お正月蔵出し③ 姫川家の食卓 さちえさんと日奈子さん1

※サポーター限定として10月21日に公開したSSになります。

作中時間で295話の恭介がしずくに連れられて東京にいる間の陽菜サイドになります。


 お盆の時期には毎年お父さんが帰ってくるので家族で食卓を囲むほか、恭介くんのお父さんと日奈子さんを呼んでみんなでご飯を食べる。


 今年は恭介くんも一緒にご飯を食べられるかと思ったけど、昨日から東京に行って今日はコミケに参加するので不在にしている。

 考えてみると去年まではこっちの世界の多々良恭介くんがいたはずなんだけど、このお盆の食卓に参加してくれたことはなかった……やっぱり私のことが怖かったのかな?


「「「「「カンパーイ!」」」」

 お父さんたちが楽しそうにビールのジョッキを合わせてチンッチンッと鳴らし合っているので私も小声で参加してジュースのグラスを合わせる。

「かんぱーい」

 チンッ!


「あら、陽菜ちゃん……元気がないけど、恭介がいないから? ごめんなさいね、本当に落ち着きがない子で。あんな子じゃなかったはずなんだけど愛想をつかさないであげてね」

「こっちこそゴメンなさい。私と恭介くんが来ちゃったせいで……本当だったらここにいるのはこっちの世界の恭介さんとヒナちゃんのはずだったのに」


「もう、それは気にしなくていいって言ったでしょ。そんなことよりさ、せっかくだから陽菜ちゃんのいた世界の話をしてよ。おばさん異世界の話聞いてみたいかも」

「あ、それはお母さんも聞いてみたい。いつも陽菜ちゃんとは日常の会話ばっかりで改めて貞操逆転世界の話を聞いてみたいわ。男の子がみんな恭介くんみたいな積極的で性欲が強い子ばっかりなんでしょ? お母さんそっちに行ったらモテモテなんじゃないかしら」


 ゴホンッ!


 今のはお父さんの咳払いだ。お父さんは最近お母さんが恭介くんを気に入りすぎてることに警戒心を持ってるみたい。

 恭介くんはあれで真面目だから人妻に手を出すことは絶対ないと思うけど。っていうかお母さんとの不倫は私が絶対許さないから!


「貞操逆転世界って……本当にそんな変な世界じゃないからね。こっちの世界とほとんど変わらないから。

 う~ん、でも私は中学校に上がると同時にこっちの世界に来ちゃってるからあんまりそういう男女間のことって分からないんだよね。少女漫画のネタとか小学校の男の子がスカートめくりをしてたとかそういう話ばっかりで……」


 しずくちゃんと理央ちゃんに話して恭介君たち3人で即売会に行った同人誌のネタ以上のことは知らない。


「あ、そうだ! それだったらおばさんたちとか、さちえお母さんの馴れ初めの話とか聞いたことないの? 小学生でも恭介にプロポーズされたくらいだから、結婚については興味があったでしょ? 私たち多々良家の夫婦や姫川家の夫婦の向こうの世界での馴れ初めって聞いたことないの?」

 日奈子さんに言われて恭介くんからのプロポーズを思い出してちょっと赤くなってしまう。もう、お母さんっ、肘でウリウリってつついてくるのが鬱陶しいから。


「あ、お父さんとお母さんが付き合いだした時のことは聞いてます……えっと、一つ確認するんですけどこっちの世界でもうちのお父さんとお母さん、日奈子さんと恭介くんのお父さんは4人で幼馴染なんだよね?」

 最後はお母さんに確認する。


「そうよ、ずっと仲良かったんだから。幸い私と日奈子の男の趣味が違うからライバルにならなくて済んだけど一歩間違えていたら男の取り合いになっていたかもしれないわね。そしたら最大のライバルだったかもしれないわ」

 お母さんvs.日奈子さん。下手したら私と恭介くんって生まれなかった可能性があったのかも。2人の「男の趣味」っていうのが一緒じゃなくて良かった。


「さちえはヒナちゃん……あ、このヒナちゃんは今目の前にいる陽菜ちゃんじゃなくて入れ替わっちゃったこの世界で生まれたヒナちゃんね。そのヒナちゃんと一緒でお父さんのおちんちんの写真を撮るのが大好きだったの。

 陽菜ちゃんも聞いたことがあるかもしれないけど、小学生の頃から、初めて剥けた時、二人の初体験の直後と最近の元気がなくなるまで陽菜ちゃんのお父さんのおちんちんを全部写真に撮ってコレクションしてるのよ。

 ヒナちゃんと違って怖いのはそれを喜んで私にまで見せてくることね。そのせいで私のスルー力が鍛えられたんだから」


 うちのお父さんが隣の奥さんに自分のおちんちんを全部見られていたという衝撃の事実に真っ赤になって震えている。

 そうだよね。こっちの世界のお父さんは貞操逆転しているから見られるの凄く恥ずかしいよね。


 可愛そうなので私は背中を撫でて慰めてあげる。それにしても恭介くんがいつも話している日奈子さんのスルー力がうちのお母さんのせいだなんて……

 あれっ? 向こうの世界でもスルー力が凄かったって言ってたけど向こうでは誰のせいでスルー力お化けになっちゃったんだろう? 案外恭介くんのせいだったりして。


「私は幼馴染をずっと自分のものにキープしていたけど、日奈子だって結局高校生の時に他の女の子に旦那の童貞を取られそうになって慌てて押せ押せで奪ったんだから人のことは言えないでしょ?

 あの年ごろは優しくされると勘違いしてころっといっちゃうから、幼馴染を寝取られそうになったんだよね」

 うちのお母さんがとんでもないことを言って日奈子さんの過去を暴露している。


「さちえに言われたくないけど……確かに小学生の頃にガンガンに行っておちんちんを揉んだりして思春期のパパにちょっと距離を置かれちゃっていたのよね。

 そのせいでぽっと出の優しい委員長タイプの女の子にパパを寝取られそうになって……慌てて奪い返す羽目になったわ」

 うう、今度は恭介くんのお父さんが涙目になってる。そんなに怖い目にあったのかな?

 義理のお父さんになるんだし聞かなかったふりをしてあげよう。


「「それで陽菜ちゃん、向こうの世界はどうだったの?」」

 肉食獣が私に酒の肴になる話を求めてくる。喜んでもらえるかどうか分からないけど小学生の頃に聞いたお母さんたちの話を語ることにしよう。


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 1月3日公開分は長いので2話に分割しています。

 ここまでが今私と恭介くんがいる世界のお話でここから先の元の世界のお話は同時公開してる次の話「お正月蔵出し④」に続きます。良ければそのまま続けてお読みください。

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