第四六話 俺の出番が……
ホームセンターであれこれ見ている最中、朝のレポートの時間になった。
『三日経過時点における本世界のレポート』
『多重化措置後三/三五経過。
魔物出現数累計:四七五万三八〇体
うち二十四時間以内の出現数:九一万九四二九体
魔物消去数累計:一六三万二二八九体
うち二十四時間以内の消去数:六七万四五五一体』
昨日よりも更に魔物消去数が増えている。おそらくこれは魔物対魔物が増えたからだろう。
人口は魔物より遙かに少ない。だから一部の人が相当な数を倒したとしても、全体ではそんな大した数値にはならない筈だ。
『当世界開始時人口:八〇四五人
現在の人口:七四四五人
直近二十四時間以内の死者数:四四人
うち魔物によるもの:二八人
累計死者数:六〇〇人
うち魔物によるもの:一五七人』
今回も死者数は減っている。そして死者数、魔物以外が四割。これはどういう死因なのだろう。例によってスマホはこの件については返答してくれないけれど。
『現時点でのレベル状況
人間の平均レベル:九・九
人間の最高レベル:レベル二七
人間の最低レベル:三
魔物の平均レベル:二・九
魔物の最高レベル:十二
魔物の最低レベル:一
なお現時点以降、発生時の魔物レベルが最大四となります。ご注意下さい』
つまり俺は平均レベルギリギリというところのようだ。勿論これは昨日あまり魔物を倒さなかったからだけれども。
逆に言うと昨日サボっても平均という事は、積極的には魔物を倒さないという方針の人が相当数いるという事でもある。
生き残っている人のレベルは二極化しているのかもしれない。出来るだけ魔物に会わないようにしている人と、積極的にレベルアップを図っている人と。
『本世界における魔物出現率:八・三三パーセント
歪み消失率 三・八パーセント』
最終目標歪み消失率(規定値)達成までややペース不足』
「ややペース不足、に変わりました」
「確かにそうだ」
「歪み消失率から魔物出現率を割ると四五パーセントくらいです。なら大体魔物を五割消せば達成、という計算でしょうか」
なるほど。そうすれば確かに現時点の達成率になる。そして四五パーセントでややペース不足というのなら、五〇パーセント目安というのは正しいかも知れない。
「確かにそんな感じかもな。ただ俺達二人がどうこうして達成できる数値じゃない。こっちとしては達成してくれと思いつつ見守る程度か、出来るのは」
「そうですね」
槍用の丸棒、穴を開ける電動ドリルと刃、固定するボルト、そして洗濯用のネットを確保。
「あとはライフルを試射しておくか」
「ええ」
品出し中らしく粉末洗濯洗剤一キロ入りが多数入っていた段ボール箱があった。中身を三箱程残して後は出す。
これで銃の的代わりになるだろう。残した三箱は風で動かないための重り代わりだ。
箱を持ってホームセンターの外へ。誰もいない歩道上に置いて距離を取る。
「ここで一〇〇メートル。これでいいか」
「大丈夫です。これより長い距離という事は無いでしょうから」
西島さんはライフル、自動の方を取り出す。
なおライフル三丁は、
○ 西島さん
・ マグナム弾を使うボルトアクション
・ 普通のサイトを使う自動ライフル
○ 俺
・ ドットサイトを装着した自動ライフルを俺
という担当にして、それぞれの魔法で収納している。
『銃は私の方が得意です。銃にあった魔法も持っています。ただ田谷さんも一丁持っているといざという時便利だと思います。
あとどうせなら操作が近い方がいいです。なら見る部分が同じものの方がいざという時にいい気がします』
分担の理由はこんな感じだ。弾もそれぞれ分けて持っている。
また今朝からは電子レンジは西島さんではなく俺が持っている。西島さんの収納容量では電子レンジを入れると残りが四キロちょっとしか無くなるから。
「それじゃ撃ちます」
西島さんが構えてすぐ拳銃と少し質が違う音が響いた。
一〇〇メートル先に立てた段ボールの、洗剤の商標の丸いマークの右下側に穴が開いたのが見える。
レベルアップすると目もかなり良くなる。元の視力ならこんなの見えないだろうところまで、意識すればはっきりと見える。
「余裕で命中だな」
「何かこれを見なくても当てられそうです。構えて狙った時点でどうすれば当たるのか何となくわかるので。
ただ一応サイトの方も調整しておきます」
そう言えば拳銃の時も言っていたなと思い出す。
『何となくわかるんです。これなら当たるって』
説明が出ていないかスマホを確認。
『西島咲良は拳銃という遠距離攻撃武器を継続して使用しています。使用回数及び考察、工夫等が一定値を超えた結果、遠距離攻撃能力が成長しました。
その結果、拳銃やライフル銃の使用要領、命中率等が向上しています』
西島さんの能力のようだ。しかし前に聴覚調整能力について知った時にも思ったのだが、こういった能力はステータス表示には出てこないのだろうか。
『能力には多様な種類があります。所持する全ての能力を表示して読解するにはそれなりの時間が必要です。ですので『誰の・何に対する・どんな効果の能力』と具体的に指定しない限り表示はされません』
なるほど。なら俺にもそういった能力はあるのだろうか。
『あります。ただし『何に対する、どんな効果の能力』かを指定しないと表示されません』
なるほど、一覧で表示されるなんて便利な機能はないようだ。
『その通りです』
なんてスマホ相手にやっていると。
「これでサイトの照準はあったと思います。次はもう一丁、威力が大きい方を試してみます」
先程より更に空気を振るわすような射撃音。やはり洗剤のマークのほぼ中心に穴が開く。
◇◇◇
結局俺のライフルのドットサイトも調整して貰った。俺が狙うとどうしても微妙にずれが生じてしまうからだ。
「これで遠いところに敵が出た場合でも安心です」
「ああ」
西島さんは安心だろう。ただ俺はそこまで自信はない。
いや、俺でもライフルを使えば一〇〇メートル先のゴブリンに当てる事は出来る。じっくり狙って撃てば。
ただ西島さんならアイテムボックスから出して構えてすぐに撃って当てる事が可能だ。俺が狙って撃つ間に五発全部を撃って命中させる事が出来るだろう。敵が五体いても問題無く。
長距離はもう西島さんに任せてしまおうか。しかしそうなると俺の出番が無くなりそうな気がする。今だって魔物を見つけるのは西島さんの方が速いし、その気になれば西島さんが拳銃一発で倒す事も可能なわけで……
弾がもったいないけれど、少し訓練した方がいいかもしれない。今度警察署か銃砲店で弾が大量に手に入ったら練習しよう。
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