第七章 北へと移動開始

第二九話 北上開始前に

 入ったコンビニにはそこそこ広いイートインスペースがあった。お高いアイスとドリンクを持ってテーブル席へ。


「アイスはいいですよね。冷凍しているから賞味期限を考えないで」


「だよな。生鮮品は今日のお昼が限度だろうけれど」


 アイスを適当に交換しながら食べる。もう間接キスは気にしない事にした。西島さんは全く気にするようすがないし。俺の方が本当に意識していないのかは置いておいて。


「アイスを食べたら荷物を積み替えましょう。田谷さんのアイテムボックスに入れておいた方が出しやすいですから」


「だな」


 槍だけは既にアイテムボックスに移してある。運転していると後ろでぶらぶらしているのが気になってしまうから。


「ならついでに後の荷台やボックスも取り払ってしまおうか。そうすれば西島さんの場所が広くなるし後ろから降りるのも楽だろうから」


「うーん、確かにそうすれば後ろから乗ることも出来るようになります。ただ何も無いと何となく不安なので、荷台は残して貰っていいですか」


 確かに後ろに乗っているときに掴む場所はあった方が楽だろう。ただ、今使っている荷台は今ひとつそういった用途に向いていない。

 確かメーカー純正の汎用荷台がホームセンターにあったなと思い出す。あそこなら冷房が効いた状態で作業が出来るから楽だ。

 

「わかった。昨日行ったホームセンターに良さそうな荷台があったからあれと換えよう。あそこまでの道はそこそこ魔物がいたし、そこまで遠回りでも無いから」


「そうですね。あと荷物として持てるなら雨具が欲しいです。確かホームセンターと同じ敷地にアウトドアショップがあったから、そこでいいのが入ると思います」


「気づかなかったな、アウトドアショップがあるのに」


「広い駐車場を挟んで反対側ですから。今朝、何となく検索してはじめて気づきました」


 なるほど。確かに雨具は欲しい。雨でも移動したい時はあるだろうから。あとアウトドアショップなら武器になりそうなサバイバルナイフなんてのもあるかもしれない。


「わかった。それじゃ昨日と同じホームセンターに行って、スクーターの荷台を換えた後、アウトドアショップへ。大体お昼までにはなんとかなるだろう」


 今日の目標である岩鬼市までの距離を確認する。九〇キロメートルあるかないか。順調に走れば三時間かからない。

 勿論途中で魔物は出るだろう。しかに間に合いそうに無ければスルーするという手もある。なら昼に出れば充分明るいうちに到着する筈だ。

 そこまで考えて、そして気づいた。

 

「そういえば今日の宿、何処かいい場所見つかった?」


「ええ。此処でいいでしょうか」


 西島さんがスマホを操作して、そして俺に見せる。岩鬼市の南側、海辺にあるホテルだ。

 場所は岩鬼市の南で、周囲は公園や観光地、海。これなら魔物が出る可能性は低いだろう。風呂も三階にあるから建物内で魔物が発生しない限り比較的安全だ。


「いいんじゃないか。人口が少ないから安全だろうし」


「海辺で広くて見晴らしがいいお風呂があって、部屋にも海が見えるお風呂があるホテルが良かったんです。ただ昨日泊まったように全部が揃っているホテルは岩鬼にはなくて。

 このホテルなら部屋にお風呂はないかわりに、半露天風呂付大浴場が部屋からすぐです。あと和室に泊まるなんてのはものすごく久しぶりな気がするので、楽しみです」


 どうやら西島さんの宿選択、風呂がかなり重要な要素を占めているようだ。今夜も悩まされそうだけれど仕方ない。間違ってもエロ方面に行かないよう、気にしないという対応で。

 そのうち俺も慣れるだろう、多分きっと。


「あとはコンビニに寄ったら美味しそうで日持ちがする食べ物を探してストックしませんか。その店でしか売っていないとか地方限定とかあるかもしれませんし」


 確かに今後、その辺の食物が重要になるだろう。田舎に行くとコンビニだって少なくなる。ある程度のストックはあった方がいい。

 

「なら少しここからも持って行くか」


「ええ」


 俺達は立ち上がり、コンビニの棚方向へ。

 カップラーメンだけでも生麺、実在店とのコラボ等、魅力的なものが見えている。更にはレトルト系もカレー系からお惣菜系まで色々と……


 ◇◇◇


 昨日とは少しだけ違う道を通り、魔物をレベル一レベル二あわせて八体倒したところでホームセンターへと到着。まずは昨日と同じルートでバイク用品のところへ。


 記憶通りの場所に荷台があった。なので早速作業を開始。


「これくらい冷房が効いていると楽だよな。外では暑くてこういった細かい作業をしたくない」


「そうですね。バイクで走っている時は涼しいですけれど止まると暑いです」


 作業は工具が揃っていればそう難しくない。あっさりと作業は完了。今まで使っていたボックスの中身はアイテムボックス魔法で収納する。


「アイテムボックス、残りはどれくらい入れられますか?」


 スマホで情報を確認。


「あと八キロだ。ただ二リットルのペットボトルを四つ入れているから、それを減らせばもう少し空くと思う」


「それくらいあれば充分だと思います。あとは雨具と、その他気づいた物があったら程度ですから」

 

「それじゃアウトドアショップへ行くか。簡単に入れるといいんだけれどな」


「店の入口は開いていないと思います。けれど従業員入口くらいは開いていると楽ですよね」


 そんな事を話しながらその場でスクーターに乗って店の外へ。

 駐車場を横切った先に確かにアウトドアショップがあった。そして入口の自動扉、よく見ると少しだけ開いている。


「掃除か何かの作業でしょうか」


「わからないけれど入れればラッキーだよな」


 スクーターを店の真ん前に止めて入口へ。自動扉に手をかけて引っ張ってみる。少し重いけれど動いた。


「素直に入れて良かった。エアコンは効いていないけれど」


 そう、この建物はエアコンが動いていなかった。ただ気温、むっとする程では無い。直射日光にさらされないだけ外よりはましだろう。海沿いだからかこの辺は家の辺りより気温的には過ごしやすいし。

 それでも三〇度はあると思う。しかも建物内だから風がない。


「暑いから雨具だけ貰ってさっさと出よう」


 このアウトドアショップを経営しているブランドのオリジナルで一番メジャーなゴアテックス使用の雨具をキープ。


「ええ。でもよく考えたらガスコンロとかお湯を湧かす鍋があると便利ですよね。そうすればカップラーメンを食べられますから」


 確かにそうだな、そう思ってしまった。そしてコンロやアウトドア用の鍋を物色しに行くと、他の商品もつい目に入ってしまうのだ。


「こんなに乾燥食品の種類があったとは知りませんでした。これなら生鮮が無くなっても割と問題無さそうですよね」


 ただし武器として魅力的なものは残念ながらなかった。安全対策なのか需要がないのかはわからないけれど。今のところホームセンターから持ってきた刃渡り二一〇ミリの出刃包丁が一番強そうだ。


 結局アイテムボックス容量が残り二キログラムになるまであれこれ詰め込んで、店を出るときには一時近くになっていた。しかもまだ昼食を食べていない。


「人家が少なくなるけれど日太刀に入るまで一気に北上しよう。コンビニがあったら弁当だけ持ってきて、入れそうなファミレスやホテルまで移動」


「そうですね。少し時間を使いすぎました」


 幸い田舎なので停車している車は少ない。なので時速五〇キロくらいは出して北上を開始する。


※ アウトドア用品店から持ってきたグッズはこんな感じだと思って下さい。

  バイク旅というより山屋装備になってしまったのは① 店の展示のせいと、②アイテムボックス容量があまり余裕がなかったから、という設定となっています。本当は書き手のせい(登山&バイクをやっていた)ですけれど。

 ○ 雨具 

   モンベルのストームクルーザー上下 

    男性用Mサイズカーキ色(田谷)

    女性用Sサイズ水色(西島)

 ○ バーナーヘッド

   プリムス2243バーナー 

 ○ クッカー(鍋・食器)

   よくある容量1L位の角形クッカー

   (バーナーヘッドが中にしまえる程度の大きさのもの)

   箸は割り箸をコンビニからそこそこ持ってきているので……


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