番外編⑥-2 ま・ち・が・い・起きちゃうかも♡

「パソコン、パソコンの中だ! 恭にぃ、パソコン見せて!」

 うん、勘のいい小学生だ。流石は心愛ちゃん。

 エッチなものに対する嗅覚はこの貞操逆転世界で生まれ育って来た女の子だなって感心してしまう。

 この部屋のお宝の宝庫は間違いなく俺のパソコンの中……俺がというか、この世界の元の多々良恭介が写真編集用に購入していたパソコン。自作のタワー型のデスクトップパソコンで拡張性も高いしそこそこいいCPUにメモリもガッツリ積んでいる。俺も多少は写真編集するけどみおがいるから実際の所、俺自身がそれほど写真や動画を弄ることはないんだよな。


 今のところ何不自由なくネットに繋いで使っている。ちなみに大事な画像(主に陽菜たちのお宝画像)は外付けHDDを繋いでバックアップも取っている。……と、我が家のパソコンのスペックはどうでもいいんだ。ちなみに陽菜のパソコンはおじさんのお下がりのノートPC。カクヨムを読んだり書いたりするくらいだからそれで十分らしい。


「パソコン使うの? いいけどネットのフィルタリングとかしてないから変なところに繋いじゃダメだよ」

 考えてみると俺も未成年だからフィルタリングされる側なんだけどね。

 そうやって説明しつつこっそり管理者アカウントである俺のアカウントをログアウトする。そして陽菜用ということでいざという時のためにパソコン上に設定しておいた「みどりの」アカウントにログインする。

 陽菜相手にカモフラージュ用に準備していたサブアカウントを初使用する時が来た! ちなみに陽菜はこの部屋に来ること自体が少ないしパソコンを使うのはカクヨムの時くらいだから今までパソコンをチェックされたこと自体がない。


 ログインが終了してデスクトップ画面が表示される。

 後ろで眺めていると意外と心愛ちゃんはパソコンを使い慣れているらしい。俺の(サブアカウントの)検索履歴や写真フォルダ、怪しいフォルダがないかを調べている。

 うんうん、そこには何もないのだよ。

「おかしいなぁ……恭にぃのことだからずらーってエッチな検索履歴が出てくると思ったのに。どうやって隠しちゃったの?」

「俺みたいに真面目な高校生を捕まえて何を疑ってるのさ。これで俺の身の潔白が証明できた?」

 心愛ちゃんがぐぬぬって顔をしている。心愛ちゃんがもうちょっとパソコンに詳しかったら危なかったかもね。外付けのHDDの電源は切ってあるから表示さえされないし。


「あれ? カクヨムってなに? これって閲覧画面じゃなくて管理画面だよね?」

「ああ、それは陽菜が書いている小説の管理画面で……」

「ええっ!? 陽菜ねぇって小説まで書いてるの? それにこれって……『性描写有り』ってエッチなやつなんじゃ……?」

「そうそう、だから小学生は読んじゃダメだから。ほら、こっちにマンガがあるから一緒に読もう」

 それからしばらく、夕食前の時間まで座った俺の股の間に座らせた心愛ちゃんと一緒に俺(正確にはこっちの世界の多々良恭介)が子供の頃に買った子供向けのマンガを読んで過ごした。


 夜7時ごろにやっと陽菜が帰ってきた。心愛ちゃんが急に来たくらいで特に何事もなかったので家族団らんに水を差さないように連絡を控えていたけどお土産を持って家に寄ってくれた陽菜に向かって俺の腕にぶら下がるようにして心愛ちゃんが挨拶をかましていた。

「陽菜ねぇ久しぶり。恭にぃのお股、すっごく温かかったから」

 いやいやいやいや、確かに俺の股の間に座ってたのは認めるし11月の部屋でちょっと寒かったからくっついていたけど。


「恭ちゃん!?」

 陽菜が久しぶりに怖い目になってるし、いや本当に何もしないから……小学生相手に変な気になるほど欲求不満なわけないのは知ってるでしょ?

「今夜は恭にぃのベッドで一緒に寝るんだぁ……ま・ち・が・い・起きちゃうかも♡」

 ちょっと待って心愛ちゃん、夏休みはあんなに陽菜に懐いて三人で川の字になって寝てたよね。なんで今日はそんなに挑発してるの? あ、ひょっとして広島の大学に行くのが陽菜のせいだと思ってる? う~ん、ちゃんと話さないといけなかったか。


「と、とにかく、今から家から私の小さい頃のお洋服を持ってくるから。パジャマとかもあると思うからちょっと待ってて。それと……私も恭介くんの部屋に泊まるから。ちょっと待ってて」

 そう言うと陽菜がドタバタと家に帰り「お母さん! 今日は恭介くんの家に泊まるから、それと私の中学生の頃のパジャマとかってまだあったよね」という声が俺と心愛ちゃんの耳にまで届いた。陽菜の場合身長だけなら今でも心愛ちゃんとあんまり変わらないから、胸が小さかった中学生の頃のパジャマなら十分に合うと思う。


 陽菜が俺の家に紙袋に入った心愛ちゃんの着替えをいっぱいにして戻ってきたのは30分後のことだった。陽菜の持ってきたパジャマを見てうちの母親が俺たちに声をかける。

「あら、陽菜ちゃんありがとう。心愛ちゃんの着替えとパジャマが準備できたなら恭介、アンタ心愛ちゃんと一緒にお風呂に入っちゃいなさい。アンタの着替えとパンツはもうお風呂場に置いてあるから」

「え!? 恭介くんと心愛ちゃん一緒にお風呂に入るの?」

「夏も一緒にシャワー浴びたもんね、恭にぃ」

 あの水浴び事件を一緒にシャワーを浴びたと言っていいものだろうか? いや、確かにシャワーの水をぶっかけたけど。

「わ、私も一緒にお風呂に入るから。いいよね? 恭介くん!?」


 こうして俺と陽菜が心愛ちゃんと一緒にお風呂に入ることになってしまった。

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 ちょっとした小話


(後日金曜日の夜にみおの家にて)

陽菜「どうして恭介くんやみおちゃん、しずくちゃんはそんなにパソコンに詳しいの?」

ひより「そうだな。恭介とみおちゃんには刀剣女士のを沢山教えて貰って助かっているが、なぜ同い年なのにあんなに詳しのか不思議に思ってしまうくらいだ」

まる「そうだよ。うちはおばあちゃんも死んだおじいちゃんも苦手だからパソコンもスマホも教えて貰ってないけど、みんなは親がパソコン関係の仕事してるとかなんだよ?」

恭介「いや、パソコンとかスマホっていろいろと弄って覚えるものだから必要に応じて使えるようになったっていうか」

しずく「そうそう、ほら、私とかパソコンで絵とかマンガを描いていたからそこから自然に」

みお「カメラの画像を編集するのにパソコンを覚えなくちゃいけなかったから」

陽菜&ひより&まる「「「やっぱり3人は凄い!!」」」

恭介&しずく&みお(((い、言えない……アダルトコンテンツを見たくて自分たちで独学で身に付けたなんて、この尊敬の目を前にしたら絶対言えない)))


という会話が交わされたとか交わされなかったとか。


 とうとう70万字突破しました。ここまで応援ありがとうございます。

 今週は毎日18:00に番外編を公開予定。

 全5話になります。

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