ヒナアフター番外編② あなたは特別(ヒナ視点)
「だからさ、ホワイトデーにマカロン貰ったらどういう意味だと思う?」
「なに? ヒナっち、のろけ?」
「ヒナちゃんだってホワイトデーのお返しのお菓子ごとの意味くらい分かってるでしょ?」
違うぅ~、そうじゃなくて……ホワイトデーの夜、私はラインでみおとしずくの2人をグループトークに誘って相談していた。
いや、ひよりとまるを仲間外れにしているわけじゃないけどあの2人は寝るのが早いし
私とみおとしずくの三人は女子水泳部の部長だった北野ゆかり先輩が卒業して今は私たちが
ちなみにひよりは「剣神」だって。(るろうにか!) また「私だって
それにしたって、不意打ちで貰ったマカロンの話は恋愛相談なんかじゃないはず。私が恋愛相談なんてするはずがないし。
「で、マカロンだよね? ヒナちゃんだって調べたんだったら分かってるでしょ? マカロンは『あなたは特別な存在』って意味が込められてるから」
「でも、ヒナっち。ヒナっちって今年のバレンタインデーに本命チョコを一つも渡してないよね? なのにホワイトデーに本命マカロン返してくるって、その男はちょっとヤバいんじゃね?」
「そうよね。私たちみんな本命がいないって明言して義理チョコを配って回ったのに告白じみたマカロンを送ってくるなんてちょっとあぶないストーカー気質の勘違い男かもしれないわね。私たちじゃなくて『ヒナちゃんを守る会』のひよりちゃんたちに相談した方がいいんじゃない」
2人ともヒドい。村上はそんなストーカー気質の勘違い男なんかじゃないからね!
「そんなのじゃないから。告白とかじゃないけど相手はそんなストーカーとか勘違い男じゃないって。凄く真面目でいいやつだから」
「おっ!? 意外と脈あり? ってことはヒナっちが何か勘違いさせるようなことをしちゃったんじゃないの?」
「そうね、ヒナちゃんがその人にバレンタインデーで義理チョコを渡すときに勘違いさせるような特別な行動をとったんじゃないか思い出してみてよ」
2人から言われてバレンタインデーに水泳部のみんなにチョコを渡した時のことを思い出す。
私はしずくに習って大量のチョコブラウニーを義理チョコとして手作りした。簡単にできるし個別に袋に入れられるから1人ずつ配って回った。
ん、あの時村上に同じものを渡したっけ?
「あ、あ~~~~~~っ!!」
「ど、どうしたヒナっち?」
「いきなり叫んで頭を抱えてるってことはヒナちゃんには心当たりあるってこと?」
や、ヤバい。村上に渡したやつだけ別物だ……水泳部の他の男子と比べたら一目瞭然で自分だけ特別扱いされてるって勘違いされても仕方ないやつ。
「ガ、ガトーショコラ……」
「ん? ガトーショコラって多々良っちにお供えするように作ったやつ?」
「あ~、ヒナちゃんそう言えばガトーショコラを失敗して2つ作ってたわよね」
そうなのだ、直径15㎝くらいのガトーショコラ。一番最初に作ったやつがちょっと表面がひび割れちゃって見栄えが悪かったからもう1個作って綺麗にできたほうを恭にお供えしたのだ。
「最初に作ったのは『試作零号機』なんだよ。今作った上手なやつは『初号機』!
「ヒナちゃん、『失敗したから恭にはちゃんとしたやつをお供えしたい』ってもう1個作ってたよね。最初のやつは表面ひび割れちゃったからどうすればいいって私に聞いて来たから、『微粒子グラニュー糖多めにかけて目立たなくしたら』ってアドバイスしたけど、ひょっとしてあれを誰かに渡したの?」
「あ~、結構大きいし多々良っちへの
そ、それは……失敗作とはいえ味は一緒だし、日頃お世話になってる村上に美味しいチョコを食べさせようって思って持っていっちゃったんだよ。
「小学生の頃からそうだけど、ヒナちゃんってしっかりしてるようで結構おっちょこちょいだよね」
「あ~、ヒナっちって小学生の頃めちゃくちゃ多々良っちにフォローされてたもんね」
いや、私はしっかりしてる。しっかりしてるはず。小学校の頃のおっちょこちょいとかやらかしは私じゃなくて陽菜だから! 陽菜のせいで私のクールなイメージがぁ……
「ヒナちゃん……なんとなく自分のイメージがとか思ってるのは読めてるからね。言っとくけどヒナちゃんにクールなイメージとかないから」
「どっちかって言うと抜けててそこが可愛いって感じだよね、ヒナっちは」
ひ、酷い。こう見えても私は
「ヒナちゃん、今心の中で『まだ処女の私たち2人に言われたくない』って思ったかもしれないけど……」
「ぶっちゃけ恋愛抜きでヤルだけならあーしたちだってすぐにでも出来んだからね。気に入った男がいないからする気がないってだけだし。非処女ってマウントできるような話じゃないし」
そ、そうか……貞操逆転世界おそるべし。私がそういう事でマウントするつもりなんかはなかったけど、この世界の童貞が守る価値がないものって思うのと同じ感覚で処女を守る価値なしって思ってた私の方が他の人と違うんだよなぁ。
好きな人としか結ばれなくていいって価値観は恭を失った今なら凄くよく分かる。
「それで……やらかしちゃったヒナちゃんはどうするの? ガトーショコラ渡してもいいって思ったってことはヒナちゃんだって憎からず思ってるんでしょ?」
「マカロン渡された上に
確かにお父さんにプレゼントしてもいいはずだったし、失敗作としてみんなで食べても良かったガトーショコラを村上にあげようって思ったのは、私が村上のことを他の男と違うって思ってるってことかもしれない。
ゆうかちゃんとも話して思ったけど私はもう少し自分の気持ちに向き合う必要がありそう。
それよりも緊急は明後日の3月16日の予定だ。
「あのね、みおが言う通りマカロンと一緒にお出かけに誘われたんだけど、それも微妙で……村上以外の男子水泳部のみんなも一緒にプールもある健康ランドに行こうという話なの。どういうつもりだと思う?」
「ヒナちゃん……語るに落ちるというかもう
「村上っちってエッチだからヒナっちの水着姿見たいだけなんじゃ?」
うう、自爆した……村上ゴメン。村上が恭のことを好きだったっていうのは話せないし……
「た、たぶん本当にお礼の気持ちだと思う。男子水泳部で冬の間泳ぎの感覚忘れないように、たまに健康ランドに行くんだって。ほら、あそこには浅いから飛び込みできないけど温水プールがあるから」(個別イベント①参照)
「あ~、ヒナっちいつも
「みおちゃんはそんなこと言わないの。じゃあ相談はこれで終わりってことでいいの?」
話が終わりそうになってる……いや、もう一個あるんだ。恥ずかしいけど勇気を出してお願いしよう。
「それでね、2人には明日の放課後、明後日着るための水着を選ぶのを手伝って欲しいの」
なんで男に裸を見られるのだって平気だったはずの私が真っ赤になりながら水着を買う相談してるのか。
とにかく3人で水着を買いに行くことになった。
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ちょっとした小話
まる「みんなで買い物に行くならまるたちを仲間外れにしたらダメなんだよ」
ひより「そうだぞ。水臭いじゃないかヒナ。で、今日は何を買いに行くんだ?」
恋愛相談(?)からの流れで3人だけで水着を買いに行こうとしていた私とみおとしずくのことを、ひよりとまるが呼び止める。
みお「あ~、うん。2人を仲間外れにしてるつもりはなかったけど……この2人と一緒だとあーしもちょっと劣等感を感じるから来てもらうと嬉しいかも」
そう言いながらみおが2人のことを見つめる。(主に胸部)
しずく「アハハ……何かごめんね」
ヒナ「ゴメン、ひより。悪気は本当に無いから……売り場に着いたら謝るからゴメンね」
騙し打ちのように水着売り場に連れていかれたひよりがガチへこみするまであと30分。
ひより「わ、私じゃ相談相手になれなくて悪かったなぁ~~~泣」
元の世界でも ヒナ>しずく>(巨大な壁)>みお>(超えられない壁)>まる>(存在の壁)>ひより となっています。
陽菜ソムリエの恭介くんの判定では 陽菜≧ヒナ だそうです。
正確には「初号機」は「試験初号機」
チョコづくりのエピソードは「バレンタインSS① チョコレートづくり」を参照。
次回更新は3/31です。
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