第266話 謎のイケメン剣士を取り合う2人の美人剣士

 結局、初日のひよりは危なげなく4勝して2日目の準々決勝に駒を進めた。


「多々良~、アタシたちもこっちのホテルに移ってきたからよろしくな。どうせお前らも明後日帰るんだろ?」

 別のホテルに泊まっていたはずの石動さんと石川さんの女子大生組が元のホテルを引き払って俺たちの泊まっているホテルに変更したのはちょっと驚いた。夕食のバイキングでは一緒に食べようということになる。

 ちょっと早めの夕食の時間に顧問の近藤先生にも顔を合わせて挨拶していた。やっぱり近藤先生はちょっと有名な剣道家でもあったらしい。


「小烏さんと多々良さんをうちの大学に剣道部への推薦で受け入れられるように話を進めさせて貰えばと思っています。

 もちろんお2人とも2年生ですし本人たちの希望もあります。それにうちの大学の方も来年の大会での成績を確認してから改めて話させていただくことになります。ですが私はこの2人とともに大学で剣の道を研鑽しあいたいと思います」

 石動さんがものすごくかしこまった口調で近藤先生と話している。そういう姿は本当に芯の通った武道家って感じだ。


「藤岡さんも筋はいいので一般入試でうちの大学に入学したら剣道部で鍛えさせていただければと……」

 みおが近藤先生から見えない位置でものすごく高速で首を横に振っていた。遠心力でつけまが飛びそう。

 剣道大会では頑張ってくれたけどみおが本当にやりたいのはメイクアップアーティストだからなぁ。

 高校卒業したら自分の技術を磨くために専門学校に通いたいって言っていたし。


 真面目な話が終わった後はそれぞれバイキングで好きなものを食べながら話し込んでいる。

 ひよりと石動さんは剣道談義。今日のひよりの試合についての講評や明日あたる可能性がある有力選手たちについてそれぞれの技や特徴、その相手に当たった時の攻略法など実に中身のある話をしている。

 剣道バカって感じで微笑ましい。いろいろと違う所の多い二人だけど剣道が好きって部分では共通だからこんなに盛り上がるんだろうな。


 みおと石川さんは男漁り談義。今までに落としてきた男についての講評やナンパして誘うときに落せる可能性のある男についてそれぞれの大きさや硬さ、そういう男に当たった時のハメ心地など実に中身のない話をしている。

 ヤリマンって感じでエロすぎる。ギャルと体育会系でいろいろと違うところの多い二人だけど男が好きって部分では共通だからこれだけ盛り上がるんだろうな。


 っていうかみおのそういう話を聞くとちょっと嫉妬心が湧くから止めて欲しいんだけど。

 マジで寝取られ性癖とかないからね! 寝取られて死んでるからねこっち元の世界では。


「石動さんにはあのように言って貰ったことですし、多々良くんはこれからでも剣道を本格的に始めてみる気はありますか? もしそうなら男子剣道部員として私は喜んで指導しますが」

 近藤先生は真剣に俺の将来を考えてくれているらしい。石動さんの大学は隣の県だけど剣道の強豪校だし、剣道を続けていくならすごくいい話だと思う。


 水泳を始めた理由が心臓の健康のためである俺には正直言って水泳でトップをとるモチベーションは元々大きくない。

 元の世界で水泳を頑張っていたのは村上(ゴリマッチョ)という最高の親友で最大のライバルがいてくれたからだし。ただ、部長を引き受けた水泳部が俺のせいで潰れたとかなったら申し訳ないっていう思いはある。

 3年生が卒業して来年も新入部員ゼロだと部員が俺とゆうきの2人だけになって部から水泳同好会に格下げまでありうる状況だし。


「もう少し考えさせてください。お盆明けに女子水泳部の北野ゆかり部長のインターハイ出場を応援することになってるんでそれを見て決めたいと思います」

 自分がこういう言い方をしているってこと自体がある意味では結論は出てるっていう気がする。


「そうですか、良い返事を期待しています。私はあなたのことを誤解していたようですね。こうして話していると問題を起こすような子ではないのに。

 私も長いこと教職についていてもまだまだ至らないようです」

 いや、俺がだったのは本当なんで。多分これからは大丈夫だと思います。近藤先生は陽菜のおかげでこうして落ち着いた後に俺と初めてちゃんと会話したからこその感想だと思いますよ。


 その後夕食後は昨日俺とひよりが泊まった和室になぜか石動さんと石川さんが訪ねてきてそのまま剣道談義となってしまった。

 石川さんは夜の街にナンパに繰り出そうとしていたが石動さんに引きずられてついて来た。無念そうに「多々良でいいかな」みたいな目で見ないでください。


「明日があるから早めに休むんだぞ。それじゃあ俺はみおと今日録った動画の編集と配信するから。おやすみひより。おやすみなさい、石動さん石川さん」

 ひよりと大学生2人に声をかけて部屋を出ようとする。

「おう、また明日な。小烏こがらすにも話したが夏の終わりまでにうちの大学に出稽古しにこい。大学の剣道部を見せてやる」

「多々良が来たらうちの女子部員も喜ぶよ。ただ私たちじゃ先輩を止められないかもしれないから気を付けて来なよ」

 石動さんと石川さんに大学の剣道部の見学に誘われる。ありがたいことだなって思う。


「おやすみ、恭介。明日も頑張るから見ててくれ」

 ひよりの表情も明るくやる気に満ちている。石動さんたちからいい影響を貰ったみたいだな。

 ひよりはずっと同世代の対等な仲間なしに1人で剣道に向き合ってきたからすごくいいことだと思う。俺はひよりの部屋を後にした。




「恭っちいらっしゃい」

 元々俺が予約したダブルの部屋をノックしてみおに入れてもらう。結局ひよりが和室に戻ったので俺たちの部屋は洋室のままにして貰った。この方がデスクもあって編集作業がしやすいし。

 部屋の中では夕食の時のままのギャルメイクのみおが旅館の浴衣のままノートパソコンに向かっていた。

 みおは撮影機材やパソコンを宅配便でホテルに事前に送り届けていたらしい。本当に慣れているというかなんというか頼りになり過ぎる。


 多少の業務委託料をひよりの刀剣女士活動から得られるとは言っても、本来のみお個人の淫フルエンサーとしての稼ぎから見たら微々たるものだろう。なのに友達のためにここまで出来るみおは本当にいい女だと思う。


「ちょっち待っててね、恭っち。とりあえず今日の4回戦までのまとめ動画がこれで終わりだから。今日の生配信については恭っちと石動っちが乱入してきたところがハイライトだね。あそこで同接もコメントも爆発したわ。

 何しろ去年のインターハイ覇者の石動っちが、竜王旗で突如出現した剣道界の期待の新星・多々良恭介を引き連れていきなり怒鳴り込んでくるんだもんね。

 謎のイケメン剣士を取り合う2人の美人剣士って感じでネットは大バズりだから。

 石川っちの顔見た瞬間、ヤバそうだから乱入すると同時にあーしが配信打ち切ったのも憶測呼んでるし。流石にうちの刀剣女士が恭っちとヤッてるとか言われちゃったら大変なことになるからね」


 何その剣道界の三角関係。陽菜ってひよりのインスタをチェックしてるからいろいろ思ってるんだろうな。

「そ、そんなことになってるんだ。ちょっと陽菜に電話するね」

「いいよ~、陽菜っちにちゃんと話しなよ。大学で剣道やろうかと思ってることも含めてね」

 スマホに向かっていたけど思わずみおを振り返る。みおは俺のことを見もせずにノートPCに向かっていた。

 陽菜に電話して1時間近く話し込んでしまった。陽菜は俺のやりたいようにやってみたらいいんじゃないかなって言ってくれた。


 電話を終えてちょっとベッドに座ったままボーっとしているとみおが正面から俺に抱きついて来た。


「あーしはいいと思うよ恭っち。剣道してるときの恭っちは生き生きしてた。貞操逆転とか誰かのためとか何かしなくちゃとかそういうのが抜けちゃってたでしょ? 私は恭介のそういう何かに夢中になっちゃうところ大好きだよ」

 途中からギャル語が抜けてみおの素で気持ちを伝えてくれる。


「自分のしたいようにしてくれたら私やしずく、ひよりにまるも恭介のことを支えて一緒に歩いていくから。1人でみんなのことをどうにかしないとなんて考えて重たくとらえちゃうのは恭介のいい所だけど悪い所でもあるよ」

「確かにみんながいてくれたら生活に困ることはなさそうだな」


「そうそう、恭介が稼げなくったってみんなが支えてくれるって。もっともその状態に耐えられなさそうだから恭介自身もどうせ真面目に働いてくれるだろうし。あと精神的には陽菜とのどかが支えてくれるだろうし、私たちだったら上手くやっていけるって」

 ヒモになってもいいって言われても精神的に無理っぽいからみおやしずくには収入で敵わなくても仕事はすると思うけどね。


 そういう話をした後でみおが俺に口づけしてくる。俺たちの中で多分一番大人なみお。それは優しさの故かもしれないし、今までの経験が彼女を大人にしたのかもしれない。

 ちょっと胸がチクッとする。今日の石川さんとみおの会話、石川さんに関しては何も思わないのにみおがどうやって男を落としたとか、どんな体位でセックスしたとか聞こえてくるたびに胸がチクチクした。昔のことなんてどうにもならないんだから嫉妬したって仕方ないのに。


 俺の気持ちを察したようにみおが何度も何度もキスしてくれる。舌と舌を絡め合いながら愛を囁き合う。

 そのまま服を脱がせ合ってお互いの体をまさぐっていく。どちらから申し合わせたわけでもないのにお互いに上下逆になって舐め合う形になってしまう。

 相手のことを一番感じさせたいと思いあっていたせいだろうか。


 自分の一番敏感な部分をしゃぶられながらこちらもみおが気持ちよくなるようにお返ししていく。ふと目の前にみおのヒクつく穴が見えた。男にもついている一番恥ずかしい場所。

 そのすぼまりの綺麗さとエロさに思わず舌を這わせてしまう。


「ひゃっ!? 恭介……今一体どこを舐めたの? なんか初めての感触だったんだけど」


 指を入れてみる。入口こそきついものの第二関節を通るころには奥は広がって熱さの中に指先があった。

「だ、ダメだってばぁっ、恭介。そんなところ汚いからぁ……」

 みおがガチで焦った声を出している。あれ?こっちの世界にはこっちでのプレイってしないのかな? 確かに俺も陽菜ともヒナともこっちの穴でエッチしたことはないけど。


「もう無理、限界だからっ……ゴメン恭介」

 しばらく指を出し入れしているとみおがものすごい勢いで立ち上がりトイレに駆け込んでいった。

 考えてみると浣腸も何もしてないのにそういうプレイって絶対NGだよね。めちゃくちゃ申し訳ないことをした。反省しつつとりあえず自分の指を除菌のウエットティッシュで綺麗に拭っておく。


 トイレから全裸のみおが真っ赤な顔で出てくる。

「恭っ痴の変態、ドスケベ、ヤリチン、スケコマシ、シリアナスキー、アナルスキー型おちんちん、淫獣、ちんぽから先に生まれてきた男、貞操逆転男子、エロエロイケメン、イケチ……」

 このままみおの悪口のレパートリーを聞いているのも楽しいかと思ったけど手招きして後ろから抱っこしてあげる。


「みおってアナル処女?」

「ば、バカじゃないの? お尻でエッチする男なんているはずないでしょ!? ってひょっとして貞操逆転世界だと常識なの? 流石に信じられないんだけど」

 いや、向こうでもマニアックです。だけどこっちの世界だとそもそもアナルセックスって概念自体ないらしい。ただでさえなかなか勃起しなくて薬を使うんだもんね。そっちでエッチしてる余裕はないか。


 あれ? 陽菜の誕生日バーティーでみおが浣腸の注射器を持って来てたけど……あ、あれはSM用ですか、そうですか。

 女子が男子のを掘るのは結構あるみたいなんで貞操逆転って怖いよね。流石にペニバンで突かれたくない。


 みおのことを後ろから抱きしめながら胸とあそこを気持ちよくしていく。今度はみおは恥ずかしそうに身をよじりながらも大人しく受け入れている。その耳元に囁く。

「じゃあ、みおのアナル処女は俺が貰っちゃうから。予約するからよろしくね」


「もう、そんなの言われたら断れないじゃん。恭っちみたいな変態の相手が務まるのはあーしくらいしかいないんだから感謝してよね。

 あ、ひょっとして恭っちってアナル童貞? ちょっと嬉しいかも」


 そう言いながら耳まで真っ赤になって笑うみおは今までで一番素直で可愛かった。

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 ちょっとした小話

「ねぇ、恭っち……陽菜ちゃんって他の女の子に恭っちがしたことをもっとして欲しいって言ってるんだよね?」

「そうだよ。陽菜とそういう約束しているし」

「でもさ、だったらもしもあーしと恭っちがお尻でエッチしちゃったら陽菜ちゃんともそれ以上の回数でもっと激しいエッチをお尻でしちゃうの?」

「あっ!?」

「だよね? これって要事前確認案件だって……下手に先にしちゃってから事後報告したら陽菜ちゃんマジ泣きしちゃうかもしれないから……本当に陽菜ちゃんのことを大事にしないとダメだよ恭っち」

 という感じでみおにダメだしされたとかされなかったとか。


 毎日18時に最新話公開中

 次回更新は9月3日です。


 追記 サポーター限定コンテンツのヒナアフターに関して1話無料公開を始めました。お知らせがありますのでこちらをご覧ください。

 https://kakuyomu.jp/users/badtasetedog/news/16817330663026616125

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