第275話 担任のちさと先生に臨時顧問をお願いした
夜になってラインのグループ通話を使ってみんなで繋がった。俺と陽菜は俺のスマホを2人で覗き込むようにスピーカーからの声を聞いている。
『水臭いんだよ、師匠もきょーちんも!』
『そうだぞ、恭介。本当に
『陽菜っちがどう考えてるかがあーしもよく分かったから。2人きりでエッチしていいなんて旅行前からなにかあるんだとは思ってはいたんだけどね』
それぞれがしずくから聞かされた陽菜の考えを受けて俺たちに告げてくる。
少なくとも誰も陽菜に怒っていない。そのことにちょっとホッとする。
現時点では俺から見たら彼女公認で他の女の子とも
俺が世界との繋がりを必要としていた間の緊急避難として
『まるはこれから先もずーっときょーちんといたいってもう言ったんだよ。まるは本気だから嘘なんてつかないし。それに師匠にも長生きしてほしいんだよ。ずーっと一緒にいたいんだよ」
『今回のインターハイで恭介のことを快く送り出す陽菜ちゃんを見て思い知らされてしまったよ。
自分は恭介のことを愛していてその気持ちは誰にも負けないと思っていたけど、今の時点では陽菜ちゃんには敵わないって。だが私はそういう意味では諦めの悪い女だから2人とも覚悟してくれ』
『あーしも
「うん……うん、ありがとうみんな。私、自分がワガママで身勝手すぎてこんなこと受け入れて貰えないって思ってた。それなのにこんな風に言って貰えるなんて」
『陽菜ちゃん。それもこれも陽菜ちゃんが世界で一番恭介さんのことを愛してるって、将来のことを考えてるってみんなが思えたからだよ。
私もそう、今の陽菜ちゃんみたいに実感を持って将来を考えたことなんてなかったから。でもみんなで陽菜ちゃんと家族になりたいって、ずっと一緒にいたいって思ってるのは本当だから』
「ありがとうしずくちゃん。しずくちゃんたちと友達でよかった。これも恭介くんが結び付けてくれた縁のおかげだね」
「どっちにしろ陽菜がいなかったら俺だけじゃこんな結びつき絶対作れなかったから。みんなで幸せになろう」
ちゅっ
軽く陽菜に口づけする。
『『『『あ~、キスした』』』』
『ズルいんだよ。まるもきょーちんとキスしたいんだよ』
『旅行中にいっぱいして貰ったとはいえ、聞こえよがしにキスされると嫉妬してしまうものだな』
『アハハ、恭っちと陽菜っちは本当に平常運転だね。あーしもみんなのマンネリ解消のために色々考えてみるわ』
『ちょっと、みおちゃん!? この人数でマンネリとかないからね。恭介さん相手に1人ずつ、2人ずつ、3人、4人、5人全員ってパターンだと31通りもあるのよ。
「ちょ、しずくの計算早すぎ。俺と1人でエッチしたいってムッツリ思考で考えてたんだろ。陽菜が引いてるぞ」
『きょ、恭介さん!? 私のことなんだと思ってるの? そもそも私とまるちゃんはまだ1回しかして貰ってないんだからもっと相手して欲しいし』
「しずくちゃん? この前から私抜きで恭介くんとエッチすることばっかり考えてない? 本当に怒っちゃうよ」
変な言い方だけど本当にみんな仲がいいと思うし今のままでも十分に幸せだ。
将来もこの幸せを続けていけるのか、陽菜が本当に幸せになれるのかは俺にかかってると思う。
それでもみんなと幸せでいられる今をめいいっぱい楽しみたいっていうのはわがままだろうか。
いつまでも続きそうなみんなとの話を明日が早いからと終えて眠りについた。
写真旅行中のルールとしては先生やゆうきたちがいるのでエッチな誘惑は禁止。
俺の方から誰かに手を出そうとしてたら陽菜に報告ということに決まった。相変わらず信用のない俺なのでした。
「いってきま~す」
陽菜が元気に声を上げて玄関を出る。今回の写真旅行は2泊3日。しずくの祖母である琴乃
学生側の参加者は光画部のメンバーでさんご先輩、みお部長、俺、村上ゆうかの4名。
モデルとしてゆうきと陽菜としずくにひより、そしてまるが参加することになっている。しずく本人が島と別荘の所有者の家族だから同伴するのはある程度当たり前として他はモデルとは名ばかりのバカンス目的のメンバーになっている。
まあ、緩い部活だし誰が咎めるわけでもないから……よく漫画とかだと生徒会から注意とか警告されたりするけどしずくがその生徒会長だからなぁ。
学校につくとひよりがすでに待っていて、駐車場に止めているちさと先生と話をしていた。ちさと先生が運転していく予定の西園寺グループの社用車であるハイエースもすでに止まっている。
「それにしても
「竜王旗での谷垣先生の
ちさと先生の冗談を真に受けてガチで返事をしているひよりの頭に後ろからチョップを入れておく。
「おはよう、ひより。ちさと先生の冗談を真に受けるな。逆に先生が困ってるから。
おはようございます、ちさと先生。今日はありがとうございます」
ちさと先生は光画部の顧問ではない。本当の顧問は産休を取られている。その先生は育休中に次の子供を身籠ってそのまま産休という流れでしばらく出て来られないので本当は別の顧問が立つべきなのだが、特に対外試合があるわけでもなく積極的な指導が必要な文化部でもない光画部は顧問不在のままで放置されていた。
というわけでみおと俺という光画部の現在の部長+副部長の担任のちさと先生に臨時顧問をお願いした次第。
俺たちをここから片道1時間の漁港まで運ぶだけでしずくの祖母の西園寺琴乃刀自の持つ別荘に2泊3日のご招待。滞在中はプライベートビーチで泳ぎ放題。夜はバーベキュー(料理上手の女子の手料理)、夜10時以降の生徒の就寝時間は飲酒OKという破格すぎる条件で一瞬でOKしたという。
しずくの交渉術の前にちさと先生では瞬殺だったんだろうなぁ。
校門の方から美女二人が歩いてくる。刑事の水元みなもさんと看護師の若山あさかさんだ。
昨日のみなもさんとの会話で気付いてたけど、やっぱりこの2人も一緒なんだ。
「あ、多々良くんも一緒だったの?無人島だから何か起こるような心配はしてないけど刑事の私がついてるから安心してね」
「恭介君、久しぶり。桜祭りでご家族と一緒にお花見して以来だね。皆さんの健康は3日間私が見守らせていただきますから」
そういいながらあさかさんが手に持った診療バックをこちらに見せてくる。ちょっとドジっ子属性のある白衣の天使だから絶対的な安心感はないけどやっぱり医療知識のある人ついていてくれるってなると頼もしいなぁ。刑事さんまでいるから安心感が違う。
琴乃刀自が自分がオーナーをしている病院から関係者を派遣しようとして俺たちと面識があるあさかさんが選ばれたらしい。
美人が2人も増えたのでなんとなく陽菜が俺に寄り添ってシャツの裾をギュッと握ってきた。
桜祭りの日に酔ったこの3人に絡まれて頬ずりとかされてた俺の姿を見てるから信用がないのは分かる。俺はちさと先生もみなもさんもあさかさんも信用してるけどね、酔っていなければだけど。大丈夫だよと陽菜の頭を撫でておく。不安になると俺の裾をギュッとしちゃう陽菜が可愛い。
「あら、恭介君ってひょっとして……」
「多々良くん、ひょっとして……」
「あ、はい。俺、こっちの姫川陽菜さんと付き合うことになりました。よろしくお願いします」
他の女の子と突き合っていることは棚に上げて陽菜との恋人関係を宣言する。
ちさと先生は1学期末の生徒会長選挙での交際宣言演説で知っているはずだからね。
「「じゃあもう童貞じゃないの?」」
2人そろってセンシティブな事を聞かないで貰えます!? まあ、この2人は俺が性欲が異常に強い男子でトラブルにならないか監視してた過去があるから仕方ないか。
俺はあいまいな笑みを浮かべようとしたけど陽菜が真っ赤になってるんで一瞬でバレた。
「ええ~、多々良の童貞が姫川に奪われちゃったの!?」
おいこら、聖職者のあなたが一番動揺して学校で言っちゃダメなことをそんなに大声で叫ぶのはどうなんだ?
何故かショックを受けたちさと先生(26歳処女)が涙目になっていた。
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本当は恭介がいるって聞いてのこのこついて来ただけかもしれない谷垣ちさと、26歳教師。可愛い女子高生のお願いを断り切れない童貞先生みたいな感じなのかも。
第35話で約束の話が出た写真撮影旅行についに出発です! ここまで240話かかりました……恐ろしいロングパスになってしまった。
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次回更新は9月12日です。
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