第287話 常識じゃありえないことだしとんでもなく大変
色んな波乱含みではあったが写真撮影も無事終了。俺としてはゆうきとの約束も果たせたし、別の世界から入れ替わってきた人間だという告白をゆうきにも出来た。
ずっと懸案事項だった2つのことが解決してこれからはゆうきを親友として心置きなく付き合っていくことが出来る。
ずいぶん前にみおに「ゆうきは前の多々良恭介のことも好きだったみたいだけど惚れ直したって感じ」と言われたことがあったが今回のことで本当に好かれてるんだなって実感できた。
ゆうきとの距離はずっと親友として続いていけばいいと思う。
「恭介くん、ちゃんと食べてる?」
炭を
別荘の庭でのバーベキューなので虫よけもかねてみんな薄手の長袖長ズボンだ。まるとひよりは学校のジャージ。
陽菜の手には俺が焼いたバーベキュー串が二本も握られていて嬉しそうに食べてくれている。
陽菜とは小さい頃に家の庭でバーベキューしたことくらいならあるけど、こうやって海のそばの別荘でバーベキューなんてお互い初めてだもんね。
美味しくて零れる笑顔が可愛い。
「ああ、焼きながら結構食べてるよ。こっちの串がそろそろいい感じだから。
お~い、ひより~。こっちの串、さっき頼まれたエビが入ったやつ焼けてるぞ~」
ひよりに声をかけて焼きあがった串を渡してやる。
「ありがとう恭介。ばーべきゅーというのも初めてだが楽しいものなのだな。恭介と出会ってから楽しいことばかりだ」
それは良かった。とにかくバーベキューは火加減が大事。そして陽菜には食材(とくに肉と魚介類)にしっかりと火が通ってることが大事。
男だからとかそういうことは関係なしに陽菜のために肉を焼けるバーベキューコンロの前は俺の場所だと思う。
長方形のコンロの中に炭を入れているが右側は炭をガンガンに燃やして強火で、左は
「恭介さん、陽菜ちゃんと作ったパエリアを食べて貰える~? その間、バーベキューの焼き加減はまるちゃんに任せておけばいいから」
少し離れたパエリア鍋の前に陣取っていたしずくから呼ばれる。
「まるに任せるんだよ。くるくる回すのは得意なんだよ」
あんまりくるくるしすぎて脂を落としすぎないようにな。
陽菜としずくで作ったというパエリアはサフランライスの鮮やかな黄色とエビやムール貝といった魚介が盛りだくさんで直径が50㎝くらいありそうな銅のフライパンの中は凄く華やかだった。
「恭っちも食べなよ。凄く美味しいから、ハフハフ」
アツアツのパエリアを食べながら話しかけてくるみお。皆美味しいものを前に幸せそうだ。
「多々良先輩、本当に私光画部に入ってよかったです。お兄ちゃんから多々良先輩の話を聞いてそんな人いるわけないじゃんって半信半疑でこの部に入ったんですけど本当にそのおかげで凄く楽しいです。ありがとうございます」
美味しいものを食べると素直になるよね。こっちこそ村上のおかげでゆうきとの写真がすごく良いものになったからありがとうだよ。
「きょーすけ、僕も手伝うことがあったら何でもするから言ってね。僕はきょーすけの親友なんだから」
ありがとう。ゆうきとの仲がこじれることがなくて本当に良かった。
「多々良くん、飲み物入ってる? ウーロン茶だったらすぐ注げるけど」
気の利くさんご先輩が俺のカップが空になっているのを見て注ぎに来てくれる。ありがたい。
「ん~、多々良くんのおかげで部活の最後に最高の思い出が出来ちゃった。本当に光画部に戻って来てくれてありがとう」
さんご先輩、写真のことが何も分からない俺に一から写真を教えてくれてありがとうございます。この世界の多々良恭介も光画部のことを好きだったんだと思います。
大好きな人たちに囲まれて最高の夏休みだなぁって思っていると少し離れたところで静かに飲んでいた大人組から声がかかった。
「お~い、多々良~ちょっとこっちに来てもらってもイイ?」
「は~い、今行きま~す」
ちさと先生の声、一応部活の引率という建前(?)なので、午後10時からアルコール解禁だから今はみんなで俺が焼いた串とパエリアを肴にのんびり語らっていたらしい。
「先生達って本当に仲いいですよね。ああ、ありがとうございます」
ちさと先生の前の椅子を勧めて貰ったので座るとノンアルコールのビールを俺のカップに注いでくる。
「多々良もちょっと飲んで。大丈夫、ノンアルビールだから。ほら……」
「とととととっ……って俺ノンアルでもビールなんて飲んだことないですよ」
「じゃあ、多々良のビール童貞はアタシが貰ったってことで」
ノンアルコールで酔ってるんじゃないだろうな?
まあいいや、せっかく注いで貰ったんだし飲んでみよう。
ゴクゴクゴクッ……うぇぇ……
なんでこれでプハァッとか言っちゃって美味しそうに飲めるの?
「あはは、マズいか? これが大人の味だ。大人の味は苦いんだよ……ところで多々良、少しだけ真面目な話をしてもいいか?」
「えっ? 何の話ですか?」
後ろのみなもさんもあさかさんも少し真剣。
「多々良、お前姫川とセックスしたんだろ。それなのにこの前までと
私は今日の朝そのことにちょっとショックを受けて運転が出来なくてみなもに迷惑をかけたんだけど……正直に答えて欲しいんだ。
多々良はここに来ているメンバーの中で何人とセックスしているんだ?」
表情を見る。すごく真剣な目……セクハラや冗談の類じゃないことぐらい俺にもわかる。他のみんなに聞かれないように俺だけを呼んだのもそのためだろう。
「5人です。陽菜、しずく、ひより、みお、のどかの5人。俺はみんなと家族になるつもりで本気愛してます」
ちさと先生の手が俺のTシャツの首のところを掴み、引き寄せられる。
「私は言ったよな? 『恋人とセックスしても避妊してれば問題ない。ただし浮気とか二股はやめろ』って。それに剣道大会の帰り道で『小烏のこと大丈夫か? 多々良はいい加減なことをしないと思うけど困ったら相談しろ』って言ったよな?」
忘れるはずがない。相談できなかったのは俺が別の世界からの入れ替わりっていう特殊な理由があるからだけど……
「私がそういう話をしたのは多々良には女の子を傷つけて欲しくなかったからだ。お前がいい加減なことをして5股もかけて……もしもバレたときに彼女たちがどれだけ傷つくかを考えたことがあるのか」
先生の手にさらに力が籠められる……く、くるしぃ。
「ち、ちさと先生……5股をかけてるっていうのは事実なんで言い訳する気もないですけど、陽菜たちはそれぞれみんな、俺が5人とセックスしてるのを知っています。
その上で俺のそばにいることを望んでくれて将来家族になろうと約束しています」
「は、はぁ!? 浮気とか他の子に隠れてセックスしてるとかじゃないの?」
「え、えっと……すみません。陽菜の前では他の女の子全員とセックスする所を見せちゃってます」
ちさと先生の顔が真っ赤だ。胸倉を掴んでいる手から力がすっかり抜けている。
本当にハレンチな教え子でごめんなさい。常識で考えてそんなことありえないですもんね。エロマンガじゃないんだからこの世界の男子が複数の女の子を相手にしてるとか。
隙をついて先生の手を握る。
「信じて下さい。信じられないかもしれないですけど俺は覚悟を決めたんです。みんなのことを一生幸せにするって。
常識じゃありえないことだしとんでもなく大変な道だと思いますけど、それでもそれが陽菜の望みで俺自身が選んだ道だから」
「一生……幸せ……」
ちさと先生が真っ赤になって頭から湯気が出そうになっているのを見てみなもさんが助け舟を出してくれた。
「それじゃあ、今はちゃんと避妊もしているしきちんとみんなの将来も考えてるってことでいいのね? そして女の子たちもそれを望んでいて納得していると」
「はい、俺の言葉が信用できなかったら後で1人ずつ呼び出して確認して貰ってもいいです。俺たちは本気ですから」
「はぁ、ちさとはね……今日一日ずっと心配していたの。多々良くんを学校から
聞いてるんだよね? 性欲過多で誰かれかまわず手を出しちゃう男の子のせいで学校が崩壊しちゃった話。多々良くんがあんな風になったらもう多々良くんに会えなくなっちゃうかもってちさとは心配してたのよね」
「そうそう、女の子の心配してるって口では言ってるけど、最終的には恭介君の心配までしちゃうところがちさとちゃんなのよね。心配だけじゃないかもしれないけど……フフフ」
あさかさんまで……だけど3人には信じて貰えたらしい。
「えっと……それってさ……募集してないの? 6に
「こら、ちさと!!」「ちさとちゃん!?」
ウルウルした目で俺を見つめるちさと先生が他の大人2人に口を押さえられて両腕を掴まれてどこかへ連行される。募集ってなに?
「あ、多々良くん。私たち10時過ぎたら青猫館の談話室で大人の飲み会するから良かったらちょっとでいいから顔出してよ。お昼はせっかくお酌して貰ったけどノンアルだったし。一杯だけでいいから……ね」
え、ああ、イイですけど。バーベキューの後俺たちは花火をしてそれからお風呂に入ったらちょうど10時くらいかな?
ここまで協力して貰ったんだから少しくらいはサービスしてもいいよね。ちゃんと陽菜に報告してからお酌しに行こう。
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これで告げるべき人に告げるべきことを、報告するべき人に報告するべきことが一通り済みました。この旅行の目的半分達成です。
さんご先輩とゆうか、大人組には入れ替わりの話はしません。入れ替わりの話をする相手はゆうきで打ち止めです。
入れ替わりの話はしませんが、この後将来について相談しないといけないのが琴乃刀自と他のみんなの両親です。
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次回更新は9月24日です。
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