第302話 赤や青に照らし出される恭介くん(陽菜視点)

 私は今、みおちゃんの部屋で浴衣の着付けをして貰っている。しずくちゃんとひよりちゃんは元々和服の着付けが出来るし、みおちゃんは私たちの髪をセットしたり薄化粧をしたりといろいろとしてくれる。


 私ももっとみんなの役にたてるようにいろいろと覚えよう。そう思って手をギュッと握ってフンスッと鼻息を荒くしているとしずくちゃんに笑われた。

「陽菜ちゃんは今のままのペースでいてくれたらいいからね。陽菜ちゃんに私たちがどれだけ救われてるか、陽菜ちゃんだけが分かってないんだから」


「そうだな、ある意味では陽菜ちゃんの心の広さのおかげで私たちも恭介も自由にさせてもらってるんだし」

「あー、ひよりっち……その言い方だと好き放題エッチしてるっていう風にしか聞こえないんだけど。相変わらずスケベだねぇ」

「な、私は断じてスケベなどでは……」

「この間、まるとひよりできょーちんをイかせっこ競争したんだよ」

 みんなのひよりちゃんを見る目が生暖かいというかなんというか……


「う~ん、私としては自分が見てないところでエッチされてるっていうのはちょっとだけ不安だけど、みんなのことも恭介くんのことも信じてるから。

 でも避妊だけはしっかりしてね。もし出来ちゃっても恭介くんのことだから生まれてくる命を何としても守ろうとするだろうけど、流石に今の恭介くんには重たすぎると思うから」

 みんながそれぞれ真面目な表情で頷いてくれる。こういうみんなだから私も信頼できるんだ。

 だってみんな恭介くんのことが大好きで世界一大切なんだから。


「陽菜っち質問。もしもあーしがピルを飲んでちゃんと避妊したら生でエッチして中出しして貰ってもいいの?」

 みおちゃんの質問に私は真っ赤になってあうあうと答えられなくなってしまう。

「こら、みおちゃん。陽菜ちゃんを追いつめないの。それは私だって生エッチには興味はあるけど……漫画とかだとすごく気持ちイイって書いてあるし、だけど今はまだ学生なんだし欲張り過ぎたらダメだよ。きっと恭介さんの負担にもなっちゃうし」


「そうだぞ。私だって恭介に生でして貰いたいが我慢しているんだ。抜け駆けはダメだし陽菜ちゃんと約束してる通り、最初は陽菜ちゃんに譲るべきだろう」

「陽菜ちんが生でエッチしたらまるも生エッチするんだよ」

 もう、みんなエッチすぎるよ……こういう時みんなが貞操逆転世界の女の子なんだなって感じる。でもきっと元の世界でもこっちの世界でもみんなが真面目で優しいのは一緒なんだと思う。


「わ、私が生エッチしたら報告するから……それまで待っててください」

 真っ赤な顔をしてみんなにそうお願いするのがやっとだったよ。何なのこの羞恥プレイ!?




 みんなの準備が出来たからみおちゃんのマンションを出る。今日は花火大会。夏休みも終わりが近いけど相変わらずの熱帯夜だ。

 浴衣を着た5人でうちわでパタパタと仰ぎながら打ち上げ会場に向かう。中心街の花火大会はここから歩いて行ける河川敷で行われる。恭介くんは本人の希望であえて待ち合わせになっている。


「陽菜ちゃんの浴衣姿、すごく似合ってるな。これなら恭介も惚れ直すこと間違いなしだ」

 ひよりちゃんが褒めてくれる。今日の私の浴衣は藍色の浴衣で朝顔の柄が入っている。

 ひよりちゃんの浴衣は黒、しずくちゃんが白で、みおちゃんの浴衣とまるちゃんの浴衣はそれぞれ黄色とピンクなんだけどミニスカ浴衣って言えばいいのかな? ミニ浴衣で浴衣なのにミニスカートみたいに丈がひざ上までちょっとセクシーに見える。

 まるちゃんの場合はセクシーさより可愛さが際立っちゃってるけど。


 恭介くんはよく私たちが可愛いから心配だって言って過保護にしようとするけど、こっちの世界の男の人はそんなに積極的にガツガツ来る人はいないし、男の人への対処に慣れているみおちゃんと(戦闘力的に)強いひよりちゃんがいるから心配する必要はないと思う。

 むしろ恭介くんの方がナンパされてたりしないか心配だよ。

 心配しつつ待ち合わせの場所である橋までを歩いて移動する。恭介くんがデート気分を味わいたいからって言っていたけどお家から一緒に出るのだってデートでいいと思う。


 あ、いた。紺色の浴衣を着て橋の欄干の端っこ……橋の名前が書いてあるところに立っている。相変わらずカッコいいなぁ。

 恭介くんは自分では自分のことをイケメンだと思っていないっていうけど、私には世界で一番カッコよく見える。それを言っても惚れた欲目だって言って説得されてくれないけど。


 ん!? 恭介くんに話しかけてる女の人がいるんだけど……ちょっと薄手のキャミソールとホットパンツの女の人とかなりミニのワンピースを着たお姉さんたち。茶髪でちょっと軽薄そうな(偏見かもしれないけど)人たちが恭介くんに話しかけてる。

「あ、陽菜、お~い。すみません、連れが来たんでこれで失礼しますね。さようなら」

 私に気付いた恭介くんが私に手を振りながらその2人から離れて私に駆け寄ってくる。恭介くんの腕に抱きつくようにしてちょっとだけ見せつける。


「恭介くん待った? 今日のみんなの格好どうかな?」

 私たちが合流したことで諦めたのか、お姉さんたち2人は舌打ちをした後どこかに歩いて行った。

「みんなの浴衣すごく綺麗だよ。陽菜としずくとひよりはすごく綺麗だし、みおのはちょっとセクシーすぎだけど凄く似合ってる。まるは……うん、可愛すぎてなにもいう事がない」

 それぞれに褒められて喜んでる。


「恭介、さっきの2人組は知り合いか?」

「いや、俺が30分前について暇そうだったから話しかけてくれた大学生のお姉さんたちだよ。なんだか分からないけど『浴衣の時、男子ってパンツ履いてないって話は本当?』とか聞かれたんだけど普通にパンツ履いてるよね?」

「あ~、エロ漫画とかだと男子は浴衣の下に下着をつけないって設定のやつがよくあるから真に受けちゃったじゃないかな? マンガを真に受けちゃダメだよね」

 精液が甘いと思って真に受けていたしずくちゃんが何か言っている。恭介くんもそのことを思い出したのかクスクス笑っている。


「恭っちはいつも待ち合わせより早目に来たがるけど、あーしは恭っちのことが心配だからギリギリかちょっと遅れるくらいで来てもらった方がいいかなって思うよ。

 やっぱり男子が1人でいるとナンパしようとする女子が出てきちゃうし。あーしもよくそうやって1人でいる男子をナンパしてたしね」

 私もみおちゃんに賛成。恭介くんはもっと自分の魅力に気付いて安全に気を配るべきだと思う。

 絶対元の世界の感覚で男子が先に着いて待ってるものだっていまだに思ってるよね。


 少女漫画とかで「待った?」「今来たところ」って話ながら30分前に来てる男の子の話とかよくあったけど、この世界では狙われてるのは男の子の方なんだから気を付けて欲しい。



 ヒュゥ~~~~~~ドンッ!! ドドンッ!! ドドドドンッ!!! パチパチパチチチッ……


「た~まや~」

「か~ぎや~」

「さ~おや~」

 花火の打ち上げが始まりそれぞれに適当に声を上げている。桜祭りのあった川岸とは別の河川敷だけど今日は川沿いの道路が歩行者天国になっているので道端のスペースに敷物を引いてみんなで座って花火を見上げている。


 恭介くんは空を見上げながら花火を楽しみながらたまに私の顔を……他のみんなの顔を見ては微笑んでくれる。

 私もみんなも花火を見上げてる時間よりも恭介くんの顔を見ている時間の方が長いかもしれない。花火の光を浴びながら赤や青に照らし出される恭介くんの顔を目に焼き付ける。

 純粋で優しい私たちの恭介くん。みおちゃんが動画や写真を撮ってくれているので後で貰おう。


「こうやってみんなで花火を見上げることが出来てるのが本当に奇跡みたいだって思う。俺と一緒にいてくれてありがとう。陽菜も、みんなも俺のことを愛してくれて本当にありがとう。これからもずっと一緒だから」

 花火と花火の合間の沈黙の時間を恭介くんの言葉が埋める。私たちの心に恭介くんの言葉が染みこんでいく。

 本当に恭介くんは恭介くんだなって思う。私たちがどれだけ恭介くんに感謝してるかこの人は全然気づかないんだ。私たちの方こそありがとうだよ。


 みんなでギュって恭介くんを中心に抱きしめてしまう。流石に5人に抱きつかれたら恭介くんも暑いよね? 真っ赤になってるのは暑いからかそれとも照れてくれているのか?


 恭介くんが悪いんだからね。私たちみんなをこんなに夢中にして好きにさせて……覚悟してよね。本当に一生幸せにしちゃうんだから。これからもみんなでずっと一緒だからね。

 -----------------------------------------------

 ちょっとした小話


「ねぇ恭っち、恭っちって生エッチで中出ししてみたいって思ってる?」

ブゥーーーーーッ!!

祭りで買ったコーラを飲みながら歩いていた恭介くんが思い切り噴き出した。誰かの浴衣にかからなくて良かったよ。

「な、何言ってるの? なんでいきなり中出しの話?」

「ん、あーしたちみんな、中出しに興味があるから」

恭介くんが凄い顔で私の顔を見てくる。真っ赤な顔でブンブン首を振る私。

「さっきみおちゃんが話していたんだけど、ピルを飲んでエッチしたら生エッチでもいいんじゃないかって。恭介さんはどう思うの?」

「そ、それは……俺はこんな性格だからもちろん生エッチも中出しも興味はあるけど。だけどもし万が一って考えたら今はまだ子作りに繋がることは早いかなって」

恭介くんが私の方をチラチラ見ながら言葉を続けていく。

「やっぱり陽菜ちゃん次第なんだな。恭介と陽菜ちゃんが子作りするまで私の種付けもお預けだな」

「まるはきょーちんと一緒に気持ちよくなれるなら何でもいいんだよ」

恭介くんも一緒にみおちゃんの部屋に向かって歩いている帰り道、本当に他の人には絶対に聞かせられない会話だよ。

「わ、私は恭介くんが私たちの赤ちゃんが欲しいと思ってくれるなら本当はいつでもいいよ。でも私が短大を卒業するまでは待って欲しい……」

上目づかいで恭介くんにお願いする形になってしまった。恭介くんが真っ赤になって頷いている。

「まあそれはそれとして」「「「「今夜は寝かせないから」」」」「恭介さん」「恭介」「恭っち」「きょーちん」


この後、みおちゃんの部屋にみんなで帰って初めて恭介くんと5人全員相手にして貰いました。

 これって日記に書いていいのかなダメなのかなと思ったとか思わなかったとか。


 最終回っぽいですが、もうちょっとだけ、あとちょっとです。


 毎日18時に最新話公開中

 次回更新は10月8日です。

 最終回まであと4話!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る