第二部 番外編
番外編①学園祭 メイド喫茶はどうかな?
「恭介さん、お願い。学園祭実行委員会に入って欲しいの」
そうやってしずくに頼まれたのは2学期に入ってすぐのことだった。うちの高校の学園祭は毎年11月の文化の日の直前の土日ということになっている。
今年の場合は文化の日が日曜日と被るのでそのまま11月2日と3日の日程になっている。
俺の周辺はしずくが生徒会長、ひよりが風紀委員長、みおが卒アル委員長と役職を持ってる忙しい子が多い。
俺とのどかは2学期から剣道部に入ったばかりでちょっとバタついているところではあるがしずくのお願いを断るという選択肢はなかった。っていうか、1学期末の精神状態がおかしかったころに生徒会副会長を俺も陽菜も断っちゃってるからなおさら断れない。
「恭介くん、
「まるも頑張るんだよ。しずくちんときょーちんの役に立つんだよ」
陽菜とのどかも協力を申し出てくれるがクラスの出し物もあるから忙しくなりそうだ。
学実委の仕事は主にステージイベントの企画とクラスの出し物の審査になる。
出し物の方は基本的に過去のイベントを踏襲しているところが多いからそこまでは……って何だこれ?
「『執事喫茶 多々良恭介の部屋』!? なんだこれ? 2年5組の企画なのになんで俺が知らない企画が提出されてるの? こんなの没に決まってるでしょ!」
元の世界でメイド喫茶が企画として人気だったように、この世界では執事喫茶が人気だったりする。ただし、それはラノベとかマンガの中の話で現実には準備が大変だったり男子が嫌がったりして学園祭では実現しないことも多い。
特にこの世界の男子はこういうのにノリノリな男子って少ないからなぁ。
自分のクラスにダメだししに行くのは気が重い。
「えっと、俺も学実委のステージイベントの司会とか結構忙しいからあんまりクラスの出し物にガッツリ関われないし、このイベントをクラスでやるのは難しいんだけど」
「「「「「「「え~~~、恭介くんが頑張ってくれるのを期待して企画したのにぃ~~~」」」」」」」
クラスの女子のガッカリした声。俺が「みんなの恭介くん」だった頃ならともかく陽菜の恋人になった今、こんな企画を立てちゃダメだから。
「ゴメンね、多々良くん。忙しいし恋人がいるのにこんな企画出しちゃったら困っちゃうよね。みんなあまりにもこの執事喫茶の案が気に入っちゃって別の案が出なくて……」
うちのクラスの早川さん、えっと……覚えてるかどうか分からないけど林間学校で俺と同じ班だった女の子だ。陽菜とのことを林間学校の時から応援してくれた野田さん、松本さんと合わせて3人にはいろいろとお世話になった。
「いや、里歩さんのせいじゃないから。こっちこそごめんな。学実委を先に受けてなかったらよかったんだけど」
俺はほとんどの女子を呼び捨てしていた(みんなに望まれてそうしていた)けど、陽菜と付き合いだしてからは「さん付け」にさせてもらうことにした。今でも呼び捨てしているのはしずくたちだけだ。
「そんなことないから。でもどうしよう、みんな色々執事喫茶のアイディア考えて乗り気になっているんだけど……」
早川さん困ってるなぁ。他の男子は恥ずかしがって協力してくれそうにないし、木下くんと皆川くんを見ると「ムリムリムリムリ」って感じで首を振りながら手でバツを出しているし。
「じゃあ、メイド喫茶はどうかな? 女子がメイドのコスプレをして接客するの。男子って優しくて大人しい女子に憧れているし、メイドさんになりきってご奉仕する癒しの空間を作ったら男子はいっぱい来てくれるしメイドさんになった女子はモテるんじゃないかな?」
俺の提案に
逆転したらメイドはこの世界の男子にもドストライクのはず。
「「「「「それいい! 流石は恭介くん。愛してる」」」」」
どさくさ紛れに俺に近づこうとする
そこからは話が早かった。執事喫茶で男子がやるはずだった接客を女子がメイドでおこない、料理や裏方を男子が担当する。
調理が教室内であることを考えるとオムライスなんかは難しいからクッキーに冷凍の市販生クリームでトッピングしたり、フライヤーを準備して冷凍たこ焼きを揚げてメイドさんがあーんしてあげるのだ。
女子からは憧れのあーんを男子に出来るかもということで凄く盛り上がっている。
クラスの男子に確認したところ、いつもの肉食女子にあーんされると怖いけど優しく奉仕してくれるメイドさんのあーんには憧れるということだった。
「じゃあクラスの方は里歩さんたち3人に任せるから」
「あ、でも多々良くんにはメイド服の選定だけ協力して欲しいかも」
「多々良くんが選んだメイド服だったらみんなきっと張り切っちゃうから」
「サンプルは取り寄せておくからお願いしてイイかな」
ステージの方の目玉は何といってもゆうきと村上の
あ、ゆうきはライブの時以外はクラスでメイドさんだから。2人きりの時に土下座でお願いしたらOKしてくれた。
「もう、きょーすけのためじゃなかったらこんな格好死んでもしないんだからね!」
ゆうきのことをクラスで伝えたら男子、女子ともに大歓声だった。そうだよね、今ネットでバズってるアイドルの片割れが男の娘メイドさんなんて最高だよね。
光画部に関してはうちのクラスの隣の教室で撮影会を開催することになった。
「フフフ、このトップアイドルのゆうかちゃんがモデルをするんです。ポラロイド1枚500円でも飛ぶように売れますよ。サインも欲しがる人続出でしょうからサインで500円。1人1000円です。多々良先輩、今年の部費は私に任せて下さい」
2年4組がステージで演劇の出し物をする予定になっていて助かったよ。隣のクラスからゆうきの写真を撮りたい人はうちのクラスにアフター料金1000円を払って隣の教室に移動、ツーショット写真は1000円だ。サインもしたら500円。勝ったなガハハ! ゆうきのおかげでクラスも光画部も黒字間違いなし。
村上(妹)よ、カメラマンは頼んだ! お願いはしないけど鋭いお前なら学園祭が始まると同時に俺の意図に気付くはず。
「恭っちって結構えげつないよね。あーしもたいがいだけど、今回は恭っちにドン引きだわ。あ、撮影用のセットは任せておいて。ばっちり準備しちゃうから」
部長のみおには俺の意図は筒抜けらしい。
「恭介くん、あ~ん♡……うう、クラスの女子全員に見られながらのあーんは流石に恥ずかしいよぉ」
真っ赤になっている陽菜の右手には爪楊枝2本刺しされて回転や落下を防止された揚げたこ焼きが、左手は添えるだけ。
パクッ ハフハフッ……
あ~、陽菜のあ~んで食べるたこ焼きは美味しいなぁ。女子の要望を受けてたこ焼きのあーんのコツを陽菜が伝授中。
ちなみに当日は陽菜ものどかも学実委を理由としてメイドのコスもご奉仕もなし。しずくたちも忙しさを理由にメイドにはならないし、させない。
独占欲が強くて申し訳ない。みんなには俺だけをご主人様って呼んで欲しい。
そんなこんなで学園祭当日。
「まったく、ゆうき目当ての女子が多くて困ったものだな。恭介の方がよっぽどかっこいいのに」
ライブはもちろん大成功。しずくが生徒会長として中心になった学園祭は伝説に残る学園祭になった。
クラスの出し物は……全校のクラス売上部門、人気部門両方1位! 光画部は……全校の部活売上部門、人気部門両方1位! 学園祭MVP(今回特別に創設された新部門)の栄冠はもちろん村上ゆうきの頭上に輝いた。
実にクラスと光画部の売上の8割をたたき出す脅威の人気。俺は後日、村上(妹)に土下座して謝った。先輩の威厳が台無しだよ。
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ちょっとした小話
「「「「「おかえりなさいませご主人様」」」」」
今日はメイド服の選考会、指定された時間にみおのマンションの扉を開くとそこには天国があった。5人のメイドさんがお迎えしてくれる。みんなに引っ張られるようにして部屋に連れ込まれる。
「エントリーナンバー1番 姫川陽菜です。衣装は伝統的で本格的な英国風でロングタイプです。ご主人様いかがですか?」
1人目は陽菜。まさにメイドさんを体現している完璧なメイドさん。露出度がゼロなのにおっぱいも大きくってすごく魅力的だ。あのちょこんと摘まんでお辞儀しているロングスカートの下がどうなっているのかが気になって仕方ない。案外黒のストッキングをガーターベルトで止めていたり……俺が妄想している間に陽菜が横にずれる。
「エントリーナンバー2番 岩清水しずく。ミニスカメイドです。メイド喫茶のお店でよく見るタイプなのよ。どうかしらご主人様」
2人目のしずく。ああ、これぞメイドさんって感じで白いニーソックスに包まれた脚線美とミニスカメイド服の間の絶対領域の肌の色が眩しい。胸元は開いてないけどエプロンでしずくの大きな胸が強調されて見えるのが素晴らしい。
「エントリーナンバー3番 藤岡みお。あーしはフレンチメイドだよ。どう? 恭っち……いや、ご主人様さえよければこのままベッドの上でご奉仕しちゃうよ」
3人目のみお。学校でこれは絶対アウトでしょうっていう露出度。寄せながら見せつけてくるから胸の谷間までばっちり見えちゃってるし、黒のストッキングにガーターベルトが目に飛び込んでくる。目の前でクルっと回ると思いっきり白いパンツが見えた。思わず鼻を押さえる。いや、鼻血は出てないから。
「エントリーナンバー4番 まるだよ。和風メイドさんなんだよ。わふぅ」
4人目ののどか。和風の意味が分かっているのかいないのか分からない「わふぅ」の掛け声が無駄に可愛い。ちっちゃなのどかが着ると可愛い女中さんって感じで最高。
「えんとりーなんばー5番 ひよりだにゃん♡ 猫耳めいどだにゃん♡」
5人目のひより。メイド服としてはミニスカートでしずくとよく似ているんだけど猫耳カチューシャと尻尾のオプションが可愛い。手を招きネコみたいにして絶妙な角度に曲げて片足を折るようにして後ろにあげている。なにこの可愛い生き物。思わず手に持った⑤のプレートをあげそうになる。
「んっ、んはぁぁ……だ、ダメだにゃぁ♡ こんなの我慢できないにゃん♡ 尻尾支えられないにゃぁ♡」
よく見るとひよりの尻尾がプルプル震えている。どう見ても尻尾が付いている場所がおかしい。スカートの中から出てきてるし。最終的にはしゃがみ込んでぷるぷる震えている。
バっとみおの顔を見る。頷きながら手に持った袋の中から「尻尾型アナル〇ラグ」のパッケージを俺に見せてくる。
みお、後でお仕置き。いくらひよりがメイドについて無知だからって騙しすぎだしやりすぎだって……でもイイもの見せてもらったよ。
選考結果は満場一致でエントリーナンバー2番のしずくのミニスカメイドでした。せっかく頑張ってくれたのにひよりゴメン。
「こんなのくらすのみんなが耐えられるはずがないから仕方ない。私だから着こなせたのだ」
うんうん、本当に頑張ったね。後で一緒にみおをお仕置きしよう。
その夜のメイドさん5人のご奉仕は最高でした。
というメイド服選考会が繰り広げられたとかなかったとか。
毎日18時に最新話公開中
次回更新は10月13日です。
次は番外編「結婚式編①」です。
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