個別エピソードこぼれ話(しずく視点)
「だから、みおちゃんがしたエッチがダメなんじゃなくて描写がストレートすぎたんだよ」
「え~、あーしに任せるって陽菜っちがいうから赤裸々に実録風に書いたんだけど……一応陽菜ちゃんもアップする前に自分の作品としてちゃんと
「うう、そうだけど……まさかカクヨムでの初めての警告がみおちゃんに任せたせいで来るなんて……」
月曜日に登校してきて二限目と三限目の終わりの休憩時間。陽菜ちゃんとみおちゃんがひそひそ声で話し合っている。
わたし達と恭介さんのハーレムにも関わる会話なので2人とも議論はヒートアップしつつもまわりに聞かれないように小声で話している。
私がこうやって内容をほぼ完璧に把握できているのは幼少の頃から琴乃おばあ様に仕込まれた淑女教育のおかげだ。離れた場所の会話を読みとれるように読唇術まで習得させられている。
「まったく、あの2人は……こんなことなら本当に土曜日の部活で恭介のやつを足腰が立たないくらい扱いておくんだった」
私の隣の席で見るともなしに陽菜ちゃんとみおちゃんの2人を眺めていたひよりちゃんもちょっと呆れ顔。ちなみにひよりちゃんは私のように読唇術を使えるというわけじゃなくて五感……とくに視力と聴力が優れているんのでこの距離でも聞き取れるのだそうだ。
流石に聴力は生まれつきの才能だと思うけど、本人は「修行のたまものだ」と言う。
「う~ん、なんだかストッパーが不在なせいで陽菜の小説にまで迷惑を掛けちゃったみたいで申し訳ない」
斜め後ろの席で恭介さんが反省しているけど、恭介さんとみおちゃんが『恭介くんと1日2人っきりで過ごせる権利』を使って楽しんだ日の出来事を小説としてアレンジして発表した結果、カクヨムの運営から「運営からのお知らせ 違反行為が確認できました。メールを確認の上、対応してください」というお叱りをいただくことになったのだ。
性描写に関する記述について「カクヨムからの警告・作品を修正してください」というメールが届いていたのでそれに関して陽菜ちゃんがみおちゃんに注意していたというわけだ。
そもそも、私たちの関係はちょっと特殊だ。
普通ならその2人がくっついて、フラれてしまった私やひよりちゃんは負けヒロインということになるんだろうけど、紆余曲折があって今は陽菜ちゃんと一緒にみんなで恭介さんに愛して貰っている。
「まるの時はお出かけした内容を聞かれたけど、まるの視点からの小説にはならなかったんだよ」
それはまるちゃんの思考が陽菜ちゃんにはトレースしきれなかっただけだと思うけど。
恭介さんは貞操逆転世界から来ているだけあって、この世界の男子とは比べ物にならないくらい性欲が強い。
恭介さんが初めての彼氏である私たちと違い、これまでに10人近い男性と付き合ってきたみおちゃんも恭介さんみたいな男子は見たことがないと言っているから本当に精力が凄いんだと思う。
いや、もちろんエッチしてしまった後は恭介さんと愛し合うのが気持ち良くて離れられないって言うのは否定はしないんだけど、それ以前に恭介さんの人柄で好きになってるからそこは誤解して欲しくないところだ。
あ~、本当に恭介さんとの『1日2人っきりで過ごせる権利』をどう使おう。私はこの世界の女子だからエッチなことが大好きなのは否定しない。小さい頃から幼馴染のおちんちんの写真を撮りまくっていたヒナちゃんのことを羨ましいと思ってリスペクトしていたし、自分には出来ないけどいろんな男の子に声をかけてエッチまでしちゃってるみおちゃんは凄いと思っていた。もっともエッチしたいって思うほど好きになったのは恭介さんが初めてだったけど。
こっちの世界にいた多々良恭介くんのことはヒナちゃんとの関係性でしか見ていなかったからあんまり興味がなかった。
彼との関係性で言えばゆうきくんか、みおちゃんが一番近しい関係だっただろう。正確にはみおちゃんとは複雑な関係だったみたいだけど。
みおちゃんとまるちゃんを連れて恭介さんのお見舞いに行った時、みおちゃんがいきなり恭介さんに「恭っち」と呼び掛けていきなり親しげな態度で距離を詰めているのを見て、密かに恭介さんに惹かれ始めていた私の恋心が敏感に反応したのを覚えている。
病院の帰り道に3人で会話を交わした記憶がある。
「みおちゃんってひょっとして多々良くんと仲良かったの?」
「うんにゃ、どっちかって言うと嫌われてたかな。いや~、今日の恭っちの態度は面白かったわ。委員長、お見舞いに連れて来てくれてありがとうね」
「まるもきょーちんとの会話楽しかったんだよ。初めてまともにきょーちんと会話したんだよ」
今思えば、あの時点でみおちゃんは恭介さんが中身が入れ替わっているまでは想像できなくても記憶喪失レベルで人格が変わっていることを見抜いていたんだなって分かる。あとで教えてもらったが、同じ光画部で付き合いがあり、その上でいつもコンクールなどで入賞するみおちゃんは元の多々良恭介くんからは苦手意識を持たれていたというか嫌われていたという事だった。
その上でこちらの世界に来た恭介さんと出会って1番に違いに気付いていたのがみおちゃん。
そんなみおちゃんだからこそ恭介さんは心を許しているし、無条件な愛を持って懐いているのがまるちゃん。恭介さんと戦友と言うとでもいう絆で繋がって、恭介さんの進む道まで変えているひよりちゃん。
私には何があるんだろう……こんなふうに考えてしまう私だから恭介さんと1日一緒にいられるって言われても何も決められないのかな?
そんなことを考えて3限目の英語の時間を過ごした。途中で英文和訳を当てられたらけどそこはそつなくこなせたはずだった。
「しずく、大丈夫か? 体調が悪いなら保健委員の俺が保健室まで連れていくけど?」
10分間の休み時間に入るとすぐに斜め後ろから恭介さんに声を掛けられる。
「え!? なんで? 別に体調は悪くなんてないけど……」
「そうか? ちょっと失礼」
そう言うと恭介さんが手のひらを私の額に当ててくれる。冬の教室で授業を受けていたからか少し冷たく感じられる手の平。
「ちょ、きょ、恭介さん!?」
クラスの皆が見てるのに大胆過ぎるんじゃ……いや、だれがどう見ても熱を測ってるだけって分かるだろうけど……
「ほら、顔が真っ赤になってきてるぞ? 熱はないみたいだけどさっきの英文和訳もしずくにしてはらしくないくらいにたどたどしかったし、やっぱり保健室に行ってベッドで休んだ方が……」
て、天然無自覚たらしが発動してる!?
恭介さんが「保健室のベッドで休む」なんて言っているのを聞くともう普通にヤバいから。語彙がなくなるから……こんなの誘われてるって勘違いせずに断れるのなんて私くらいなんだからね。
「だ、大丈夫。ちょっとボーっとしてただけだから」
「そっか、それならいいけど。もしも体調が悪いとか気分が悪いとかあったらすぐに言ってくれよ。しずくが
最後の一言だけ……私の耳元に口を寄せて囁くようにつぶやかれる。ひよりちゃんが隣でズルいとかなんとか言ってるけど今はそれもどうでもいいかな。
うん、私の悩みなんて甘やかに溶かしてしまう恭介さんの声に、残りの授業もしっかり頑張ろうって思うのだった。自分の目標のために、みんなと恭介さんと一緒の幸せのために。
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ちょっとした小話
陽菜「こぼれ話に小話がつくのもおかしいと思うけど、こんな番外編で細々とやってる小説にもちゃんと運営さんの指導が来るのがびっくりしちゃったよ」
みお「それな~。あーしが調子に乗り過ぎたのが悪いけどPV数で見たら一番読者数が多い話の0.17%しか読まれなくなってる番外編が初警告て笑えるよね」
恭介「いや、笑えないから……俺とみおのせいで作品が消されたらって思ったらぞっとしたよ」
しずく「修正したおかげで消されなくて良かったよね。こっそり18禁同人誌をコミケで売ってる私が言えたことじゃないけど」
まる「逆に言えば、ここまでの部分は全てルールを守ってるってお墨付きを貰ったみたいなものなんだよ。これからも陽菜ちんは大手を振って恭ちんのおちんちんの話を公開できるんだよ」
ひより「なるほど、逆に考えれば今までやってきたえっちは全部せーふなのだな? そういう事なら恭介……今夜はみんなで一緒に……」
陽菜「ひよりちゃん? 風紀委員が一番風紀を乱す発言してるからね?!」
一同「「「「陽菜ちゃんだって大好きなくせに」」」」
次回更新は3月3日になります。
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