第301話 私の孫があんなに優しく育ったのか不思議

 ミイラ取りがミイラになるって言葉があったが、これほどわかりやすくミイラになることがあるんだっていうのを目の前で見せつけられている気分。


 ひよりが今、一生懸命俺の下半身をそのぺったんこの胸でこすっている。乳首がコリコリあたると気持ちいいけど……

 どうしてこうなった~と思うが、理由は簡単。のどかがひよりに勝負を挑んで最近のどかとの勝負に燃えているひよりがあっさり引っかかった。

 いや、のどかにはひっかけた意識さえなかったかもしれない。


「ひよりも一緒にお風呂に入ればいいんだよ。どっちがきょーちんをいっぱい気持ちよくできるか勝負なんだよ」

 おれとのどかが浴室で全裸で説教されて、それが一段落したタイミングでのどかがそう言いながらひよりを挑発してしまったのだ。最近競い合うことが多かった2人はあっさりと勝負を始めてしまった。

 俺とのどかの前で恥ずかしそうに道着の帯をほどいて脱いでいくひより。知っていたがぺたんこの胸をきちんとまっ白なブラで包んでいた。


「お、おかしいことはないだろう。私だって女子なんだからブラぐらいはつけるんだ」

 誰に向かって言い訳してるんだろうか?すべてを脱ぎ捨てた後、かかり湯をして先に湯船に戻っていた俺とのどかの隣に座る。

 ひよりとこうやってお風呂に入るのは2度目。1度目はひよりの気持ちに対してに断りを入れることになったあの竜王旗剣道大会に優勝した夜だった。


 なんとなくあの時を思い出して真っ赤になってしまう俺たち。あの後、陽菜の尽力で結局お互いを受け入れてしまったからあの時の断わり自体がちょっと恥ずかしい。

「むぅ、なんだか2人の間の空気が甘いんだよ。まるのことも見て欲しいんだよ」

 そう言って無理矢理俺に抱きついてキスしてくるのどか。


 飼い主の意識が他に行ってるから嫉妬しているネコみたい。のどかのわずかな膨らみに興奮してしまう。そのままキスをして胸を揉んでという流れを湯船でしていたところ、次は自分の番だと浴槽から板張りの床に寝かされてひよりから下半身を刺激される流れになってしまった。


 のどかも湯船を出て俺にキスしてくれる。

「ひより、どっちが早くきょーちんをイカせるか勝負なんだよ」

「し、しかし、我が家にはなどないぞ……どうするつもりだ?」

 ひよりが焦っている。のどかも何も考えてないんだろうな~

 俺のカバンにコンドームが入っていることを告げるとひよりが脱衣所まで取りに行ってくれる。


「恭介はなぜを準備してきているのだ?」

「陽菜がひよりの道場に置いておいた方がいいんじゃないかって……『ひよりちゃんって子種子種って言ってるから恭介くんの自衛のためにコンドームをひよりちゃんの家にも置いておいたら』って言われて」

 ひよりががっくりと四つん這いになるように手をついてうなだれている。う~ん、その体勢になってもおっぱいの存在が確認できないんだよなぁ……後でむにゅぅって揉んで成長を促してあげよう。


「私の名誉のために……陽菜ちゃんと恭介と話し合ってからじゃないと種付けのお願いはしないと伝えておいてくれ」

「分かった……ごめんな、陽菜もちょっと心配性なところがあるから」

「コンドームがあるんだったら早速まるから始めるんだよ」


 その後は体を動かすことに関して才能がある2人が代わる代わるで俺にのしかかって大変でした。

「まるなら5分できょーちんを気持ちよくできるんだよ」

「のどかがそういうなら私は4分だ。ほら、恭介の気持ちよさそうな顔を見てみろ」

 やっぱり武道とか運動やってるからかなぁ……しかも動きの切れが良すぎるんだよなぁ……


 みおを相手にする時の煽情的な繋がりとも陽菜を相手にしてる時の安心を伴う興奮ともしずくを相手にしてる時の不思議な一体感ともちがう、本当にあっという間に暴発させられちゃう感じ。

 2人で相手ライバルの動きを観察しては腰の振り方とか動きを研究してるんだと思う。

 これがこの2人の最近の勝負による向上心の成果なんだろうか……今まで自分のことを早漏じゃないと思っていたけどちょっと自信がなくなる一日でした。


 夕方にはのどかを連れて電車に乗って帰る。本当に搾り取られたって感じで夕日が眩しい。のどかは疲れたのか俺の肩にもたれるように寝ている。

 寝顔は天使なんだけど……う~ん、こっちからも責めないと今日みたいなやり方していたら体がもたない。


 翌日みんなでのどかのブラを買いに行く陽菜を見送りましたとさ。




 そして1人残された俺が何をしていたのかというと、琴乃刀自に呼び出されて西園寺グループの本社ビル、会長室に隣接した応接室に招待されていた。

 座るだけで高級なことが伝わってくるソファ、歩いても全く足音が立たない絨毯、見たこともない立派な観葉植物、そして調度品の数々。


 一介の高校生がこんなところに連れ込まれて緊張するなという方が無理だろう。

「そんなに緊張するもんじゃないよ。とって喰おうっていうんじゃないんだから」

 う~ん、見た目は上品なおばあさんなのに本当にとって喰われそうだから緊張してるんだけどね。


「ご無沙汰しています。陽菜が謎解きした極門島の顛末についても陽菜本人が琴乃さんと話したがっていました」

「ああ、あの謎を解いたのはあの子で3人目さね。私と私の娘でしずくの母の静香と、そして陽菜という娘で3人目。しずくよりも先にあの子に解かれたというのは想定外だが人生というのは想定していないことがあるから面白いもんだね」

 やっぱり琴乃刀自は謎解きしたうえであのパエリア鍋を準備していたんだな。それにしても謎を解いたもう1人が俺も何度か会ったことがあるしずくのお母さんだったとは。


「ところでお前さんも聞いていると思うがしずくが医者になりたいと私のところに言ってきた。あの子は大人しいところがあるから経営や交渉に向いてないと思っていたら、なかなかどうして医者になりたいという意思については硬い意志でしっかりと私を説得してくるじゃないか。

 文字通り一皮むけて大人になったように思うが何か心当たりはないかい?」

 う~ん、全部分かって聞いてるんだろうなぁ……誤魔化すだけ無駄ってやつだろう。


「しずくさんのことを抱いて女にしました。俺はしずくさんのことが大好きでずっと一緒にいたいと思っています」

「ほう……それはしずくの婿になるってことかい?」

「いえ、未来永劫そうならないとは言い切れませんが俺は姫川陽菜と結婚します。これは小学生からの約束ですから裏切ることはできません。しずくさんには俺と陽菜の一番傍にいて欲しいと思っています」


 2人の間に沈黙がおちる。そうだろうな、この世界で男が複数の女性を侍らすなんて構図は普通にはあり得ない。

「しずくにも子を産ませるつもりはあるのかい? 考えてみると私も爺さんが早くに亡くなってからは何人か男を囲ったもんだが、男の方に性欲があるなら女を何人も侍らすのは子を作るという目的からしたら合理的な気がするねぇ」

 元の世界の大奥や後宮というのはまさしくそういう跡継ぎの育成システムだしな。


「しずくさんが俺との子供を望んでくれるなら。もちろん認知もしますし一緒に子育てするつもりです」

「そんなことが出来ると思っているのかい?」

「俺と陽菜、それにしずくとひよりとみおとまるなら出来ると思っています。いや、やってみせます。全員幸せにしてみせますから見守っていただければと思います」

 しばらく黙り込んだ琴乃刀自がニヤリと笑う。


「フフフフ……しずくと全く同じ答えか。お前たちの本気が伝わってくるな。しずくの独り相撲でお前の方がしずくのことをなんとも思っていないんだったら反対するつもりだった……だからこそお前の話を聞きたかったんだよ」

 しずくも医者になるって強い意志を見せたって言っていたしその時にこういう会話になったのかもな。


「しずく自身が選んだ道だ。認めてやりたいがその道で不幸になるというのならその時は私も我慢できないかもしれないぞ」

「今はまだ若輩者で信用できないと思いますが、必ず幸せになったしずくをお見せします」

「しずくには西園寺グループの後継者になれるようにと教育を施してきたつもりだったんだがな。どうにもあの子は優しすぎる。どうして私の孫があんなに優しく育ったのか不思議だと思わないか?」


 思わずうなずきそうになる……って、あぶねぇ~、ここで頷いたら琴乃刀自が優しくないって言ってるみたいじゃないか。

「しずくさんの強さは友達や仲間を守るために発揮される優しさです。競争には向いていないんでしょうね」

「だったら私が何を考えているか分かるかい?」

 流石になにを考えているか分からない。


「多々良恭介、お前が将来的に西園寺グループを引き継ぐことを考えてみるのはどうだい? お前の思考力、行動力、胆力は正直男にしておくのが惜しいくらいだ。どうやったらお前のような男を育てることが出来るのか、今度お前の母親と話をしてみようかのぅ」

 俺が西園寺グループを……そこまで見込んでくれたのは嬉しいが流石にスケールが大きすぎて今すぐに返事は出来そうにない。

 あと、母さんに聞くのはやめてあげて。俺が貞操逆転してる別の世界から来ちゃっただけだから。


「それは考えさせ下さい。でも必要とあらば……俺が出来ることをするのはやぶさかではありません」

「今はその答えで十分だよ。大学に関しては経営について学んでおいてもらえると助かるがの。あとひ孫の顔は早めに見せてくれよ。老い先短いババァの最後の願いと思っておくれ」


 あと20年くらい亡くなりそうにないけど、琴乃刀自に理解して貰えるとは思っていなかった。当たって砕ける覚悟で俺より先に話をしてくれたしずくの勇気と頑張りに感謝しようと思う。

 -----------------------------------------------

 ちょっとした小話


「ええ!? 恭介の育て方ですか? う~ん、私じゃなくてもう一人の私に聞いた方がいいんじゃないかしら。

 そうですよ。私が育てた恭介はごく普通の男の子ですから。え!? 今の恭介? あれは真冬の川をどんぶらこっこどんぶらこっこって流れて来た恭介なんです。

 あら、そんなに恭介のことを評価して下さるんですね。エッチなばっかりで本当に困った子ですけど、琴乃さんみたいな立派な方に評価していただけるなんて嬉しいです。

 そうですね。あれは橋の下で拾ったみたいなものですから。あ、しずくちゃんと……そうそう、いつも恭介がお世話になっています。

 本当、しずくちゃんみたいな可愛い女の子が一緒にいてくれるんですから恭介は果報者ですよ。

 まあ、西園寺グループで……川に流しても壊れないような子ですから安心してこき使ってやってください」


 恭介ママ(日奈子)を訪ねて話を聞いた帰り道、車中の琴乃刀自の頭の上にはクエスチョンマークが20個くらい浮かんでいたとか浮かんでいなかったとか。


 毎日18時に最新話公開中

 次回更新は10月7日です。

 最終回まであと5話!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る