第270話 陽菜ちゃんなら今私の隣で寝てるよ
3日ともエッチしまくりの北海道旅行でした。
ああ、もはや俺はどうにもならないダメな彼氏ではないだろうか……陽菜からお許しはあったとはいえほぼやりたいままにやっただけな気がする。
あの後、頑張って早起きして帯広を早めに立ち、札幌でたっぷり観光することが出来た。
どうも石動さんと石川さんも刀剣女士ブームに乗って結構人気になっているらしい。
早速書き込まれているコメントを見ると特に石動さんは女性人気が高いようだ。カッコいい系の美人だからね。
『
『100回保存した。このアネキにはどこに行けば会えますか? 北海道! 5分でイク!』
『
3人が一緒にソフトクリームを舐めている写真とかアップすると同時にいいね! とコメントが沢山ついている。
「恭介、そふとくりーむを買ってきたからこっちを食べてくれ」
みおがたまにわざとひよりに2本ソフトクリームを持たせて「匂わせ写真」を撮っているがひよりの方はそんなこと全く気にせずに俺にソフトクリームを渡してくれたり、めちゃくちゃ楽しそうにしていた。
「そっちの夕張めろん味も一口食べさせてもらってもいいだろうか? あ~ん」
こっちのカレシにしか見せない可愛い表情のあ~ん写真は撮っても誰にも見せたくない。
空港で近藤先生と合流して女子大生組と別れる。また夏休み中の再会を約束する。
「それじゃあ、
「藤岡も来てもいいんだぞ。また、男をナンパした時の話で盛り上がろう。何ならアタシの地元で一緒に男ひっかけよう」
石動さんと石川さんがそれぞれ俺たちを誘ってくれる。みおは俺の方をちらっと見てから首を振っている。
「あーしは剣道は本当に人数合わせだったんで。それにあーしが男遊びしたら泣きそうなやつがいるんで」
まあ泣くのは否定しない。内心がバレバレなのがちょっと悔しいけど。
「石動さん、今度は実際にいろいろと教えて下さい。俺は本当にド素人みたいなものなんで決勝戦の時と違ってお手柔らかに」
「一度石動さんとは全力で手合わせしたいからよろしくお願いします。恭介の前で負ける気はないですけど」
それぞれ女子同士でみおと石川さん、ひよりと石動さんが握手しているが、なんかひよりと石動さんの握手の間にクルミを入れたら割れそうで怖い。
帰りの飛行機では最初から目隠しをさせてひよりを機内に連れ込む。CAさんに変な顔をされるが大丈夫ですと頭を下げる。
目隠しをすると条件反射で昨夜の痴態を思い出すのようでひよりがすでにいっぱいいっぱいになっている。ある意味飛行機を怖がるどころじゃないみたいだ。
変なスイッチが入って真っ赤な顔のひよりが隣にいるので俺の方も余波で硬くなっちゃってるのをCAさんに見られて赤面されてしまった。
無事に地元の空港まで帰ってくると今度はひよりの親父さんが車で迎えに来てくれていたので乗せてもらう。
3人そろって疲れ切っていたので(昨晩はお楽しみでしたね)後部座席で真ん中の俺に左右の2人がもたれるようにして眠ってしまった。
ひよりの親父さんはどう思ったんだろう。
「あ、俺も藤岡も駅まででいいですよ」
荷物の大半はホテルで昨日のうちに発送してしまったのでひよりの親父さんに告げて電車で帰ることにする。
帰りの電車でのみおとの話はもっぱら写真撮影旅行の話。家に帰ったら2日後には旅行に出発することになる。
ガタンゴトンガタンゴトン
電車のスピードが落ちてもう少しで俺の最寄り駅に着く。
「じゃあね、恭っち。写真旅行でまた会おう」
「ああ、みおもお疲れ様。ゆっくり休んでくれ。本当に北海道では助かったよ。ありがとう」
「感謝の気持ちは態度で示してね」
そう言いながらウインクして唇を指さすギャルに周りをキョロキョロ見回してちゅっと軽く唇を合わせる。
「じゃあね。恭っち、
締まるドアの向こうの車内で手を振るみおの顔はその軽い言い方と違って真っ赤だった。
空港からラインで確認したが陽菜はまだしずくの家にいるらしい。今日の正午までの締め切りだったデッドライン前に滑り込みだが無事に入稿できたそうだ。
しずくに電話する。今はもう夕方の6時だけど入稿まで徹夜続きだったから寝てるかもな。
「今駅にいるけどそっちに寄って大丈夫か?」
『ああ、恭介さん……もちろんいいわよ。理央は仮眠してからさっき帰ったから。陽菜ちゃんなら今私の隣で寝てるよ』
その言い方ってこっちの世界にもあるんだ。陽菜があんまり疲れて旅行前に熱を出したりしたらイヤだから寝ててくれて大変結構。
ピンポーン
ガチャッ
「恭介さんいらっしゃい。こんな格好で悪いけど……」
しずくの格好は委員長時代みたいにメガネをかけて髪は2つに結ってヘアバンドで邪魔にならないようにして、服装は中学のジャージだった。目の下にものすごいクマがある。
お嬢様モードになってからこういう姿を見てないから逆に懐かしく思える。
元気になったらそのうち委員長モードでエッチして貰うのはどうだろう(下衆)。
部屋に着くとしずくのベッドで陽菜が寝ていた。エアコンがかけてある中でタオルケットを掛けられてスヤスヤ寝ている。スヤァという擬音が聞こえそうなほどのスヤスヤっぷり。
額に触れてみるが熱は出ていなさそうだ。体調の問題じゃなくて純粋に寝不足で寝ちゃったんだろう。
「本当に陽菜ちゃんのことが大事なんだね」
「あ、ゴメン。原稿は無事できたの? 良かったら見せてもらっていい」
「ううん、謝ることなんてないよ。陽菜ちゃんを最優先にしない恭介さんは恭介さんじゃないかなって思っただけだよ。はい、これ」
そう言ってプリントアウトした紙の束を渡される。
俺が原稿を読んでいる間、なぜかしずくはパソコンに向かって終わったはずの原稿を液タブを使って修正し続けている。
なんでだろう……しずくも疲れているはずなのに? とにかくこの原稿を読んで陽菜を連れて帰ろう。明後日にはしずくも一緒に写真旅行に行くんだし。
部屋の中にはペラッペラッとページをめくる音と液タブにカシャカシャとペン先が触れる音だけが響く。
静かな部屋の中……俺は今回の同人誌を読み進める。
貞操逆転世界の男の子と女の子の出会いの物語。男の子は性に積極的で女の子は引っ込み思案。
前半は少女の回想の形で描かれる。コマごとにイベントと回想の文章での説明でちょっと詰め込み気味だがこの世界とは違う貞操逆転世界(俺たちの元いた世界)の雰囲気は出ている。
そこは描こうと思っていた話の通りなんだけど……ちょっと引っ込み思案で体の弱いヒロインはスカートめくりが流行っている小学校低学年の教室でそのトロさ故に男子の標的になりそうになる。
そんな中で主人公の男の子がなぜかぶっきらぼうに女の子を守ってくれるのだ。大人の目から見たら独占欲丸出し。でも男の子自体はそんなことに気付かずにスカートめくりなんて幼稚なことやめろと言って他の男子と大喧嘩してしまう。
自分だって昨日まで他の女の子のスカートめくりしていたくせにかたくなにその子のスカートだけをめくらない。
一事が万事そんな感じでところどころ、貞操逆転ならではの男の子のサービスカットがあるものの(普通に相手の前で着替えてる俺の感覚だと普段の行動は全てサービス?)ほっこりする話が続く……いや、俺は陽菜の見てる前でそんなに立小便しなかったよね? え? してたの……ゴメン。
幼馴染の2人で小学6年生までお風呂に入ったり、女の子に幼いながらプロポーズしたりしている。
ここまでは実際に陽菜と俺の物語を別のキャラに置き換えてなぞっている。中学に上がって女の子が手術をするのだが、この手術が無事に成功。女の子は主人公と無事に成長していく。
そこから普通にマンガのコマ割りで物語が展開する。
可愛くなった女の子にはナンパや魔の手がいっぱいだが、全て男の子が守ってくれる。この辺は俺が話したヒナとの話の影響もあるっぽいな。
そしてついに男の子の方から告白。キスされて幸せいっぱいの女の子の表情。
男の子が一生幸せにするって約束して女の子のことをリードしての処女喪失。処女がいかに大切にされてるかをイヤってほど強調されてる。なんだろう……感動的なはずなのに主人公が処女厨に見える。いや、きっと気のせい。
だけどそこには何人たりとも入り込む隙間のない二人っきりの世界……元の世界の少女漫画近い純粋な愛の世界が(この世界的に)貞操逆転で見事に描き切られていた。
読みながら少し目が潤んでしまう。陽菜が語ってプロットを作ったっていう、元の世界での平穏な暮らしと普通の幸せ。元の世界でそのまま生きていたらこうなっていたかもしれないもう一つのエンディング。
「陽菜ちゃんが本当に欲しかったのはこういう関係なのかなって思っちゃって……」
そう言いながら涙を浮かべるしずくは相変わらず液タブに向かって手を動かし続けていた。
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次回更新は9月7日です。
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