第九章 停滞の日

第三八話 現実に存在する武器屋

 銃砲店に入るのは少し手間取った。


 店の入口は当然閉まっている。窓ガラスも頑丈そうで壊すのは大変そうだ。

 なので俺は三階建てビルの屋上へジャンプ。屋上から中に入る扉も鍵が閉まっていたので、刺身包丁に炎纏魔法を使って鍵を壊して侵入。


 ただし家から店に入る扉も鍵がかかっていた。なので家の方の扉から西島さんを呼んで家捜し。徹底的に調べた結果、書斎らしい部屋の机の引出し内から手提げ金庫を発見。


 もう一度炎纏を使って鍵を壊して金庫を開ける。中から鍵束を発見。この鍵束の鍵でやっと店に侵入。棚にも鉄格子タイプの鍵がかかっていたが、手提げ金庫にあう鍵が入っていた。


 何やかんやでここまで三〇分以上かかった。しかし成果は今まで以上だった。


「銃だけでなくナイフや刀っぽいものも扱っているんですね」


「狩猟用品をひととおりって感じだ。


 銃や弾だけでなく、ホームセンターには無かったいかにも武器という感じのナイフも並んでいたのだ。

 しかも銃だけでも三〇丁以上ある。


「私も銃について少し調べてみたんですけれど、結局はライフルが一番強力で、その中で一番一般的なのが・三〇八ウィンチェスターだという事くらいしかわかりませんでした」


 並んでいる銃を見ながら西島さん。それって結構調べたのだろうなと思う。俺もあれこれ調べたのだけれど大して変わらない程度の知識しかない。


「猟銃はまず自動オートのライフルでいいよな」


「ええ。強力な相手に対しては連射しやすい方がいいですから。あとは威力重視の大口径を別に」


 かかっている猟銃は圧倒的に散弾銃が多い。これは法律のせいだろう。

 確かライフルは散弾銃を連続して一〇年以上所持していないと持てないとか決まっているらしい。昨日Webページを読みまくって得たうろ覚えの知識だけれど。


 しかし今回は威力重視という事でライフル銃。それもまずはいざという時に簡単に次弾が撃てる自動タイプ。

 棚を見てみると三丁あった。どれもブローニングのBARライフルで口径は・三〇八ウィンチェスター。他の自動ライフルは無い。


 昨日調べた時、何処かのWebページに『ライフルで自動なら日本だとほぼこれ』と書いてあった。どうやらその通りらしい。

 細かく見てみたがほぼ同じに見えるので値段の高い方から二丁いただく。


「あとは威力重視か」


「そうですね」


 ボルトアクションのライフルは自動オートと違って一発撃つ毎にレバーを操作する等で次弾を装填する。その代わり堅牢で、発射時のブレが無く、命中精度が高い。

 Webページで調べたところそう書いてあった。


 この方式のライフルは八丁。ただし威力重視となると、ここに在る中で先程の自動ライフルより威力がある弾を使うのは三丁だけ。

 スマホでスペックや付属品、評判を調べて……


「これにしようか。この拡張マガジンをつければ五発入るし、装填もレバーを引いて戻すだけだし」


「そうですね。ただ反動が大きいというのが少し心配です」


 スコープも選ぶ。そこまで遠くの対象を狙って撃つという事は無いと思うので等倍からある程度ズームが出来るもので口径大きめのもの。


 一倍~八倍というのがあったのでこれを二個いただき、自動のうち一丁とボルトアクションの方へ装着。

 なお自動のもう一丁はスコープではなくオープン型ドットサイトをあわせてみた。遠距離向きではないが広くて見やすいかと思ってだ。


 なお取り付けは別部品が必要だったが、流石専門店だけあって一通り揃っていた。なのでそう苦労せず取り付けが完了する。


 弾は適合するものをあるだけいただいた。やはり・三〇八ウィンチェスター弾は大量にある。警察署で手に入れられる拳銃用の弾数よりずっと多い。

 強力な方の・三〇〇WinMagも余裕で五〇〇発以上。


「これなら弾数をそこまで気にしないで練習出来ます」


「ああ。勿論他の銃砲店でも入手するつもりだけれどさ。当分は大丈夫だ」


 あとは銃のお手入れ道具なんてのもいただいた。オイルとか長いブラシとかフェルト付きの棒とか。


 そして銃だけでは無い。近接攻撃用のナイフも良さそうなものがあった。正確には近接攻撃用ではなく獣の止め刺し用らしいけれど。

 剣鉈とかナガサとか、現在の俺のメイン武器である出刃包丁より凶悪そうなのが何本かある。当然ありがたく全部いただく。


「ホームセンターよりやっぱり専門店だな」


「武器という意味では間違いなくそうですね」


 この店だけで一時間半位使ってしまった。色々探したり銃にスコープを取り付けたり、操作の練習をしたりなんて作業をしたから。


 それに銃だの付属品だのナイフだのを入れたので収納も限界だ。容量が足りなくなって水のペットボトルを二本抜いた位に。


「それじゃ行こうか」


 そう言った途端。

 ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 スマホからお馴染みの音が鳴り響いた。


『魔物出現! 一〇〇メートル以内!』


「外に出ようか」


「そうですね」


 店の出入口から鍵を開けて外へ。上から飛び降りてきたりしないよう道路の真ん中に移動。

 車道は一車線でそれほど広くは無い。ただし両側に広めの歩道があり、ビルと駐車場が交互にあるような場所なので不意打ちされる可能性は低い。


「慣れた拳銃を使います」

 

「わかった」


 今回は西島さんの番だ。勿論俺もすぐ攻撃出来るよう、出刃包丁槍を構えてはいるけれど。


 今のところ見える範囲に魔物はいない。周囲を注意して見ながら耳を澄ませる。怪しい物音がしないか。


「こっちです」


 西島さんの耳が捉えたようだ。駅側に向けてゆっくり歩き出す。俺は念の為西島さんの後ろを注意しながらついていく。


 お店一軒を過ぎて西島さんは右を向いた。拳銃を持つ右手をすっと伸ばす。その先、駐車場の中央付近に一体。


「いました!」


 大声で言ったのは魔物に気づかせる為だろう。案の定魔物、ゴブリンはこっちを見て、そして走り出す。速度からみてレベル三だ。


 ダン! 銃声が響いた。あっさり魔物が倒れる。

 俺は念の為スマホを確認。警告は消えている。つまり出現は今の一体だけのようだ。


「ゴブリンならこの銃でも大丈夫ですけれどね。今日からは最初からレベル三の魔物が出るので、あのホブゴブリンも何体か出てくるかも知れません」


「だな」


 ただホブゴブリンもレベル三なら警察の拳銃で倒せる。日太刀でその辺は実戦済みだ。それに……俺はレーザー距離計を出してゴブリンまでの距離を測る。一三・六二メートル。


「西島さん、銃が上手いよな。この距離だと俺は当てる自信がない」


「何となくわかるんです。これなら当たるって」


 西島さん、既に俺より強いのではないだろうか。攻撃系の魔法も俺より持っているし。


■■■ 補足 ■■■

今回手に入れた銃やナイフはこんな感じだと思って下さい。

【ライフル銃】

 ● ボルトアクション 

   Strasser RS14 LUXUS2 .300WinMag

 ● 自動オート

   Browning BAR MK3 .308Win (二丁とも)

 ● スコープ 

   Vixen 30mmチューブスコープ 1-8×25mm

   (光学1~8倍)

 ● ドットサイト

   VORTEX AMG UH-1 GENⅡ


【ナイフ】

 ● フクロナガサ 八寸

 ● 土佐狩猟剣鉈 八寸

 ● コールドスチール ブッシュマン

……辺りだと思っていただければ。

 (あえてそのものとは書きません。類似品は結構あるので。いいものも、まがいものも……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る