第284話 ひょっとしてあれってパエリア鍋?(陽菜視点)
「いや~、いい写真が撮れたわ」
みんなで恭介くんの水着撮影会をしていたら乳首撮影会になっていた。何を言っているか分からないかもしれないけど私にも分からない。みおちゃんがすごく満足そう。
みおちゃんに騙されたって言ってしまえばそれまでだけど、恭介くんの乳首撮影の一端を担わされてしまった。
謀ったなみおちゃん!
もっとも恭介くんはそんなみおちゃんとしずくちゃんの頑張りに対して「言ってくれれば見せてあげるのに」くらいしか思ってないのはよく分かる。多分エッチしてる時の恭介くんをハメ撮り? っていうのをみおちゃんがしたいって言ったらさせちゃうと思う。もちろん私が許さないけど。
「もう、そんな写真ばっかり撮ったらダメだよ、みおちゃん。恭介くんも流出とか危険があるんだからホイホイ撮らせたらダメだよ」
ある意味では恭介くんは緩くてハレンチな男子だ。貞操逆転世界から来てるから仕方ないんだろうけど。って、元の世界を貞操逆転世界って呼んじゃったよ。しずくちゃんと同人誌を作ったせいで頭が切り替わってないなぁ。
「う~ん、みおってその辺は自分で楽しむだけって言うかちゃんとしてるから大丈夫だと思うよ。それに俺の乳首ならいくら見られても……」
「もう、恭介くんのそういう所だよ。もっと自分が男子だっていう自覚をもってこの世界を生きないと。ほら、あっちのゆうかちゃんだってあれだけ興奮してるんだし」
ゆうきくんの妹のゆうかちゃんが鼻血を垂らしながら写真を撮ってる。
「た、多々良先輩……私にも、私にも乳首の写真を撮らせてください。安〇先生……乳首が撮りたいです」
もう、恭介くんが1人に撮らせたらみんなが撮りたいってなっちゃうから。後でお説教します。
その後、恭介くんにたくさん写真を撮ってもらって青猫館に戻ってくる。恭介くんが写真を撮るときの真剣なまなざしがカッコ良すぎて他の人に向けて欲しくないなって思っちゃうほど。
いっぱいポーズを指示されてたくさん写真を撮られちゃった。恥ずかしかったしひょっとしたら後で恭介くんのオカズにされちゃうのかもって思ったらドキドキしちゃう。
うう……エッチまでしたのにこういうのが恥ずかしいのは変わらないみたい。
「歩きで戻ってきたけど疲れちゃってない? 陽菜ちゃん先にシャワーを浴びなよ」
しずくちゃんが言ってくれるが私は水着のままで青猫館のエントランスで足を止めていた。入り口から入ってすぐの壁に大きな額で達筆の書が飾られていた。
じしゃうのはりあな
ろうそくとおし
やたのさきをのべてみよ
まるつきのよにたからあり
「しずくちゃん、これって?」
「ああ、それはね、同じ文章が赤猫館(旧館)に飾られてるんだけど、青猫館にも欲しいってことで琴乃おばあちゃんが
暗号文っぽくてカッコいい。『孤島の鬼』とか『マスグレーブ家の議定書』みたい。それにしても宝とか書いてあるけど……
「この文章をあとで文面を日記に書いてもいい? それと宝ってこの島って何かいわれがあるの?」
「陽菜ちゃんは村上水軍って知ってる? そう、戦国時代に瀬戸内海を支配していたって言われるあの村上水軍。そのうちの因島村上家が拠点の一つとして潮待ちの島として使っていたっていうのがこの島の歴史ね。その村上水軍の宝が隠されてるって伝説があったの」
村上水軍の宝があるかもってこと!? 宝探しミッションなの?
もう一度額の中の文面を眺める。確かに「宝あり」って最後に書いてあるし。
じしゃう? やた? のべて? う~ん、古語なのかな?
「はりあな」と「ろうそく」はこの島を前提にするなら……
私がブツブツ言いながら考えているとしずくちゃんから「陽菜ちゃん、シャワー」と促される。
「うん、分かったよ。しずくちゃんも一緒にシャワーしようよ。お湯がもったいないでしょ?」
そういうと2人で一緒にシャワーをした。雨水をろ過しているって言っていたけど最後に次亜塩素酸水の生成器から作ったというお水をかかってからシャワー室を出る。
しずくちゃんってひょっとして私が来るから除菌と抗ウイルス用に施設を一ランクアップしてない?
じっとしずくちゃんの顔を見るとちょっとバツが悪そうな顔をしている。
「ひょっとしてバレちゃった? 気を使わせないようにしようと思ってたんだけど、安心させてあげたくて説明しちゃったら恩着せがましいよね。ゴメンね」
「もう、恩着せがましいとかないから。私の体のことを気遣ってくれて嬉しいよ。これなら安心してまた遊びにこれるなって思っちゃったくらいだよ」
「うん、陽菜ちゃんにはずっと一緒にここを使って貰えればって思って。もちろん恭介さんも一緒に」
しずくちゃんの気持ちが嬉しい。私の主治医になるとまで言ってくれた親友。一生付き合っていける友人が私にできるなんて嘘みたいだ。
その後は2人でバーベキューの準備。って言っても牛肉や野菜、魚介といった食材を切っては串にさして冷蔵庫で保管していくだけの作業なんだけど。
流石に12人もいてほとんどが食べ盛りの高校生となると食材の量もかなりのものになる。
キッチンはアイランドキッチンになっていて本当に青猫館が最近作られたのが分かる。
よく見ると壁に大きな銅のフライパン? がかかっていた。直径50㎝くらいで取っ手が二つ付いてる。
「しずくちゃん、ひょっとしてあれってパエリア鍋? 銅で出来たでっかいフライパンみたいなやつ」
「あ、そうだよ。お米もサフランもあるし、食材の一部は冷凍庫にあるはずだから作ろうと思えば作れるよ」
「パエリアって作ったことがないからやってみたい。アクアパッツアなら作ったことがあるけど……」
「じゃあ作っちゃいましょうか。意外と簡単だし……えっと、大きいアルミホイルがあったと思うからあれを使えば大丈夫。
陽菜ちゃん、アクアパッツァはイタリアの料理で、パエリアはスペイン料理なんだよ。知ってた?」
「そうなんだ。知らなかったよ。なんとなくイタリアとかラテンっぽい明るいイメージの食べ物だとは思ったけどね」
「うん、温暖な気候が産んだ食べ物って感じがするよね。陽菜ちゃんと料理すると料理してるだけでも楽しいね」
「うん、私も楽しい。ひよりちゃんも和食ならすごく色々知ってて私は教えられてばかりだよ」
「みんなでいろんな料理を覚えて恭介さんを喜ばせてあげようね。なんだっけ? さちえさんのいつも言ってる格言?」
「え? ああ、ひょっとして『男を捕まえるのは胃袋から。まずは餌付けしてから兵糧攻めよ』って言葉のこと? よく言ってるけど胃袋を捕まえてから兵糧攻めが私には今でも分からないよ」
でも、恭介くんは結局お弁当で落としたような気がする。気のせいだろうか?
「今日も美味しいバーベキューとパエリアで恭介さんを虜にしちゃいましょう。パエリアのレシピはこっちのタブレットに出したからこれを参考にすればいいとして……陽菜ちゃんお米を測ってくれる?」
2人でどんどん夕食の準備を進めていく。
私がアウトドアっぽいバーベキューが出来る日が来るなんて思わなかった。
楽しくて仕方ない。
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次回更新は9月21日です。
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