お正月蔵出し② いい夫婦の日アンケート(陽菜視点)

※サポーター限定SS(11月23日公開)をお正月なので開放。


「いい夫婦の日なんだよ」

「いきなりどうしたのまるちゃん?」

 翌日が勤労感謝の日でお休みということで、イレギュラーながら恭介くんと一緒にみおちゃんの部屋に集まっている私たち。

 私としずくちゃんとひよりちゃんで作った晩ご飯を食べ終わってまるちゃんお手製のババロアを食べている最中に、スプーンを握ったまるちゃんが大きな声を出すのでびっくりしてしまう。


「明日が勤労感謝の日で11月23日、つまり今日は11月22日でいい夫婦の日なんだよ!」

 まるちゃんがもう一度繰り返す。

 た、確かに……私たちは今は私が恭介くんの正式な恋人で、あとのみんなは恭介くんの彼女みたいな立場(たまに文芸部の理央ちゃんにセフレと言い訳してるけどセフレじゃない)だから夫婦ではないけどね。

 え? 私はよく正妻扱いされてるって……うう、ちょっと照れちゃうよ。


「まるの家にはおじいちゃんとおばあちゃんしかいなかったから、夫婦のイメージがいまいちないんだよ。いい夫婦ってどういう感じかをみんなに教えて欲しいんだよ」

 なるほど、まるちゃんの言いたいことは分かった。けど貞操逆転世界の夫婦の形って恭介くん相手だと当てはまらなさそうなんだけどね。

「アンケートを取るんだよ。とにかくひよりが寝る前にアンケートを取らないとひよりはまるより早寝なんだよ」

 最近ひよりちゃんに対して遠慮がなくなっているまるちゃんがまずはひよりちゃんにいい夫婦の形を訪ねる。


「え!? う~ん、我が家もずっと父一人、子一人だったからそこまで夫婦が仲良くしている姿は見ていないんだが……父の姿を見ていると母は憧れの存在だったのかなって思えるな。それが夫婦として正しい姿かどうかは分からないが、父は母の剣にずっと憧れを抱いていて今でもその気持ちは変わらないんだろうと思う」

 ひよりちゃんの家の夫婦像にちょっとしんみりした空気が漂う。

「だから、恭介とは切磋琢磨できる尊敬できる剣士としての家庭を築きたいと思う」

 こら~、恭介くんはひよりちゃん一人のものじゃないからね!? でも恭介くんならひよりちゃんのために全力で剣の道を極めそうだけど。


「次はみおちん」

「え!? あーし? あーしは絶対オチで使われると思っていたから油断していたよ。うちの両親はやっぱり母親が強くて父親が若干弱い普通の家って感じかな。だからあーしが淫フルエンサーとして稼ぐようになってからも社長は母さんに頼んだんだし……

 あ、でもあーしは恭っちと夫婦になるならやっぱり男性上位がいいな。いや、セックスの体位の話じゃなくて恭っちがご主人様であーしが奴隷みたいな? もう一晩中責められたいみたいな感じ」

 みおちゃん!? 夫婦の話じゃないよね? 何だろうSMとかそういう話なのかな?

 そしてこれがオチじゃないって今回のお話大丈夫なの? もっとすごいのが控えてるとか……


「次はしずくちん、西園寺家は複雑そうだから岩清水家でいいんだよ」

「まあ、私も琴乃おばあちゃんがどういう夫婦生活を送っていたかとか怖くて聞けないけど。お爺ちゃんの死後、若い男性を囲っていたとか平気で言ってた気がするし……

 うちのお父さんとお母さんも普通だよ。夫婦円満だと思うなぁ。

 お父さんがちゃんとお母さんを立てて、二人とも共働きだけどちゃんとお互いにリスペクトしてると思うし。

 だから、恭介さんと夫婦になるなら共働きで……でも私が恭介さんを支えるようになりたいかなぁ」

 あれ? しずくちゃんと恭介くんの夫婦って私の生まれた元の世界の普通の夫婦みたいになりそう。なんだかすごくお似合なんだけど……ムムム、これは負けていられないのかも。


「最後は陽菜ちん……と思ったけど陽菜ちんのところはいいんだよ。さちえさんなんだよ」

 えっ!?

「そうだな。陽菜ちゃんちはさちえさんだからもう何も聞く必要がないな。恭介がさちえさんさちえさん呼ぶからこっちまでうつってしまった」

「そうね、陽菜ちゃんちのお話はさちえさんだからむしろ聞いたらいい夫婦の日が終わっちゃいそうだし。ゴメンね陽菜ちゃん」

「アハハ、陽菜っちの家の夫婦円満はあーしより絶対酷いから……そうか、あーしがオチ要員じゃない理由が分かったよ」

 えええっ!? み、みんな酷くない? 確かにうちのお母さんはあのお母さんだけど、すごく優しくて……でもお父さんは単身赴任から帰ってくるたびにゲッソリやつれてまた単身赴任先に戻っていくんだよね……

 い、言い訳出来ない。


「みんなはそう言うけど、俺はさちえさんみたいな奥さんだったら楽しいと思うよ」

 ま、まさかの恭介くんがお母さんのフォロー! でもそれはそれでモヤモヤするのはお母さんが今まで恭介くんを誘惑しまくってきたせいだと思う。

「何のかんの言って娘との仲もいいし、あの人が自分のお義母さんになるならありだと思う」

 うう、それは私と結婚してもいいって言ってくれてるんだよね。小学校6年生のプロポーズは生きてるんだもんね。


「「「「ええっ!? 本気なの?」」」」

 み、みんなが酷い。でも恭介くんに褒められたからきっと今ごろお母さんのことだからなんとなく喜んでいそうな気がする。


「10年後、またみんなでこうやっていい夫婦について話せればいいなって思うよ。もちろんみんなで一つ屋根の下でね」

 恭介くんがそう言って締めくくるのでみんなで赤くなってしまう。とっても幸せな未来をみんなに見せてくれる。

 そんな恭介くんのことがみんな大好きなのだから。

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ということでお正月特別編(サポーター限定SS公開)でした。

明日も18時に一話公開します。

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