第一九話 武器を調達しながら
警察署は先程魔物を倒しまくった駅から割と近い。それで魔物を一掃した後だからか、牛丼屋から魔物に遭わないままあっさりと到着。
ここの警察署は県庁所在地を受け持つだけあって流石に広い。だから拳銃や弾が入っている金庫を見つけるのに少しだけ時間がかかった。
そしてここで西島さんと相談。
「やっぱりこの小さい方の拳銃、弾が少ないです。今後の事を考えたら私もこっちの弾を使う方がいい気がします」
確かに西島さんが使っている自動拳銃で使える弾はここでも数が少ない。ここにあるものを全部集めても、今日のペースで使うと一週間持たなそうだ。
西島さんはレベル四になっている。だから発作も出にくくなっているしそれなりの腕力だってついているだろう。だから小型の銃を使い続ける必要はないかもしれない。
問題は自動拳銃なら八発装填出来るのに、リボルバーの方は五発しか装填できない点。でもこれについては予備の銃を持っていれば問題ないだろう。
「そうだな。こっちの弾なら日本中どこの警察署にもある筈だし」
「あとこの弾を使う銃、何種類かありますけれど、どれがいいんですか?」
確かにリボルバー式拳銃は何種類かある。どれも同じ弾を使うのだけれども。多いのは銃身が短いもの。しかし……
「長い方が命中率がいいって何かで読んだ気がする。ただ短い方が軽いし銃を使用する事はあまりないから、最近は短い方を配っているらしい」
「なら長い方をメインで、予備に短い方を持って行けばいいですね」
その結果、西島さんは俺と同じやや長めの拳銃と、短くて軽めの拳銃二丁を選択。
そしてここでも弾はひととおり全部貰う事にした。西島さんが今までに使っていた小さめの拳銃用のも含めてだ。
これで弾の数は合計で九百発を超えた。俺としてはかなり多く感じる。しかし……
「一日に五〇発撃つとしたら一八日分です。その頃には拳銃でもダメージを与えられない相手が出ているかもしれませんけれど」
言われてみるともっともだ。何せ今日、既に三十発近く撃っている。
「こっちの弾は調達は難しくない筈だ。他の県警でも警察署に行けばそこそこあると思う」
「なら大丈夫そうですね。
それなら後は予定通り加津田駅前を通って、近くの日太刀中の警察署で弾を貰って、その先の大きいホームセンターへ行って、武器として使えそうなものを探しましょう」
牛丼屋で地図を見ながら考えた今日のルートだ。目的地のホームセンターは日本有数の広さを誇ることで有名。だから普通に市販しているものは大抵手に入る筈だ。
◇◇◇
途中何度もゴブリンを倒した。そして
「思った以上に魔物、多いですね」
「レベル一しか出ないから仕方ないのかもな」
水都警察署を出てからここまで、更にゴブリンを十体倒した。おかげで僕も西島さんもあと一体ゴブリンを倒せばレベル五だ。
なお現在はヘルメットをかぶって走っている。そこそこの速度で走っているとこの方が会話しやすいから。バイク屋でいただいたインカム、案外有用だ。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
またスマートホンから警報音が鳴った。もういい加減慣れたなと思いつつ俺はスクーターを停める。ハンドルをしっかり握って両足をついて西島さんに連絡。
「いいよ」
「先に降ります」
西島さんがステップに足をかけ、後の荷台の上をジャンプするような感じで後ろへ飛び降りた。
俺がハンドルを支えつつ降りて、次に西島さんが降りてなんてやるよりこの方が早い。レベル四になった西島さんならこんな曲芸的な降り方も余裕だ。
乗るときは今まで同様、西島さんがまず乗って次に俺という形だけれど。
俺もスクーターから降りてセンタースタンドを立てる。ヘルメットを外してミラーにひっかけ、ホルスターから拳銃を取り出す。
「それじゃ今度は俺か」
「はい。私はさっきレベル五になりましたから」
「わかった」
レベルが上がったおかげで体力の他、視力や聴力なんてものまでレベルアップしている。だから耳を澄ませば風音に混じって魔物が立てる音も聞こえる訳だ。
左斜め前だな。俺は派手なパチンコ屋の壁の端に向けて銃を構える。四数える位後、見慣れた緑色の魔物が姿を現した。こっちへ向かってくるがすぐには撃たない。あと四メートル、三、二、一、よし!
引き金を引く。ゴブリンはふらっとしつつも更にこちらへ向かってきた。だが二歩歩いたところで前のめりに倒れる。
概ね弾が当たっても二歩くらいは前進してくる。もう慣れたから今更驚いたり焦ったりはしない。
「お疲れ様でした」
「いや、もう慣れた」
スクーターの荷物ボックスから拳銃弾が入ったケースを取り出し、弾を補充。ボックスを閉めてスマホを確認。
『ゴブリンを倒しました。経験値三を獲得。田谷誠司はレベルアップしました。現在のレベルは五です』
これで今日のレベルアップのノルマはクリアだ。
「レベルアップは順調ですね」
「ああ。ただこの田舎でもこれだけ魔物が出るんだから、東京とかは凄そうだな」
県庁所在地としては小さい方の水都市やその隣の日太刀中でもこんな状況なのだ。東京二十三区辺りはかなり酷い状態だろう。
「そうですね。魔物がとんでもなく多そうです。相当強くなれるかもしれませんけれど、逆にやられてしまう可能性も高いんでしょう」
今の水都市街地で魔物を倒した時の事を思い出す。
「水都市街地のペースでずっと魔物と戦うのは流石に厳しいと思う。魔物が多ければ今日中にも魔物同士の戦いでレベル二とか三の魔物が生まれている可能性もあるし」
「そうですね。同じレベルの魔物同士はリーダーに統率されていない限りはお互い戦い合うらしいです。だからレベルが高い魔物が出来ていてもおかしくないです」
そんな環境なら人も魔物もあっという間にレベルアップするだろう。そう思うと正直なところ不安がない訳では無い。此処で数少ない魔物相手にのんびりやっていて大丈夫だろうかと。
ただ東京で高レベルの魔物が生まれても新潟とか山形とかにいる人間まで危険になる事はないだろう。そう自分に言い聞かす。
だから魔物がそれほど多くない場所を転々としつつ無理せず必要な程度にレベル上げをする。それが俺の方針だ。
ホームセンターのすぐ前まで到着。さて、何処から入れるだろうか。歩いて見て回るにはこのホームセンター、巨大過ぎる。だからスクーターに乗ったままホームセンターのある建物の周囲をぐるりと回る。
建物と建物の間にトラックから荷物を下ろす搬送口っぽい場所があった。トラックが三台停まって台車やパレット等があり、荷下ろしをしていたような感じだ。人はだれもいないけれど。
「ここから入れるかな」
スクーターに乗ったまま中まで入ってみる。開いている入口があった。
「それじゃ行こうか」
「はい」
俺達はスクーターから降りて、従業員通路を通って中へ。入って幾つ目か、中途半端に開いた扉をのぞき込むと店内だった。
「ここから入ろう」
無事店内へ入る事に成功。照明もそこそこ店頭しているので品物を見るのに問題は無い。
ただこの巨大ホームセンターはここからが大変な気がする。なぜなら……
「何というか、予想以上に広いです、ここ」
西島さんの言うとおりだ。
「東狂ドーム五個分以上ってWebに書いてあった。焦らないでのんびり見ていこう」
俺達はとりあえず武器になりそうなものを探しはじめた。包丁、鉈、農機具等、特にジャンルを絞らないまま。
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