第304話 とっても幸せな私の日常(陽菜視点)
「おかえり~、しずくちゃん。今日も遅くまで大変だったね」
「ただいま、陽菜ちゃん。流石に外科は研修医でも大変だよ。今日なんて緊急手術が入っちゃってこの時間だし、でも着実に陽菜ちゃんの主治医に近づいてるから待っててね」
「大丈夫だよ。今の私は健康だもん。
さっきまで
高校を卒業してから6年の月日が流れた。恭介くんとしずくちゃんの子供である琴菜ちゃんももうすぐ3歳だ。
「ああ、しずく、おかえり。本当に
それは恭介くんの子供だから……って言いたいけど琴菜ちゃんだって恭介くんの子供だもんね。なんでだろう? お風呂場から出てきた恭介くんが自分の頭をバスタオルで拭きながらしずくちゃんを出迎えておかえりのキスをしている。
これは我が家の通常運転だ。
あれから私たちはみんなで恭介くんと一緒に隣の県に進学した。恭介くんとひよりちゃん、まるちゃんは大学で4年間、私とみおちゃんは短大と専門学校で2年間、しずくちゃんだけ医学部だから6年間を過ごすはずだったんだけど、実際にはしずくちゃんは7年目の今年も医大生をやっている。
大学3年生の後半から1年間休学して琴菜ちゃんを出産したのだ。これに関してはみんなで話し合って私が短大2年生の時に計画を立てた。
「あーしは自分自身の仕事が形になってから子育てをした方がいいかなって思う。今が踏ん張り時で配信しつつメイクの現場に出て行けるようチャンスを広げたい」
「私とのどかは大学4年間は少なくとも剣道で結果を残したい。少なくとも国体は後2回、私とのどかを中心としてとりたいと思う」
「そうだよ、陽菜ちんとしずくちんの赤ちゃんが先がいいと思うんだよ」
私は自分の体が若くて本当に健康なうちに子作りをしておきたくて、しずくちゃんは医大を卒業した後よりもむしろ在学中に赤ちゃんを産んでしまった方が医者としてのキャリアを積みやすいだろうという判断だった。
「ありがとうみんな。恭介さんの子供、陽菜ちゃんと一緒に産ませて貰うね」
へんな言い方だけど私が赤ちゃんを産んだすぐ後なら私のおっぱいも出るから子育ても協力してできるし、しずくちゃんが忙しくても短大を卒業して恭介くんと結婚して専業主婦になった私なら家で赤ちゃんの面倒を見ることだって出来るのだ。
そうして短大卒業後に私と恭介くんは結婚した。恭介くんは大学3年生の時に学生結婚したことになる。その結婚式も色々あったんだけど今となっては懐かしい話だねって笑っている。結婚式の時には私のお腹にはもう赤ちゃんがいたんだけどね。
誤算があったとしたら私と恭介くんの子供が双子だったことかな。おっぱいは二つしかないから。恭一と幸菜と琴菜ちゃんが同時に泣いたら大騒ぎだった。
6年後の今住んでいる家(結構な豪邸)は実家の近くだけど、赤ちゃんが生まれた頃は大学の近くだったからお母さんが実家から来てくれて一緒に住んでくれたんで助かった。
今の家はみおちゃんが新築を準備してくれたけど、あの頃はみおちゃんが大学のそばに借りた一戸建てでお母さんも泊まっていたから普通の世帯向けの家に恭介くんと女の子5人、私のお母さんと赤ちゃん3人と今思い出すとぎゅうぎゅうの生活だったなぁって思う。
お風呂も1つだったし、トイレも普通に1つだから朝とか結構大変だったしね。それでも楽しくて懐かしい思い出しかないけど。
今は実家からひよりちゃんの家のある郊外に向けて3駅ほど離れたところにみおちゃんが立てた3階建ての新築一戸建てだ。部屋もたくさんあるし、お風呂もトイレも2つずつある。みおちゃんがそれまでの貯金が空っぽになったってすごくいい笑顔で笑っていた。本当にありがとう。
ゆうきくんとゆうかちゃんがメジャーデビューした時に、みおちゃんの事務所には多額の契約金が振り込まれたらしい。それこそ
その後の
「しずく先輩、お邪魔しています。それにしても琴菜ちゃん、しずく先輩に似てよかったですね。凄く可愛いです」
「ちょっとまて、村上!? 俺のことをディスってない?」
「そうだよ、ゆうか。きょーすけに似たって可愛いに決まってるよ」
そんなトップアイドルになっても2人はオフになるとしょっちゅうここに泊まりに来るんだけどね。今のお家にはそれぞれのお部屋に子供部屋、来客用の部屋に……何と
みおちゃんがこの家を建てるのにゆうきくんたちのおかげで儲かった分を使ったからってことになってる。
まあ、そんな風に部屋を用意しなくても地元に帰ってきたと言ってはゆかりさん(今は実業団で水泳をしている)が泊りに来たり、
「ああ、しずくちゃんおかえり。明日は朝から
「しずくちん、おやすみなんだよ。忙しいのは分かるけど無理しちゃダメなんだよ」
「ひよりちゃんはまだ安定期に入ってないんだから稽古は見るだけで参加したらダメだからね。まるちゃんは運転気を付けて。必要なら恭介さんの会社を有給とって貰って朝稽古に参加させたらいいから」
今ひよりちゃんが妊娠3か月目、みおちゃんは安定期に入っていて妊娠6か月目だ。
まるちゃんは道場の都合でひよりちゃんと妊娠期間をずらすということで来年か再来年に子供が欲しいって言ってるけど、いつになったらまるちゃんは年を取るんだろう。いまだに中学生くらいに見えちゃうことがある。
ああ、どんどん恭介くんの周りがにぎやかになって幸せになっている。世間とはちょっと違った幸せかもしれないけど、これが私たちの幸せだって胸を張って言える。
恭介くんは大学を卒業した後、琴乃おばあちゃんとの約束で西園寺グループに入って働いている。将来の幹部候補として期待されて忙しくしているけど毎日が充実しているらしく楽しそうだ。
しずくちゃんは今、臨床実習生として西園寺共生会病院に来ている。恭介くんが溺れた後に入院していた病院だ。
大学卒業後はそのまま研修医となって、将来はそこで外科医になる予定。もちろん他の診療科のことも知識をつけて将来の医院長候補としての成長を期待されている。
未来では委員長じゃなくて医院長って呼ばれるようになるのかな。
みおちゃんはインフルエンサーとして活躍しながら、メイクアップアーティストとしていろんな現場を飛び回っている。みおちゃんがいれば宣伝まで出来ちゃうからものすごくいろんな仕事が舞い込むみたい。あちこちの映画の現場なんかでも引っ張りだこだ。
ひよりちゃんとまるちゃんは大学卒業後、2人で
この2人と大学で先輩だった石動さんと石川さんの4人で女子剣道四天王って呼ばれたりすることもあるみたい。
もっともまるちゃんは相変わらずちっちゃい子と遊ぶのが大好きで
私? 私はみんなのお母さんだよ。今は恭一と幸菜と琴菜のお母さんだけど、みおちゃんの子供もひよりちゃんの子供もしっかりとお母さんになってあげてみんなと一緒に子育てするんだ。
私がいることでみんなが安心して働いたり好きなことをできるようにしたい。
恭介くんにいつか言われたけど私は保母さんになりたかったのかもしれない。だってこれからも恭介くんの子どもが増えるって思ったらワクワクしちゃうもん。
好きな人の子供で大事な友達の子供だからかもしれないけどこんなに幸せなことはないよ。
「ほら、琴菜ちゃん良く寝てるでしょ。お母さん待つ? って聞いたんだけどおねむしちゃった」
「このままの生活していたら琴菜が陽菜ちゃんのことを本当のお母さんと思っちゃいそうで怖いけどね」
「しずくは心配性だなぁ。大丈夫だよ。そこは陽菜がちゃんとしずくがお母さんでお母さんは琴菜のために働いてるんだってお話してるから」
「そうかな、そうならいいけど。でもこの子たちは幸せよね。お母さんが2人もいて、いや、5人もお母さんがいるんだから。恭介さんも子煩悩だしね」
ベッドで寝ている琴菜ちゃんを見ながらそんな会話をしていたらそろそろお腹が目立ち始めたみおちゃんが恭介くんの後ろからやって来て恭介くんに抱きつく。
「しずく、おかえり。恭っちが子煩悩なのはいいけど夜はあーしたちを可愛がってくれないとね……って妊婦に抱きつかれて大きくすんなし!
もうっ節操ないなあ。でも、恭っちって本当に妊娠してても愛してくれるからすごいよね。普通無理だって聞くけど」
しずくちゃんと私も妊娠中もいっぱい気持ちよくして貰っちゃった。赤ちゃんより先に恭介くんにおっぱいミルクを飲まれちゃったのは恥ずかしすぎて秘密にしてたけど、しずくちゃんの時も同じ事をしたらしくてみんなにバレちゃったよ。もう、エッチなんだから!
「こういう事言うと怒られそうだけど、どんなに変わってもみんなの魅力は変わらないんじゃないかって思ってるから。エッチでゴメンねって思うときはあるけど」
しずくちゃんと2人で恭介くんの腕にそれぞれ左右から抱きつく。
「「旦那様、今日もいっぱい愛してね。私たちも愛してあげる」」
「あ、ずるい。ダーリン、あーしもいっぱい愛してよ。お腹の子供まで幸せが伝わるように」
相変わらずちょっとドタバタでとっても幸せな私の日常。きっとこれからずっと続いていく。
みんなで家族になって幸せになれたね。
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本日ヒナアフター最終19話まで含めて予約投稿を完了させました。
10/31にこの物語は本当の完結を迎えます。
総文字数671,617文字 5/26に投稿を始めてほぼ毎日更新して完結まで来ました。
およそ140日で書きあげましたので、1日平均4,800字書いたことになります。
約5か月で文庫本6~7冊って聞くとそんなに書いたっけ? って思いますが計算するとこうなるんですけど合ってますか?
毎日18時に最新話公開中
次回更新は10月10日です。
最終回まであと2話!
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