番外編置き場

ハロウィンSS 「トリックオアトリート」

 一年前、多々良恭介は元の世界の自分の部屋でノックされるのを今か今かと待っていた。

 部屋の中は簡単ではあるがかぼちゃのおもちゃや黒猫のシールで飾り付けられていて、今日がハロウィンであることを教えてくれる。


 恭介の格好はいつもと変わらないジーンズにトレーナーだ。そんな格好でも水泳で鍛えられた彼はそこそこ様になっている。


 コンコンッ

「は、はいぃ」

 ちょっと声が裏返ってしまった。高校1年生なので当然行ったことなどないが風俗とかのお店でお姉さんを待っている心境ってこんな感じで、お姉さんが来たとき声が裏返ったら恥ずかしいなって思う。

 一生行くことはないと思いたいけど……


 ガチャッ


 ドアが開くとそこには白衣の天使がいた。正確には白衣じゃなくてピンク色だけど……そしてスカートは患者さんのお世話をしたら絶対パンツが見えちゃうだろうっていうくらい短いけど。

 そこにいたのは恭介の彼女のヒナだった。姫川陽菜ヒナ、恭介の幼馴染にして恋人、梅雨の頃から付き合いだしてこれからもずっと一緒にいたい大切な彼女であるヒナだ。

 そのヒナがハロウィンということでナースのコスプレをして恭介の前に立つ。


「どう? 結構似合ってるでしょ?」

 小悪魔のような笑みで恭介に微笑みかける。この悪戯っぽい笑顔を恭介は好きでたまらない。

「す、すごく似合ってるよ。ドキドキする」

「恭のエッチな本をチェックして調べたやつだもんね。清楚系幼馴染とギャルとナース……本当に分かりやすいんだから」


 清楚系のコスプレしようかと思ったけど負けた気になるからナースを選んだとヒナが言う。

 秘蔵のはずのエロ本コレクション(16歳の恭介がどうやって手に入れたかは秘密)をチェックされていたという事実に恭介は真っ赤になる。


「たまにゴリマッチョのコレクションが混ざってるみたいだけど、ナースと幼馴染は恭の趣味だもんね。まあ、ギャルのも買ってるから許してあげる」

 黒ギャルで茶髪のショートボブのヒナが恭介のおでこをつつきながら笑う。からかわれる一方の恭介はもう真っ赤だ。


 ちなみ恭介のナース好きは入院している陽菜のお見舞いに行った時に看護師さんたちが本当に優しく親身になって陽菜のお世話をしてくれる姿を見て憧れたからだ。

 いや、憧れたからと言って性欲の対象にしていいわけじゃないけど。実物を前にすると敬意が前に出てエッチな気分になることはないから大丈夫だと思うけど……


「ヒナの看護師さんが可愛くてエッチすぎてドキドキしちゃって。

 これは本当。だからヒナは満足そうな笑みを浮かべた後で……

「トリックオアトリート」

 恭介の耳元で囁く。

 ゾクッとするほど色っぽい声に恭介のあそこまで硬くなってしまう。仕方ない思春期だもの。


「と、トリート」

 エッチな男と思われたくないばかりに思わずお菓子トリートを選んでしまう。本当はエッチないたずらをヒナにして貰いたんだけど。

「恭のエッチ……それじゃあエッチなナースのアタシがいっぱいお世話しておもてなしトリートするね」

 そういうとキスした後、足を開いて恭介のももにまたがるようにして腰を下ろした。

「今日は朝まで……ね」

 ハロウィンの2人は幸せだった。


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(恭介視点)


 みおの部屋でのハロウィンパーティー。俺はみんなが着替えている間、みおのマンションの浴室にて待機しながら自分の衣装に着替えている。時刻は午後8時。

 普通に学校が終わった後、みんなでパーティーの準備をしてから着替えをしてコスプレパーティーになる予定。


 元の世界では男子用のコスプレってそこまでメジャーじゃなかったけどこっちの世界って男子の露出の方が価値があるからコスプレって男子の楽しみみたいなところがあるよな。


 去年はヒナにナースコスして貰ったなぁって思いながら着替える。

 スラッとした感じの吸血鬼の衣装。下手にヒナとのコスプレエッチまで思い出しちゃったからズボンを履くのに手間取ってしまった。

 牙のついたマウスピースを咥えてマントをまとって完成。大きな姿見に自分の姿を映して確認する。そういえば吸血鬼って鏡に映らないんだっけ?こういう時不便だろうなと大きな鏡を見つめる。


 鏡の中には俺と俺の後ろの脱衣所と浴室の扉が映っている。

 それにしてもこの空間はいい匂いがする。さっきからみおのシャンプーの匂いに包まれている感じがしてヒナのことを思い出さなくてもケモノの槍が臨戦態勢に入りそう。

 ああ、そんなこと考えてるからお風呂上がりに姿見の前で全裸でスタイルチェックしてるみおの妄想までしちゃってるし……


「きょーちん、出てきてもいいんだよ。こっちも準備が整ったんだよ」

 のどかが呼びに来てくれる。

 扉の向こうからだから姿は見えないけど……今日は火曜日だから明日は学校だ。去年は月曜日で翌日の学校で眠くて仕方なかった。

 まあ、今日は仮装してのハロウィンパーティーだって聞いているから大丈夫だろう。


 ガチャッ


 扉を開けてリビングに入るとそこにはコスプレした4人がいた。

 1人目はしずく。魔女のコスプレなんだけど……この魔女セクシーすぎない?

 なんとなく本当に神秘的な雰囲気も持ってるしずくだからめちゃくちゃに合ってるけど、紫と黒をベースにした衣装は露出度は低いのにしずくのスタイル……特に胸を強調させているようでめちゃくちゃエロスを感じる。

「似合ってるよしずく……その格好で学園祭で占いの館とかしたらめちゃくちゃお客さんが来そうだけど、男子に見せたくないから俺だけのものでいてね」

「ありがとう、恭介さん。いつだって恭介さんのためだけの魔女だから」

 もう可愛すぎる。


 2人目はみお。ミニスカポリスっていうのかな……婦警さんなんだけど自分が一番公序良俗に反してる感じ。アメリカの警察風の紺色ベースの制服なんだけど胸元がガッツリ開いていてみおの綺麗なおっぱいの谷間がばっちり見えちゃってる。

 そこにメタリックの小さな星のシールが貼ってあってどうしても胸に目が行ってしまう。胸に目をやるとそのまま手錠で逮捕されてエッチな取り調べをされちゃいそう。両腕を前に差し出して一言。

「逮捕してください」

「ちょ、恭っち!? せっかくの吸血鬼なんだからあーしのことをドSに責めてよ」

 性癖には合っていないようだけどエロ可愛い。


 3人目はのどか。

 キョンシーみたいだけどチャイナ服の布面積がおかしい。青色のチャイナ服はもうひざ上20㎝みたいな世界で大事な部分をぎりぎりで隠している。絶対動いたらパンツまで見えちゃうから。

 帽子と頭のお札は凄く可愛いけど、小さなまるがそんなエッチな格好をしてるとそれだけで背徳感が凄い。子供にこんな格好させたら犯罪だからね。

「まる可愛いよ。後で高い高いしてあげよう」

「やったー。きょーちん大好きなんだよ」

 決してチャイナの中身を高い高いして覗いてみたいとか思ってないから。純粋に可愛いのどかへのサービスだから。


 4人目のひより。

 見た瞬間鼻血を噴きそう。なんでこの子、包帯をグルグルって巻いただけのミイラ女にされちゃってるの。

 普通にこういうのってそれっぽい服をちゃんと着た上から包帯を巻くんだろうけどひよりの場合は完全に素肌の上に包帯を巻いているだけ。

 胸と下半身を包帯で巻いて……いや、胸はぺたんこだから包帯の量が少なくて済むからとかそういう問題じゃないのよね。ちょっと引っ張たらいろいろとまずいものが見えちゃいそう。せめてもう少し包帯の本数を増やして。

「ひより、コスプレ頑張ってくれてありがとう」

だから頑張ってみたのだ。というのはちょっと恥ずかしいが恭介が嬉しそうで私も嬉しい」

 嬉しいけど、またメイドの時のアナ〇プラグと一緒でみおに騙されてるよ。いや、可愛すぎて手を出したくなっちゃってるけども。


 で、陽菜はどこに? とキョロキョロしているとみおの配信室のドアが開いて恥ずかしそうな陽菜が顔を出した。

「なに恥ずかしがってるの陽菜っち。似合ってるから出てきなって」

「「「大丈夫だよ、陽菜ちゃん(陽菜ちん)」」」

 みんなに声を掛けられておずおずと陽菜が姿を見せる。その姿はまさかのピンク色のナース服だった。思いっきりミニスカートで、背が低いのに胸が大きい陽菜のスタイルのせいで凄くエッチに見えるナースさん。

 黒髪で清楚な陽菜のイメージを包みこむちょっとエッチなナース服は破壊力が抜群だ。


「なにこれ!? 最高!!」

 興奮して思わず叫んでしまう。みおの部屋が完全防音で良かった。

「恭介くんが入院中にあさかさんのナース服を食い入るように見つめてたから、陽菜で上書きしろってみんなに言われて……」

 まさかのヒナと陽菜のナースコス被り……いや、どっちも最高だけど……最高すぎて。


「トリックオアトリート」


 もうパニくってあの日、ヒナに言われた言葉を叫んでしまう。いや、トリートを選ばれたらトリートっておもてなしのことなんだよって言いながらエッチしようとかちょっとしか思ってないから。


「私はトリックで、お願いね恭介さん」

「あーしもトリック、エッチないたずらでいいから」

「トリックなんだよ。まるにイタズラしてもいいんだよ」

「いたずらだな。いや、決してえっちをして欲しいという事ではなく恭介が5人分お菓子を用意するのは大変だと思っただけで……」

 やばい、貞操逆転女子はお菓子トリートよりも悪戯トリックを選んじゃう件。


 みんなの注目がナースコスの陽菜に集まる。

「と、トリックでお願いします。いっぱい可愛がってね恭介くん」

 真っ赤な顔の陽菜が必死で絞り出すように言う。そうだよね。陽菜の感覚だとおねだりみたいでちょっと恥ずかしかったよね。


 結局朝までコースで一晩中イタズラしたりイチャイチャして過ごした。

 みんなでコスチューム交換して楽しんだりしていたけどひよりの衣装だけは誰も受け取ってくれなくてちょっとかわいそうだった。っていうか衣装じゃなくてただの包帯だからね。


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 というわけでちょっと長いですが、ハロウィンSSでした。

 長すぎました?

 でも1年前の2人を書いてあげたいって気持ちが押さえきれず長くなりました。

 去年と今年の恭介の周囲を描いてますが、元の世界の今年のハロウィンはまたサポーター限定にでもしていったん書いておこうかなと思います。

 あ、そっちは普通のハロウィンです。って恭介たちが普通じゃないハロウィンだったみたいですが。


 また機会があればこんな風にSSをアップしていきますのでよろしくお願いします

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