個別イベント① のどかのおばあちゃんと一緒に健康ランド

「すげー!! プールまであるんだ。初めて来たからすっごく新鮮だよ」

「きょーちんが喜んでくれてよかったんだよ。ばーちゃんときょーちんと一緒にここに来たいって思っていたんだよ」

 クリスマスプレゼントに陽菜から皆にプレゼントされた『恭介くんと1日2人っきりで過ごせる権利』の1人目がのどかだった。

 相変わらず悩まずに即決で決めるところがのどからしいというかなんというか。1月の2周目の週末、みんなの看病で無事に風邪も治って今日がお出かけになった。


 のどかの望みは俺とのどかのおばあちゃんと一緒に健康ランドというか温泉に行きたいというものだった。もちろん24時間ずっと一緒だから土曜日の朝から明日の朝まで二人っきりでいてもいいルールなんだけど、おばあちゃんが一緒の方がいいって言って3人で温泉に来るあたりが本当にだなぁって思う。

「恭介さん……今日は一緒に来てくれてありがとうね。のどちゃんのワガママで迷惑をかけているんじゃないの?」

「いえ、元々のどかさんとゆっくり遊べればと思っていたんで。それにおばあちゃん孝行したいってのどかさんがいい子だなって改めて実感して嬉しくなっちゃいました」

「のどちゃんは男の子と分け隔てなく遊ぶことがあっても、こうやって男の子を好きになって、一緒にお出かけするようになると思ってなかったから恭介さんには感謝しても感謝しきれないわ。のどちゃんもありがとうね」

 おばあちゃんの言葉にのどかが隣で真っ赤になっている。褒められるとすっごく照れるんだよなぁ。

 ちなみにまるって呼び方は丸川という名字から来ているのでおばあちゃんと一緒の今はのどか呼び。それもまたのどかが照れる理由になっているみたい。


 のどかのおばあちゃんも一緒にプールエリアにやってきた。ここは温泉エリアやプールゾーン、フィットネスゾーンみたいにゾーン分けされていてプールゾーンでは水着着用で温水プールで遊ぶことが出来る。

 プールも子供用から流れるプール、ジャグジーから泳ぐこともできる20mプールまで様々なプールが揃っているのだ。もっとも20mは短いし1メートルという浅さだから本気で泳ぐのは向かないけど。

「きょーちん、ばーちゃん。ここのプールは浅いからまるでも楽に足が届くんだよ」

 水深1メートルしかないからのどかでも胸から上が水の上に出ている。室内の温水プールだから水温はそこそこ温かい。


 流石に今日ののどかは海のときに着ていたスク水ではなく一緒に買いに行ったピンク色のビキニを着ている。かすかに膨らむ胸を三角の布で覆っている様は逆にエッチで他の男に見せたくないって思ってしまうけど、この貞操逆転世界だと女の子の水着姿はほとんど注目されない。

 俺の方はもはや慣れたものでちゃんとトランクスタイプの水着にラッシュガードでバッチリこの世界の男子対応である。ちなみに一応書いておくとのどかのおばあちゃんは紺色のワンピースでした。白髪だけどちっちゃくてのどかに似ていて優しそうなおばあちゃんは普通に可愛く見えてしまう。


 おばあちゃんの方はプールの端っこでウォーキングをしてるそうなので、俺とのどかは最初はちょっと競争しようってことになって今すでに10本目である。

 最初は俺のほうが早かったがのどかにフォームを指導して俺が泳いでいる姿を観察されるとどんどんのどかのペースが上がってくる。相変わらずの身体能力。

 12月にゆかり部長と一緒に温水プールに行った(※注)のだが、今度はのどかとひより、さんご先輩も連れてみんなでゆかり部長のトレーニングに付き合うというのはどうだろうか。


「ふぅ、やっぱりきょーちんはすごく速いんだよ。まるじゃ勝てないんだよ」

「いや、今までほとんど水泳に取り組んで来てない上に体格がこれだけ違うのに今のペースで泳げることがすごいから。圧倒的に俺のほうが有利なんだからね」

 そう言いながらのどかの頭を撫でてやる。どうしてもこの子には甘いというか甘やかしがちになるんだよなぁ。スタートの飛び込みができればついでに教えてみたいけど深さが1メートルだから飛び込み自体が禁止だ。

「きょーちん、流れるプールで遊んだら予約した『家族風呂』に行ってみたいんだよ」

 プールエリア以外は本来男女別で水着禁止なんだけど貸し切りできる家族風呂だけは水着のまま入ってもいいらしい。のどかはおばあちゃんも一緒に3人でお風呂に入りたいそうだ。おばあちゃん孝行だなって思う。


 3人で家族風呂に入ったあとはそれぞれ別れて、俺は男湯でサウナに入ったりロウリュウで整ったりたっぷりと温泉を堪能してから2人と合流した。3人とも肌艶もよくツルツルである。

「きょーちん今日はありがとうね。ばーちゃんはまるが連れて行こうとしてもなかなかお出かけてしてくれないんだよ。きょーちんが一緒なら来てくれるって分かったしまた来てほしいんだよ?」

 まるが小声で俺に囁く。分かっていことだがのどかが今日の権利を使ってやりたかったのは自分1人で俺と一緒に叶えたいってことだった。


 元々のどかの家は両親が事故で、祖父も腎臓がんで亡くなっている。一応残された遺産で多少の蓄えはあるようだが無駄遣いしないように倹約して、のどか自身もずっと家計の足しになるようにと朝は新聞配達、放課後はアルバイトに勤しんでいた。そのためにスポーツが得意なのに部活も助っ人として以外参加していなかったのだ。

 そんな状況がひよりとみおの力で劇的に変化し始めている。刀剣女士としてのどかが活躍するようになったことで動画収入も得られるようになりアルバイトの必要もなくなり、今のまま頑張れば剣道で大学進学の道まで開けようとしているのだ。


「まるが頑張ってるから俺もみんなも応援できるんだよ。おばあちゃんだってこれからもっと幸せにしてあげよう。ひ孫の顔も見せてあげたいんでしょ?」

 のどかの耳元でそう囁くと真っ赤になってしまう。あ~、のどかはエッチなことは好きだけど純真だから「元の世界的には純真な男子を誑かしてる悪女」になっちゃった気分。


「あらあら、本当にのどちゃんと恭介さんは仲がいいのね。恭介さん、今日はありがとうね。真っ赤になって男の子に恋してるのどちゃんの幸せな姿が見れて私は本当に幸せよ。それじゃあお家に帰ったらご飯の準備をするから電車に乗りましょう」

 電車で最寄り駅まで帰ってからスーパーで買い物する。のどかが喜々としてお菓子を買い、白菜や鶏肉なんかをどんどん買い物かごに入れていく。今日の夕食はのどかの家でお鍋。

 みんなで囲んだほうが楽しい料理ということでおばあちゃんが考えてくれた。ついでなのでお米や味噌、お醤油など運ぶのが大変なものも一緒に買って俺が持って帰ることにする。


「「「ごちそうさまでした(なんだよ)」」」

 のどかとおばあちゃんが住むアパートの一室で3人で鍋を食べてご飯を入れておじやで締める。もはやお腹パンパンである。今日はしっかりプールで泳いでるから大丈夫とは思うけど。

 のどかの家は二部屋しかない1LDKのアパートなので、キッチンと共有のスペースはおばあちゃんが布団を敷いてのどかの部屋がもう一つの部屋という感じ。小さな廊下でトイレとお風呂はそれぞれの部屋から行ける作りにはなっている。


 のどかの部屋に入るのは初めてなのでドキドキする。あんまり物はないけど小さなぬいぐるみや壁のポスターが女の子の部屋って感じがする。実はのどかは深夜アニメが結構好きだったりするのでUFOキャッチャーで取れるプライズのようなアニメグッズもそれなりにあったりする。

「きょーちんが部屋にいるのはちょっと変な感じなんだよ。でもきょーちんと一回ゲームしたかったから……今日はこれで遊ぶんだよ」

 小さなテレビと少し前の世代のゲーム機がのどかの娯楽のようなので2人でリモコンを振り回してしばらくゲームを楽しむ。


 その後は……キスをして2人で狭いのどかのベッドに横になる。実はのどかと二人きりでエッチするのは初めてだったので逆に緊張した。

「大きな声を出しちゃだめだよ……おばあちゃんが起きちゃったら困るでしょ?」

 隣に家族がいるっていうこの状況も初めてで、俺に言われて声を出さないように一生懸命口を押えているのどかが可愛くっていつもより激しかったかも。


 …………


「恭介さんって話には聞いていたけど本当に元気な男の子なのね。あんなに激しくって何度もするなんて思わなかったわ」

 翌朝遅く起きてのどかと一緒におばあちゃんに挨拶したらそう言われて、死ぬほど真っ赤になったのどかにポカポカ攻撃を食らったのが今回のオチ。

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 次回更新は1月21日になります。

 ※注 12月に女子水泳部元部長のゆかり先輩と温水プールに行ったお話が来週公開の「おまけ② 温水プールのチケット(北野ゆかり視点)」になります。

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