第四話 武器と防具の確保

 走りながら思った。先程はスマホを確認するのが大変だったなと。

 スマホホルダーがあれば走りながらでも画面を確認出来るだろう。ハンドルから手を放してスマホを取り出すなんて事をしなくて済む。


 警察署まで大通りを走っていけば途中にバイク屋くらいあるだろう。そう思って走る。

 しかし残念ながらみつからないまま、最寄りの警察署前へ到着。


 中へ入ろうと左折して駐車場入口へ。最初はすぐ中へ入るつもりだった。しかしついでという事でバイクに乗ったまま裏手へと回ってみる。


 警察署の裏には署で使う車両やバイクが停まっていた。

 車は普通の車からパトカー、更には窓に網を装備できる頑丈そうなワンボックス、バスまである。あの網装備可能なワンボックスはなかなか良さそうだ。多少の魔物に出逢っても安全そうだし。


 しかし今は道路に放置車両が多数停まっている。車では走りにくい。それに俺は自動車免許をもっていない。スクーターくらいなら見よう見まねで動かせるが、自動車はあまり自信がない。


 だから目当ては自動車では無く二輪車。そして二輪車もそこそこ種類が揃っていた。俺が乗ってきたのと同じくらいのスクーターからもう少し大きなスクーター、ビジネスバイク風のもの、何に使うかわからないけれど白くない普通のバイク、そして大きな白バイまである。


 良さそうだと思ったのは前二輪後ろ一輪の大型スクーターだ。この中では一番新しそうに見えるし大きさがちょうどいい。荷物ボックスもついていて使い勝手が良さそうだ。

 操作系を確認。今乗っているこのスクーターとほぼ同じ。運転で困る事はないだろう。


 拳銃を調達するついでにこのスクーターの鍵も探しておこう。念の為にナンバーと車名部分をスマホで写真に撮り、それからスクーターで正面へと戻る。

 スクーターを正面玄関真ん前に停めて警察署内へ。まずは目の前にある受付から各部屋を調べていく。


 警察にはお世話になった事はない。だから内部の事はまるでわからない。ただ鍵だとか拳銃なんて重要なものはそこそこ偉い人が管理できる場所にあるだろう。


 なら偉い奴の近くでかつ署長室とかではない場所。そう勝手に推理をして調べていく。


 何となく見て回った4部屋目の奥にそれっぽい小部屋があった。見るとロッカーサイズの大きい金庫が有り、鍵が差し込まれた状態で扉が半分開いている。


 見ると中に、木製の本棚のような台に並べられた拳銃と、手提げ金庫というにはやや大きい鍵のかかる金属ケース5箱が入っていた。

 扉が開いているのは出し入れ途中だったからだろうか。そう思いつつ出して調べる。


 拳銃は小さい五発装填のリボルバー、少し大きいが弾は同じでやはり五発装填のリボルバー、そしてリボルバーよりやや小さいオートの拳銃があった。


 適当に操作して弾を補充する部分を開けて見てみる。弾は入っていない。となるとこの金属ケースの中に弾が入っているのだろう。


 関係ありそうな鍵束が金庫の前に落ちていた。鍵には係名が書かれた札がついている。そして金属ケースにも係名記載のテプラシールが貼ってあった。


 おかげであっさり鍵で金属ケースが開く。やはり中は弾だった。金属ケース5個とも弾だ。係別に管理しているらしい。

 弾は見たところ2種類。大きい大量にあるものと、小さい少なめのもの。


 拳銃に弾を入れてみる。どうやら大きい弾はリボルバー各種に使えるもので、小さい弾はオート用の模様。


 さて、銃はどれを持って行こうか。考えた結果、大きめの方のリボルバーにした。弾が大きい方が安心出来る気がするし、銃身が長い方が当たりやすいと前に本で読んだ記憶があるからだ。


 壊れた時に備え、同じ拳銃を二丁。あとオートの拳銃も微妙に捨てがたかったので二丁持って行くことにした。


 まずは持っていく拳銃に弾を入れる。さっき弾の有無を調べるために開けたので入れるのは簡単だ。リボルバーは5発、オートは8発入る模様。


 装填した弾だけではない。勿論残った弾も全部持っていくつもりだ。弾は消耗品、あればあるだけ安心出来る。ただこの金属ケースごとでは大きすぎて運べない。


 幸い金庫に弾を入れるのに入るちょうどいいプラスチックケースが入っていた。ぎっしり詰めると八十発くらい入る。


 金庫にはベルト付きのホルスターも入っていた。リボルバー用が2種類、オート用が1種類。ちょうどいい。俺はリボルバー用のベルトを調整して腰につける。

 

 残りの拳銃はホルスターに入れザックの上蓋ポケット部分へ。弾は小さい箱に種類別に入れた上でザックの中へ入れる。


 またこの小部屋には防弾チョッキや盾、警棒なんてのもあった。これもいただくことにしよう。


 警棒はホルスターに入っている、このホルスターはさっきのベルトにつけられるようだ。なので装着。ちょい腰回りが重くなったが仕方ない。


 防弾チョッキは少々重いし暑苦しい。けれど念の為に着ておこう。盾はスクーターに積むのは無理そうなので諦める。足下に置いて運べないことはないだろうけれどかなり邪魔になりそうだし。


 武器は手に入った。次はスクーターの鍵だ。これはもう少し便利なところにあるだろう。そう思って事務室内、鍵がかかりそうな場所を調べる。


 自動車やバイクの予備鍵を入れている鍵付きボックスを発見した。なお鍵はかかっていなかった。何というか不用心だ。おかげで助かるけれど。

 鍵にナンバーを記載した札がついていたので、あっさり例の新型スクーターの鍵を確保。


 さて、装備は揃った。次はどうしようか。

 そう思ったところで思いつく。何なら自衛隊基地を目指せばもっと武器はあるのではないだろうかと。


 その時だった。ピーピーピー。スマホが鳴った。電話やアラームとは違う音だ。何だろうと画面を見てみる。


『軍隊及びそれに準じる組織の装備品は複製していません。試験的に複製を行った世界でミサイルを使い、魔物の他に自分以外の人間を含め皆殺しにしてレベルアップしようと企てた者が出た為です。

 このような方法では世界の歪みが加速してしまいます。ですので軍隊及びそれに準じる組織の使用する装備品は使用不可としました』


 どうやら俺が思った事に対する注意事項らしい。自衛隊基地での装備調達は無理、そういうメッセージだ。


 しかし武器による皆殺し作戦か。なるほどなと思う。

 自分以外の人間も倒せば経験値になる。だから自分以外を皆殺しにすればその分経験値は手に入るし、自分の潜在的な敵も減る。

 考え方としては正しいし合理的だ。自分がやるかどうかは別として。


 ただ、そうするとだ。この世界でも同じような事を考える奴が出る可能性がある。

 軍隊等の大量破壊兵器は使えない。それでも他人を殺せば自分の助かる確率が上がるという事を念頭に、他人を見たら殺せを実践する奴がいてもおかしくない。


 ここまでそういう輩に出逢わなかったのは単に確率の問題。何せこの県に残っているのは俺以外一人か二人。県の広さを考えれば出逢わない可能性が高い。


 この先俺はどうするか。そういった人間と出逢わないよう、人口が多い場所を避けるべきだろうか。

 ただしある程度の数は魔物を倒し続ける必要がある。この世界で生き抜くためにはレベルアップしていく必要があるから。


 まずはスクーターの鍵がこれでいいか確かめておこう。入手した拳銃の実射テストをした方がいい。


 外へ出る。結構暑い。今朝は比較的涼しかったので油断していたが今は夏休み直前。だから仕方ない。

 これでは防弾チョッキなど着ていられない。着るのはスクーターで動く寸前にしよう。


 まずはスクーターのところへ。鍵をさして回す。あっさりエンジンがかかった。整備状態は悪くない。流石警察車両だ。


 さて、次は拳銃の実射テスト。車庫の端に空の一斗缶があったので的代わりとして持ってきて、駐車場の空いている場所に置く。十メートルくらい離れて、まずはリボルバーの方で狙う。


 ドン! 音はそれなり。しかし手に伝わるショックは覚悟していたよりは小さい。

 さて、当たっただろうか。少し近寄ってみる。残念ながら穴はあいていないし凹んでもいない。弾は一斗缶に当たっていないようだ。


 もう少し近づかないと駄目か。更に二メートル位近づいて射撃。今度は当たった。缶に穴が空いている。


 銃をリボルバーから小さめのオートに持ち替える。先程当たったのと同じ八メートルくらいで挑戦。

 あっさり当たった。この銃の方が狙いやすいようだ。小さい弾だが缶に穴も空いているし、威力はそこそこある模様。

 

 ザックを下ろして先程詰めた弾を取り出し、今撃った分を補充する。この先何があるかわからない。だから準備は十全にしておいた方がいい。


※ 参考

  警察署から持って行く装備はこんな感じです。

   ○ スクーター トリシティ125

   ○ 拳銃 ニューナンブM60 3インチ仕様 2丁

         SIG P230(.32ACP仕様) 2丁

   ○ 拳銃弾 大量(.38Spl、及び.32ACP)

   ○ 耐刃防護衣(私服警察官用)

(誠司君は防弾チョッキと思っていますが、拳銃弾を防ぐ物では無く、ナイフや包丁等の刃物を防ぐ為のものです)

   ○ 警棒(制服警察官用)

   ○ 帯革(制服警察官用。本文中でベルトと表記しているのは主人公の田谷誠司君が帯革という言葉を知らないからです)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る