第八章 魔法と能力の理由?

第三四話 新装備を考える

 警報時に停まってすぐ戦闘状態に入れないのは、スタンドを立てるという動作が必要になるからだ。ならスタンドを立てる必要がない乗り物に乗り換えるのが手っ取り早い。


 ただ自動車は候補にしない。今まで通ってきた道では交差点の信号手前等では全車線に車が止まっているなんて事があった。

 スクータなら横を通っていける。しかし自動車ですり抜けは無理だ。


 スクーター並みの幅で自立出来る乗り物。となると三輪バイクみたいな物になるだろう。


 スマホで検索してみる。どうやら三輪のバイクはトライクとサイドカーがあるらしい。ただサイドカーだと幅的にすり抜けは辛そうだ。


 何かいいのが無いだろうか。そう思って『三輪バイク』『トライク』で検索して参考になりそうな記事を読む。


 良さそうなのがあった。今乗っている前が二輪のスクーターの最上位機種。これは前二輪を傾かない様に固定する事が出来るようだ。


 勿論条件はある。速度一〇キロ以下とかスロットル全閉状態とか。でもどうせ停まろうとしている時なのだから問題ない。

 これなら停まってすぐ降りても大丈夫だ。


 このスクーター、この近くで手に入らないだろうか。福縞県で調べてみる。試乗車は……なし。中古車は……ある。しかも岩鬼市内だ。


 走行距離は短いし程度は良さそうだ。後ろにボックスがついているのは外せばいいだろう。場所もここから二〇分かからなそう。

 明日朝に寄ってみよう。そしてもし良ければそのまま乗り換えてしまおう。


 さて、お湯に浸かっているうちに暑くなってきた。なので一度立って浴槽縁に腰掛ける。足だけお湯に浸けている体勢だ。これでしばらく持つだろう。

 それでは次、武器について調べよう。


 警察の拳銃は威力がそれほど大きい方では無いし、ちょっと離れると当たらなくなる。だからもっと強力で射程が長い銃はないだろうか。

 

 軍や自衛隊がダメなら後は猟銃だろう。そう思って調べてみる。猟銃にも空気銃、散弾銃、ライフルと種類があるのか。なるほどなるほど……


「田谷さん、何を見ているんですか?」


 ふいに真横で声がした。思わず振り向いてしまう。当たり前だが横にいるのは全裸の西島さん。

 しまったと思ってももう遅い。手を伸ばせば余裕で届く距離に小さいけれど確かなおっぱいが。

 あと西島さんも俺の横、浴槽縁に座っている。つまり下半身も丸見えという事で……


 平静に、いつも通りに。そう三回頭の中で繰り返してから返答する。


「警察の拳銃より射程が長く威力が大きい銃について調べていた。猟銃、それもライフル銃あたりなら威力が大きいし入手出来そうな気がする」


「確かに今の拳銃は近くまで魔物が来ないと当たらないです。それに威力が大きい銃を今のうちに手に入れておけば安心出来ます。今の拳銃では威力不足にならないかと考えると。

 それでどんな銃なんですか?」


 更に間を詰めてきた。普通にまっすぐ前を見ても西島さんの足が見える状態だ。ちょっとずらせば見てはいけない場所も。


 何だこれは、誘っているのか! なんて思ってはいけない。そんなのが許されるのはエロ漫画の世界だけだ。

 俺と西島さんは契約で一緒に行動しているだけ。そう、あくまで契約という名目なのだ。だから気をしっかり持たないと。

 

「こういう長い奴だ。ただ種類は結構あるけれど、実際に在庫があるかとか、弾がどれくらい手に入るかなんて問題がある。だから実際に店に行って調べてみないとわからない」


 スマホに探そうとしている銃を表示させて西島さんに渡す。渡すときに見えた何かは気にしてはいけない。


「大きそうですね。私だと持ち歩いたり構えたりするのが少し大変かもしれません」


 確かに大きいとは思う。自動式ので長さ一メートル、重さ三・五キログラム。さっと構えたり持って歩いたりなんてのは難しいだろう。

 しかし解決のめどは立っている。


「長い方が遠い目標を狙いやすい。それに西島さんもレベル一一か一六で収納魔法を覚えるんじゃないかと思う。そうすれば必要な時に手元に出せるから持ち運びを気にしなくていい」


「あの魔法、便利でいいですよね。早く私も欲しいです」


「順調にいけば明日にはレベル一一を狙えるんじゃないか」


 今がレベル九だ。そして岩鬼市街はまだ行っていない。だからそれなりに魔物がいるだろうし、倒して経験値を稼げる筈だ。


 もちろん誰か人間がいて、既に魔物を討伐しているという可能性はある。しかし福縞県の人口は一八五万人。つまり順当にいけば一人か二人しかいない筈。だから会う可能性は極めて低い。


「なら私も少し調べてみます。猟銃で検索すればいいですか?」


「ああ。猟銃にも空気銃、散弾銃、ライフルとある。ライフルがいいだろうと俺は思うけれど、西島さんもその辺は確認してくれると助かる」


「わかりました」


 個人的にはライフル、それも大口径のボルトアクションと308ウィンチェスター弾を使うオートという二つを選択するのがいいと思う。今スマホを見て得た知識での判断だけれども。


 しかしこの判断が正しいかはわからない。俺は今調べるまで猟銃という分野について全く知識は無かったから。

 それに店で扱っているか、弾がどれくらいあるか等、入手性も重要だ。注文しても取り寄せてくれるなんて事はないのだから。


「お店は近くにあるんですか」


「ちょうど岩鬼市内にある。だから明日、行ってみようと思う」


 そこまで言って、そしてスクーターの事を思い出す。ちょうどいいからついでに言っておこう。


「あとスクーターも別のを見てみようと思う。今乗っているのの上位機種で、スタンドを立てなくても自立出来るものがある。これなら魔物が出た時、すぐに降りる事が出来るから」


「それじゃ明日は銃のお店とバイクのお店に行くんですか」 


「ああ。順路的にまずバイク屋へ行って、それから銃の店に行こうとおもう。どっちも岩鬼市内だけれどバイク屋の方がここから見て手前にあるから」


「わかりました」


 会話が途切れると急に意識してしまう。

 あと、そろそろいい加減のぼせてきた。現在は半身浴状態で浴槽に腰掛けて足だけお湯につけている。それでも結構暑い。


「そろそろ出ようか。暑くなってきた」


「それじゃ最後に一度、お湯に肩まで浸かって身体を伸ばしてから出ます」

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