード感が違って。 

 あと高速と言えばサービスエリアですよね。もしあったら寄ってみたいですけれど、大丈夫でしょうか?」


 良かった、すぐ話題が変わった。

 そしてサービスエリアについては調査済みだ。


「小さいパーキングエリア二つと大きいサービスエリアが一つある。大きい方ならそこそこ売店も充実している筈だ」


「楽しみです。車で遠出とかあまりしていなかったので。どれくらいかかりますか?」


 高速道路はそこそこ空いている。所々で止まっている車はあるけれど、車線が広いから余裕で避けられる。

 そして今乗っているスクーター、大きいだけあってそこそこパワーがある。俺がその気になれば相当な速度が出そうだ。

 まあ西島さんが乗っているし、そこまでは出さないけれど。


 分岐の標識が出た。左、氷山と書いてある車線を選ぶ。分岐のカーブに突っ込んでいる車が一台。それを避けつつ返答。


「ここから五〇キロくらいだ。よほどの事が無い限り一時間もあれば着くと思う」


「楽しみです。あ、でも田谷さん、収納の余裕、あとどれくらいありますか?」


 確かに俺、西島さんともに荷物は割と容量一杯に入れている。しかし問題はない。


「昼食、夕食、そして朝食分空いたしさ。それにレベルアップで六キロくらい空き容量は増えている筈だ」


「なら少しくらいお土産を持っていってもいいですよね」

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