第二部 二章 多々良恭介とみんなの関係
第248話 陽菜と繋がれた今となってはどうでもいい
朝の生徒会長候補者挨拶のためにいつもより早く登校している俺は外から見たら完全に浮かれているんじゃないかと思う。
物心ついてからずっと好きだった陽菜とついに結ばれたのだ。もちろん昨日までも心の繋がりは強く感じていて幸せだったし、不安も不満もなかったけどやっぱり体も繋がったという事実が俺に翼を付けたみたいにフワフワして幸せな気持ちにしていた。
どうしても顔がにやけてしまっていると思うしこんな状態で生徒会長選挙の応援人を務めてくれているみおや、会長選の対立候補のしずく、そして俺達とは別に風紀委員の活動で朝から校門で服装チェックをしているひよりに見られたらバレバレなんじゃないだろうか?
それどころか、あの3人相手だと陽菜がひょこひょこ歩いてる時点で全部バレそう。
歩くと陽菜が爪を立てた背中がシャツに擦れて痛いんだけどその痛みさえも嬉しい。
陽菜が痛がっているのを嬉しがっちゃったみたいで本当にダメだと思うけど陽菜の初めてを貰えたということが嬉しくて仕方ないみたい。
もう俺が陽菜に対して独占欲の塊だなんてバレちゃってるから言うけど、この世界に来たばっかりの頃に陽菜が初めてじゃなくてもいいって強がっていたけどあんなの嘘だから。他の誰かに指一本触れられたりして欲しくないに決まってる。
そしてこれからも末永く俺だけの陽菜でいて貰うのだ。そのためにも健康に気を付けないと。
陽菜よりも一秒でも長く生きよう。
陽菜が俺のことをずっと見てればそれでいい。
陽菜がいれば他には何もいらない。陽菜がいればそれでいい。
「何ニヤニヤしてるの恭っち? 女子と握手できるのがそんなに嬉しいの? ホント貞操逆転世界の男子は不潔!」
半分冗談めかしてみおが俺のお尻に蹴りでケツバットを入れてくる。みおの短いスカートでそんなことしたらパンツが見えそう。
赤か……まあどうでもいいことだけど。
でもこれでみおの追及は誤魔化せたかも。誤魔化す必要なんてないのかもしれないけど俺からバレちゃったら陽菜が学校に来るときにいきなりからかわれたりしたら可哀想だし。
みんな限度を超えたからかいをするタイプじゃないから大丈夫だと思うが。
「恭っちが女子の手を握りたいならあーしがいくらでも握らせてあげるっての。
あ、おはようございます。このチラシ、読んでみてください」
みおがよそ行きの笑顔で男子にチラシを渡している。今日の未央のメイクはギャル風じゃなくて清楚風。いつもより丸顔に見えて優しそうだし男子受けはよさそうだ。
スカート丈だけはどうにもならないが胸元のボタンもちゃんと一番上までとめている。どうでもいいことだがこの世界では男子受けする格好だ。
チラシの下の方にQRコードが2つ印刷してあって、それぞれ男子用女子用の動画に飛ぶようになっている。男子は女子にも優しい子がいるから慣れていこう、女子には男子には優しくした方が絶対にモテるって動画を見せてお互いの距離を縮める作戦だ。俺は女子と握手しながらこのチラシを渡して説明している。
とにかく今校内の男女がギクシャクしているのは俺が風評被害にあっていた時に心無い女子が下品な声をかけたり、無理矢理エッチなことをしているのを見て男子の女子に対する心証が悪くなってしまったのが原因だ。元凶となった俺としては少しでも男女間のコミュニケーションを円滑にしたい。男女交際は結果として増えてくれても嬉しいけどそこはついでなのだ。みんなに楽しい高校生活を送って欲しい、それはきっと今回の生徒会長選挙にかかわる人間全員の共通する思いだ。
まあそういう思いで生徒会長選挙に臨んだんだけど陽菜と繋がれた今となってはどうでもいいことのような気もする。
「あ、しずくゴメン、陽菜からも連絡来てると思うけど今日は朝の手伝いは出来ないからもし人手が足りなかったら俺とみおが協力するから」
しずくの姿が見えたので挨拶する。
「うん、陽菜ちゃんからちょっと生理痛が酷いからってメッセ―ジが来てたから。それと恭介さん人が良すぎだよ。ライバルが弱ってる時こそつけこむものなんじゃないの?」
「ライバルって言っても同じように学校生活をよくするために動いてるんだから仲間みたいなものだろ? だったら俺たちが協力したって何も問題ないよ
それに選挙の結果なんてどうでもいいことだから」
「フフ、恭介さんったら……あ~今から立候補取り下げられないかな。恭介さんが生徒会長で私が副会長。
「だ~め。しずくなら絶対にいい生徒会長になると思って立候補したんだから俺のことはどうでもいいことかもしれないけど、陽菜を失望させないでくれよ」
「う~ん、恭介さんたちに失望されちゃうんじゃだめだね。生徒会長になって頑張ったら褒めてくれる?」
「ああ、陽菜が誇れるようなしずくでいて欲しい。
あと聞いてるかもしれないけど光画部から出る生徒会長選の候補者は大概の場合副会長を受けないからそれは了承してくれよ」
光画部としては戦力を差し出すために天敵である生徒会長選挙に参加するわけではないのだ。写真部じゃないのか光画部って? 生徒会と対立してるわけでもなさそうだけど。まあ昔の関係なんてどうでもいいことだけど。
陽菜のことについては騙しているみたいで申し訳ないけど、陽菜だと思いつきそうにない生理痛って言い訳はさちえさんが入れ知恵してくれたのかな? それとも俺が気付かないだけで陽菜も実は生理痛が結構酷くてこの言い訳を思いついたとか?
これからのこともあるからこっそり陽菜に生理痛の重さについて聞いておこう。そういえばヒナが結構生理痛が重かったから陽菜も重いのかもしれない。
下ネタが平気な女子は結構平気で生理の話とかしてくる。例えばみおなんかは最初の頃はナプキンとタンポンどっちが男子的には興奮するかとか俺の病室で平気で話していた。
自分の生理周期を俺に把握されても平気だったみたいで、「あ~生理キツ」とか平気で言っていたものだった。
チラッとみおの方を見る。今日の清楚風のみおだと生理の話とか絶対しそうにないけどな。って言うか最近はみおから生理の話とか聞かされなくなったような……ひょっとして恥ずかしくて話さなくなった? まあ下ネタなんてしたいわけじゃないしどうでもいいことは話したくないから助かるけどね。
「おはよう、恭介、しずくちゃん。ん? そっちの女子はみおちゃんか? 顔の印象が変わっているから一瞬分からなかったぞ。いつでもそういう格好で出てきてくれれば風紀委員としては注意しなくていいんだがな、もっともそれでもすかーとは短すぎるみたいだが」
校舎の方から出てきて風紀委員の服装検査に出ていくひよりと挨拶する。
「おはよう、ひより。これ、選挙活動のチラシ読んでみて欲しい。QRコードの使い方が分からなかったら説明するから教室に戻ったら聞いてくれ」
未だにスマホの機能の1割も使いこなせていなさそうな刀剣女士にチラシを渡す。チラシを一瞥しながら注意される。
「いきなり恭介の子種を欲しがった自分が言えた筋ではないが、あまり風紀を乱すようなことはしないようにな」
「大丈夫、心配かけるようなことはしないから。それにしても風紀委員の仕事も大変だな」
ひよりと話を終えてふぅとため息。
とにかく生徒会長選挙は陽菜にも宣言したしみんなと約束したからしっかりとこなさないと。俺にとってどうでもいいことだとしても。
「おはようございま~す。多々良恭介に清き一票をお願いします。あ、握手ですね。ありがとうございます」
知らない三年生の手をギュッと握ってからチラシを渡す。ふぅ……握手なんて面倒だけどみおと約束したから仕方ない。
ああ、早く陽菜が来ないかなぁ。陽菜に会いたい。
今日の放課後はみおと一緒に女の子に清楚風メイクを施してのブロマイド撮影、希望者は同じくメイクしてイケメンに仕上げた俺とのツーショット撮影も行う。
これはあくまでも光画部の企画として行っているということになっているので選挙の不正などではない。
女の子はメイクの仕方をみおにならえるチャンスだからすでにQRコードから飛べる動画で案内されたサイトからどんどん予約申し込みが入っている。
ふぅ……今日だけで25人も知らない女子とツーショット予約が入っている。陽菜にだけモテればいいのになんで俺なんかにこんなに興味があるのかな?
男子は清楚メイクをした女の子の顔を見れる掲示板に行けるので、いつもはギャルメイクやちょっとキツイ顔した女の子が清楚な優しい顔になったらどれだけ可愛くてお近づきになりたい存在か知ることが出来るって仕組みだ。
あくまでも光画部の仕掛けということになっているから放課後はリアカーをまるが引っ張ってくれてその上からゆうきとゆうかの兄妹が挨拶やビラ配りを代わりにしてくれることになっている。
とにかく面倒だけど今週いっぱいは全力で頑張ろう。陽菜とも約束したしね。
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ちょっと変?
ちょっと変なんで予定変更して
次回更新は8月17日です。
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