第246話 恭介くん……来て……

「それで今日は何人の女の子の手を握ったの?」

「はい、今日は一日でおよそ130人の女の子と握手しました」

「学校一のモテ男さんは彼女がいるのにそういうことをするんですか? 女の子の手をいっぱい握れてうれしかったですか?」


 選挙活動の一日目を終えた俺は陽菜の部屋で正座させられて説教されていた。

 月曜日へいじつの夜だからいつもは陽菜の部屋にお呼ばれすることはないのだが今日は特別……だってお説教だから。

 ピンクのパジャマの陽菜の前で正座させられている。そして陽菜は丁寧語。うう……


「選挙活動で政治家さんが有権者さんと握手するのは私だって知っています。この世界で男子獲物握手解禁って食べ放題って宣伝したら女子肉食獣が群がるのも想像通りです。この時の男の子の彼女姫川陽菜の心境を二文字で述べよ」

「嫉妬?」

「ブブーっ! 正解は「怒り」です!」

「ええ? 怒りは漢字とひらがなだから「いかり」で三文字なんじゃ?」

「屁理屈! もう怒ったから激おこぷんぷん丸だから」

「それって古くない? って言うかその表現ってこっちの世界にもあったの? 陽菜がこの世界に輸入してるの?」


「もうっ、冗談じゃないんだよ。あんまり女の子に気を許してると本当に危ないから心配してるんだから冗談で流さないの」

 そう、陽菜が怒っているのはどっちかというと今回俺とみおがとっている戦術だろう。

 とにかく俺が女性票を獲得して、みおが男性票を獲得する仕組み作りをするというのが今回の俺たちの基本戦術。


「風通しのいい皆が意見を言える明るい校風をつくる」とか「一人一人の悩みに耳を傾け過ごしやすい学校生活を目指す」などと言った王道の公約を具体的な施作で実現するという横綱相撲をとってくるしずくに対抗するには奇策しかないのだ。


 こういう言い方をすると怒られるかもしれないが元々光画部こうがぶというのは奇策と奇襲で本陣を狙う戦術を得意とする真田十勇士のような集団なので(写真部なのに?)今回も勝てなくても負けなかったといえるような結果を出すために無謀な戦いを挑んでいるのだ。


 こんなことになるなら普通に他の候補者が出て欲しかったよ。特に委員長モードからお嬢様モードに変わったことでしずく一強人気は揺るぎないものになっていたし。


 でもやっぱり学校の代表である生徒会長を決めるのに信任投票で実質何の議論もないっていうのは生徒側にも不完全燃焼感があるし、この先本当に信用できる生徒会なのかって見極めるチャンスが与えられるべきだと思う。光画部の伝統がそういうことなのかは分からないけど俺は俺なりに解釈してそう考えた。


 もっとも俺は信任投票で生徒会長が決まるとしてもしずくなら絶対にいい生徒会、今よりいい学校にしてくれるって信じてるけどね。


「もう、この選挙も最終的にしずくちゃんのためだと思って引き受けてるのは分かってるけど恭介くんが無理しちゃダメなんだからね。本当にいつも心配ばっかりかけて」

「あ、でも今回はいっぱい女の子の手を握れるのは俺的には役得なんじゃ……いひゃい痛いいひゃい痛いからふぃにゃ陽菜……」

 陽菜が思いっきり俺のほっぺを引っ張っている。逆の立場で陽菜が男子と握手しまくったら俺は自分がイヤな気分になるのは分かってるから申し訳なくは思うんだけど。


 今回のこれは俺なりに疑似精液フェイクザーメンによる風評被害で学校の男女間に距離が出来て変にこじれたりしたことへの罪滅ぼしの意味もあるのだ。


 俺の頬をつねっている陽菜の右手を左手でギュッと握る。反対の手も摑まえて恋人繋ぎする。その状態で逃げられない陽菜の耳元に口を寄せて囁く。

「俺が本当に繋ぎたいのは陽菜の手だけだよ」

 みるみる間に茹だっていくように赤くなる陽菜の顔が可愛い。


 そのままほっぺにちゅっとキスして囁く。

「俺が学校で一番モテてるなんて嘘だから……俺は陽菜だけにモテればそれでいいから」


 そのまま陽菜の耳にキスして耳たぶをあまがみする。

「ンッ……」

 日頃の陽菜の口からはいつもは出てこない甘い声。ちゅっちゅぱっ……調子に乗って首筋にかけて何度もキスをする。


「だ、ダメ……恭ちゃん……」

 ここでちょっと冷静になって俺のオスが引っ込む。

 手を離すとぎゅっと抱きしめる。


「ゴメンね……ちょっと我慢できなくなった」

「ううん、私の方こそ我慢させちゃってゴメンね。恭介くんのことがイヤなわけじゃなくてまだちょっとだけ怖くて……」


 はっきり決めたわけじゃないけど二人の間だけで伝わる陽菜と俺の間のセーフワード。陽菜が俺のことを「恭ちゃん」って呼ぶとそれ以上はエッチはダメ。

 だからいつも二人で寝るときは陽菜の方から「おやすみ恭ちゃん」と挨拶してくるのでその時点でエッチはなし。幼馴染の時間として恋人だけど幼馴染の俺たちだけの時間を堪能する。


 多分陽菜のおっぱいを揉んでも抵抗されないと思うしもっと先まで進みたいけど陽菜もちょっとずつ一緒に進もうとしてくれているのを感じるので無理をするつもりはなかった。


 やっと再会できた俺たちには四年間をゆっくりと埋めていかないといけなかったから。

 逆に幼馴染じゃなかったらとっくにエッチしていたかもしれないけどその時は陽菜に無理をさせてたってことになるからこれでいいんだと思っていた。


「恭介くんは本当はエッチなことしたいのに我慢してくれてるんだよね」

 抱きしめている陽菜がちょっと潤んだ瞳で俺のことを見上げてくる。

「そういう言い方をしないの。陽菜と一緒にゆっくりでいいって思ってるから大丈夫。我慢とかじゃないから」


 ちゅっ


 陽菜の方から唇を押し当てるようなキス。めいいっぱい背伸びしてキスする陽菜が可愛すぎてギュって抱きしめてしまう。

「もう、本気で我慢しなくちゃいけなくなるようなことをしないの。大丈夫……そのことで陽菜のことを嫌いになったりすることは絶対ないから安心して俺を信じてよ」


「うん、あのね……しずくちゃんのマンガ同人誌が理由って言ったけどそれだけじゃないの。

 本当はね、私恭介くんに裸を見せるのが怖かったの。私胸に大きな傷があって、それは手術の傷跡で私の心臓を貰った傷でだから悪い傷じゃなくて、でも胸の真ん中に傷があって恭介くんが見たら気持ち悪いんじゃないかって思うのが止められなくて……だから私っ……ングっ……ちゅっ、ちゅ、ちゅむ……んんっ!? ちゅ、ちゅる、ちゅぱ……」


 陽菜の唇を塞ぎ舌で唇をノックする。陽菜の唇が開いた隙に舌を押し込んで陽菜の歯を押し開く。俺の舌と陽菜の舌が触れあって舌同士で絡め合って舌でも気持ちを伝える。これ以上は陽菜に辛い言葉を一言も言わせない。


 俺の気持ちが伝わるようにゆっくりじっくり丁寧に陽菜の口の中を舌で愛してみせる。


 陽菜に二人きりで会う前はいつでも口の中を清潔にしてきているので今日の俺は遠慮しない。気持ちの全てを伝える。


「ぷはぁ……はぁはぁ……きょ、恭介ぇ……くぅん」

 赤い顔をして髪を乱している陽菜がたまらなく可愛い。体温が高くなっているのか陽菜の甘い匂いがする。


 陽菜の足腰が立たなくなっているから抱きしめる腕に力を入れて支えてあげる。そのままベッドに陽菜を押し倒す。

 そのままキスを続けながら右手でだけ陽菜のパジャマのボタンを一つ一つ外していく……キスに夢中になっている陽菜はなされるがままでパジャマの前をはだけさせる。


 今度は左手を陽菜の背中に回して片手でブラのホックを外す。指で引っ張るようにしてホックを外したら陽菜の胸のふくらみがブラの締め付けから解放されるようにたぷんと震える。

 ここで初めて陽菜の唇から俺の口を離して自分の腕で上半身を支えるようにして陽菜の顔を見つめる。


 真っ赤な顔をして潤んだ表情……半開きになったまま喘ぐように息をしている唇。


 顔から下に視線をずらす……パジャマとブラのカップが邪魔して陽菜の胸の先端はまだ見えない。だけどいつもは洋服で隠されている胸の谷間にある大きな傷跡、胸の中心を縦に真一文字に開いた跡が俺の目の前にさらけ出されている。


「陽菜……綺麗だよ。胸の傷も含めて陽菜だから……今俺は胸の傷を見てるけど俺の気持ち、言わなくても伝わるよね」


 そう言いながら陽菜の右手を優しくつかんで俺の股間に導く。最初は俺のパジャマの上からその後はズボンとパンツの中に陽菜の手を導いて直接握らせる。


「すご……い、大きくなってるんだ。これって……私のせい、なんだよね」


「そうだよ、陽菜が欲しくて大きくなってるんだよ」


「そっか…胸の傷を見られて嬉しいって思う日が来るなんて思わなかったよ。恭介くん……来て……」


 目を閉じる陽菜。俺は目を閉じてもう一度陽菜の全てを貰うようなキスをした。

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 週四日の18時に最新話公開中なんですけど、お盆ですね。

 皆様お盆休みだと思いますので明日は夕方18時に更新します。

 おあずけされるのはみどりのも嫌いです。


 お盆って運営様はお休みかなぁ……お休みしてるといいなぁ

 次回更新は8月15日です。

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