第288話 旅行中はみんなに見られないように(陽菜視点)

 バーベキューの片付けもそこそこにみんなで花火を楽しんで、男子の入浴時間ということで恭介くんたちがお風呂に入りに行った。

 恭介くんとゆうきくんの2人だけだから時間はあんまり取っていないんだけど恭介くんははあんまり長風呂しないから問題ないとおもう。一緒に入ると思ったらちょっとだけもやっとするけど男同士だもんね。恭介くんにはゆうきくんとの距離感についてちゃんと言って聞かせたし。


 と思っていたらちょっとしたトラブルが発生。ゆうかちゃんが部長のみおちゃんとさんご先輩にガチ説教を食らっているけど自業自得だから仕方ない。一応光画部の合宿扱いだもんね……まんがとかアニメのノリでワンチャン異性のお風呂を……っていうのは分からないでもないけどアウトだよね。もちろん貞操逆転世界だから覗くのは女子が男子風呂を覗くんだけど。

 わ、私はそんなことしないよ。恭介くんとは一緒に入ろうって言えばいつでも一緒にお風呂に入れるんだし。




「悪いな、陽菜にまで付き合って貰って。今日は忙しかっただろうからしっかり休んで欲しいのに」

「一杯だけなんでしょ? ちさと先生もちょっと心配だし私もついていくよ」

 お風呂から上がった恭介くんが約束をしたとかで先生たちにお酌しに行くそうだ。私もついていくことにする。


「さっきはゴメンね、多々良くん。ちさとも反省してるから一杯だけカクテルを作ってあげて。レシピの通りに作ってくれればそれでいいから」

 みなもさんにお願いされて恭介くんがちさと先生にカクテルを作っている。いつぞやは疑似精液フェイクザーメン作りの時にバーテンダーさんっぽかったけど、今日は純粋にシェイカーを振る恭介くんがカッコイイ。


 恭介くんが3人に付き合って少しお酌をしてからあさかさんに見送られて私たちは部屋に戻る。

「ありがとうね、恭介君に陽菜ちゃん。明日にはちゃんといつものちさとちゃんに戻ると思うから心配しないで」

 ちさと先生大丈夫なのかな。恭介くんはめちゃくちゃウザがらみされていたし私は「幸せになるんだぞ、もし多々良に不満があったりしたらすぐに言うんだぞ」って何度も念押しされた。


 今回青猫館の部屋は全部で10部屋だから誰かが2人部屋にしないとって思ってたけどちさと先生とみなもさんは朝まで談話室で飲むから部屋がいらないということになって一応1人1部屋になっている。

 朝まで飲んで大丈夫かなって思うけど、実際看護師のあさかさんさえしっかりしてくれていれば日中は問題ないと思うんだけどね。




 恭介くんが私の部屋に寄ってくれて私をベッドに寝かしつけてからトントンってしてくれる。

 えっと、っていうのはお布団の上とかから最後にこれでいいかなって感じでポンポンと叩いて確認してくれるのだ。今の時期はタオルケットとか薄手の毛布だからあんまりトントン感はないけど。


「おやすみなさい、恭介くん。また明日ね」

「じゃあおやすみ陽菜。愛してるよ。明日も楽しい一日にしようね」


 ちゅっ


 横になっている私に軽く触れるだけのキスしてくれて恭介くんが部屋を出て外から鍵をかけてくれる。鍵を恭介くんに預けてあるけどこれは恭介くんが鍵をかけたいって言ったから。このメンバーなら鍵なんて必要ないって思うけどね。

 旅行中はエッチしないって約束だし、まだ生理がちょっと終わってないけど寂しいなって思っちゃうのは仕方ないよね。

 やっぱり疲れていたんだと思う。私の意識はあっさりと島の夜にとけていった。




 朝早起きして昨日の夜書けなかった日記を書く。時間がないから箇条書きみたいになっちゃうけどこれで後から全部思い出せると思う。昨日はそのぐらい楽しかったから。

 あ、あのエントランスにあった暗号文? も書きとめておこう。


 日記を書き終わってキッチンまで下りると恭介くんとひよりちゃんがサラダをつくったりスープをかき混ぜたりしながら朝食の準備をしていた。

 この2人は早起きだしお料理も出来るから皆の分を準備してくれていたみたい。

「おはよう、2人とも早いね。いい匂いしてるね、私も朝食の準備手伝うよ」

「おはよう。じゃあ陽菜はパンの準備をお願い」

「おはよう陽菜ちゃん。恭介、人が増えたから私は和食の準備をしてしまおうと思う。炊飯器はもう炊けるから、シジミの味噌汁をつくるとしよう」


 今の私はTシャツに短パンっていう格好だからエプロンを借りてフランスパンをカットする。う~ん、食材として準備されてるのがフランスパンっていうのがすでにおしゃれだよ。

 恭介くんとすれ違い際に手首をキュッて握って朝のキスをおねだりしちゃう。

 旅行中はみんなに見られないようにこっそりと……準備してないからついばむような軽いキス。


 チュッ      クンクン……


 ついでに首筋の匂いを嗅いでみるけどエッチしたような気配はしない。あ、信じてないわけじゃないよ。こういう時に嘘をついて誰かとこっそりエッチするような恭介くんじゃないから。

 う、疑ってないからね。ひよりちゃんと早起きエッチしたんじゃないかとか本当に疑ってないから。


 みんながバラバラと起きてきて食堂で朝食を食べてから談話室でくつろいだりしてるけど、談話室の端っこにはビールや酒ビンとともにゾンビみたいに倒れ込むようにソファで寝ているちさと先生とみなもさんがいた。

 看護師のあさかさんは適当なところで切り上げて部屋で寝たみたい。ちゃんと起きてきて恭介くんの作ったサラダを食べてる。


「谷垣先生、起きて下さい。朝ごはんが出来てますよ」

「姫川ぁ~……多々良ハーレムに…」

 ゲシッ

 後ろからみなもさんがちさと先生に一撃入れている。

「姫川さん、気にしなくていいからね。まだ酔ってるだけだから。クンクン、いい匂いね。ひょっとしてシジミのお味噌?」

「はい、ひよりちゃんと恭介くんが朝食を作ってくれて。二日酔いにいいらしいから持っていってあげてくれって」

 談話室に転がっていた2人にお盆に乗ったシジミのお味噌汁のお椀とお箸を渡す。


「うう、私の生徒は最高だぁ。多々良の味がしゅるぅ」

「姫川さん、コイツの言ってることは全部無視していいからね。こら、ちさと、昨日は卒業までちゃんと先生するって誓ったでしょ!」

 う~ん、シジミのお味噌汁を作ったのはひよりちゃんなんだけど言いにくい雰囲気。

 それにしても夜10時まで飲んじゃダメって言ったせいで逆に朝ギリギリまで飲んでるんじゃ本末転倒な気がする。後でしずくちゃんと恭介くんと相談しておこう。


 私はせっかくなので恭介くんとお揃いで和食風にして貰ってごはんとみそ汁とお豆腐、それに卵焼きをつけて貰う。恭介くんは目玉焼きにしたみたい。

 3人で作ってるから調理さえ済ませておけば12人前ならあっという間によそえてしまう。

 しずくちゃんが私たちを待っていてくれたのでしずくちゃんと4人でいただきますする。


 4人の中ではしずくちゃんだけ洋食を選んでいて、私たち3人は和食。

 ご飯を食べながら今日の予定を会話。恭介くんたちは光画部で風景の写真を含めて撮りながらせっかくなので水着撮影会も続ける。背景と光が変わるとまた被写体と写真の雰囲気も変わるからってことらしい。


 私とひよりちゃんはしずくちゃんとまるちゃんに教えて貰いながら磯釣りにチャレンジする予定。

 グレとかチヌとかシーバス(スズキ)とかが釣れるんだって。たまにマダイが釣れることもあるらしい。

 小さい頃に近くの遊園地にあった釣り堀で釣りをしたことがあるくらいで、こんな本格的な釣りをするのは初めてだからワクワクする。


 釣れたら恭介くんにお刺身を作ってあげよう。私はお刺身はダメだから煮魚でも作ろうかな?

 朝ご飯を食べたばっかりなのに食欲がわいてきそう。頑張るぞっと。

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ちょっとした小話

 

(ゆうきもうお風呂に入っているんだ。ゆうきと入るなんて……あの宿泊研修でも一緒の風呂には入らなかったし。ちょっとドキドキするな)

カラカラカラカラッ

恭介「ゆうき……入るぞ。ああ、もう湯船に浸かってるんだ。湯加減はどう?」

ゆうき「……」

(あれ? 返事がない。昼のこともあったし緊張してるのかな? まあとりあえずかかり湯して軽く体を洗ってから湯船に浸かろう)

恭介「流石に真水が貴重な環境だし、温泉を掘ってるわけでもないから湯船は小さめなんだな、じゃあとなり失礼するぞ」(ちゃぷん)

ゆうき「……」

恭介「なんで黙ってるんだよ、さっきの今で気にしてるのか? 大丈夫、俺たちの友情は変わらないからこっちを向いてくれよ」

ゆうき?「多々良先輩ってやっぱりいい体してますね」

恭介「ちょっと待てッ! その声、その小ぶりだけどモミごたえのありそうな胸! お前村上(妹)か?」

ゆうき改めゆうか「ふふふ、ある時は可愛い後輩、ある時は水着撮影のスーパーモデル。そしてその実態は……多々良先輩のヌードをいただきに来た怪人ゆうかちゃんなのです。この時のために旅行前から髪型まで変えていつでもお兄ちゃんに成りすませるように準備してきました」

恭介「髪まで切ってバカなの!? 防水だからって風呂場にスマホを持ち込むやつがあるか! しかもムービーだと!? 小悪魔タイプだと思ったらただの変態、怪人じゃなくて変人ゆうかの間違いだろ」

ゆうか「ひどいです。私だって多々良先輩の乳首とおちんちんを撮りたいんですぅ!!」

恭介「そんなことしたら村上のことを嫌いになるぞ! それよりもゆうきはどうした?」

ゆうか「多々良先輩が大事な話があるから部屋で待っててくれと言ってるって伝言したから今頃真っ赤な顔して部屋で待ってますよ~」

恭介「ゆうきにまで酷いことをして! もう怒ったから、いたずらっ子にはお尻ぺんぺんだ!」


この後、ふんづかまえてお尻ぺんぺんしてからみおとさんご先輩に引き渡した。

村上は真っ赤なお尻のまま泣くほど叱られたとかなかったとか。




作者の独り言 せっかくの双子(じゃないけど)入れ替えトリックがこんな無駄なことに使われるなんて……


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 次回更新は9月25日です。

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