第240話 ハッピバースディトゥーユー♪(陽菜視点)
ハッピバースディトゥーユー♪ ハッピバースディトゥーユー♪ ハッピバースディディア陽菜ちゃ~ん♪ ハッピバースディトゥーユー♪ パチパチパチパチ
みんなの拍手の中、目の前にあるバースデーケーキに刺さった1と7の形をしたろうそくの頭の火を吹き消す。あ、ちゃんと消えた。
火が消えた瞬間、さらに大きな拍手がしてみんなが口々におめでとうを言ってくれる。なんだか子ども扱いされてるみたいだけど友達とこういうのするのって初めてだからすごく嬉しい。
「おめでとう、陽菜。生まれてくれてありがとう」
「陽菜ちゃんおめでとう。恭介さんと仲良くね」
「陽菜ちゃん、陽菜ちゃんのおかげで大会にも優勝できた。ずっと友達でいてほしい」
「陽菜っちに誕生日おめでとう……で、なんでもプレゼントするからさ。代わりにあーしの誕生日に恭っちの
「師匠は私より誕生日が早いからやっぱり師匠なんだよ」
よく分からないことを言う
お母さんからも包みを渡される。誕生日プレゼントだ!
「陽菜ちゃん、誕生日おめでとう。これ、みんなと一緒に渡そうと思ったから一週間遅くなったけど、受け取って」
結構大きな箱が入ってるみたい。お母さんからのプレゼント、みんなから貰ったぬいぐるみとかアロマも嬉しかったけど、産んでくれた(正確には産んで貰ったのは私じゃくてヒナちゃんなんだけど)お母さんからのプレゼントはすごく嬉しい。
「開けていい? お母さん」
そう言いながら包み紙を開けると水色のパッケージでサイズLと書いてある箱だった。中は軽いものが入ってる。
この時点で周りを見ると恭介くんがちょっと慌てててみおちゃんがニヤニヤしているので嫌な予感がしたんだけど、浮かれている私は箱を開けてしまう。
箱の中身は業務用コンドームLサイズ 144個入りでした……
真っ赤になっている私にみおちゃんがパーンってクラッカーを鳴らしてくる。次の瞬間恭介くんにアイアンクロー? とか言うのをかまされて大騒ぎしてたけど。
真っ赤になった私はとにかく自分の部屋に退避してクローゼットに箱ごと放り込み素知らぬ顔でリビングに戻ってきた。もう、お母さんは、お母さんは!
「お母さん早く孫の顔が見たいわ」
いい話になんてならないんだからね!
今日は土曜日でお昼過ぎからみんなが来てくれてお泊り会だ。恭介くんは部活があるとかで夕方の誕生日パーティーだけ参加。
あ、彼氏彼女になったけど頑張って土日の朝のランニング(私は自転車だけど)は続けてるよ。
一緒に寝てる日は流石に土日用のフルのお弁当は準備できないけど……うん、あの告白から後まだエッチはしてないけど恭介くんが来てくれて一緒に寝る日がある。
うちは両親ともに恭介くんのことがお気に入りだし(お母さんの気に入りっぷりはちょっと怖いけど)、恭介くんのお家も私のことを公認してくれるから節度を守って子供が出来たり無理をして体を壊したりしない限りは好きにしていいって言われてる。
逆にここまで信頼されちゃうと学校の成績も落とせないって思っちゃうから不思議だよね。
お母さんたちの手のひらで転がされてるのかもしれないし反抗しようって思わないのは私たちが本当の子供じゃないって遠慮なのかもしれないけど。
「師匠! 師匠のためにデザートを作ってきたんだよ」
まるちゃんが大きなタッパーを保冷のバッグから出している。そういえば今日みんなが来た時にまるちゃんがウーバーイーツみたいな大きな保冷バッグを背負って来ていたけどあの中にケーキやお料理、まるちゃんのデザートまで入っていたんだ。
ちなみにケーキはしずくちゃんの手作りでみおちゃんがデコレーションを手伝ってくれたんだって。流石みおちゃんメイクアップアーティスト目指してるだけあって綺麗に飾り付けられていたよ。
「わぁ、まるちゃんが作ってくれたんだ。何を作ってくれたの?」
「ババロア! まるはババロアが大好きだから師匠にも食べて欲しくてタッパーいっぱいに作ってきたんだよ」
見るとタッパーの中に黄色いババロアが流し込まれて固まっている。なるほどこれを四角く切り分ければみんなの分が一度に出来る。まるちゃんって意外と合理的!
「しずくちんに教えてもらって作れるようになった料理の一つだよ」
私は参加していないけどたまにみおちゃんの家で開催されているというしずくちゃんのお料理教室で習ったらしい。
お母さんが人数分に切り分けてみんなの前にお皿を置いてくれる。これを食べたらまたお腹がパンパンになっちゃいそうだけどせっかくまるちゃんが作ってくれたんだもんね。いただきます。
「あ、ちょっと待って……あーしがトッピング作ってきたから」
そう言ってみおちゃんが保冷バッグからすごく大きな注射器を取り出す。先っぽに栓がしてあって、中には白い液体? が詰まってる。
恭介くんの顔を見ながら「大丈夫! 未使用だから」とか言ってるけどまた絶対私が分からないエッチな会話だと思う。
その大きな注射器から一人一人のお皿に白い液体をぶっかけていく。
ドビュッ ビュルゥ ドプドプゥ ピュッピュ ビュルルゥ ドプドプ ビュルル
「ちょ、まるがせっかく作ったのに
「恭っちのお説教と
言われた恭介くんがスプーンで白い液体を少しすくって口に運ぶ。美味しかったらしい。
「陽菜、大丈夫だから食べていいよ。けどこの
「いや~ん、恭っちのエッチ……後で二人っきりの時にね、イタッ痛いっ! 本当に痛いから~っっ、ギブギブッ!」
また恭介くんにプロレス技をかけられてる。あれはコブラツイスト? って技かな。
ちょっと密着し過ぎな気がするし、みおちゃんは痛いのにすごく嬉しそう。
本当に恭介くんのことが大好きでかまわれるのが嬉しくて仕方ないんだろうなって思う。
そう、ここにいる女の子(お母さんは女の子じゃない)は全員が多かれ少なかれ私の彼氏が好きなのだ。恭介くんの方も気にかけている女の子ばかりなのでみんなが一緒にいると私はちょっとヤキモキしちゃうけどそれでも一緒にいるとすごく楽しく幸せだ。
そしてみんなが恭介くんを好きになっちゃう気持ちもわかっちゃうのだ。恭介くんは特別で一人しかいなくて他の誰とも違うから。それはこの世界の出身じゃないとかそういうことよりももっと大きな話で、恭介くんが恭介くんだからとしか言いようがない何かなのだ。
って、こんな事言うと彼氏のことを自慢してのろけてるって言われるかもしれないけどのろけたいくらい素敵な彼氏なのだ。
まるちゃんのババロアを食べ終わったら恭介くんは帰ってしまった。みんなはトランプでもやろうと引き留めたけど今から順番にお風呂に入ると聞いて慌てて帰っていった。
みんなのパジャマ姿とか見たらまた四つん這いになっちゃうから帰ったんだと思う。みおちゃんとか多分今日も凄い格好のパジャマって言えない下着みたいなやつだと思うし。
みおちゃんからの誕生日プレゼントはああいう下着みたいな寝間着だったけど出した瞬間に頭が湯沸かし器みたいに熱くなって顔が真っ赤になっちゃうのを恭介くんに見られちゃったよ。恥ずかしい。
私が着るのを期待してるんだろうな~恭介くん……恭介くんエッチだからなぁ。そうなのだ、恭介くんはこの世界の出身じゃないから本当にエッチなのだ。
今はお母さんと私とでお皿洗いをしている。しずくちゃんとみおちゃんとまるちゃんの3人でお風呂に入っていて、ひよりちゃんがお皿を拭いてくれている。
足首の方は完全に治ったみたいでもう松葉づえもついていない。
だけど、ひよりちゃんは落ち着いてお風呂に入った方がいいだろうということでしずくちゃんがみおちゃんとまるちゃんを引き受けてくれることになった。
幼馴染だから操縦方法を心得ていると言っていた。頼もしい。前回のお泊り会の時にひよりちゃんでも抑えきれなかったあの2人と私だと大変なことになりそうな気がする。
お風呂の方から聞こえてくるキャーキャー言う歓声を聞きながらお母さんが言う。
「本当にみんな仲がいいのね。私も
「うん、恭介くんが優しいからみんないっぱいお返ししてあげたいんだと思う」
「そうだな、恭介には感謝の気持ちでいっぱいだ。本当に何度助けられているか分からないからな」
「本当、我が娘ながらちょっと心配になる人の好さよね。恭介くんにはしっかりして貰わないと。まあ恭介くんなら大丈夫とは思うけど、ひよりちゃんやしずくちゃんみたいなしっかりしたお友達がいれば大丈夫なのかしら」
お母さんが失礼なことを言っている気がする。
「え~、私しっかりしてるって評判なんだよ」
「はいはい、自分の娘がしっかり者で嬉しいわ」
「陽菜ちゃんをしっかりしていると言っている声は聞いたことがないな。どっちかというと愛されキャラだと思うのだが」
私たちの会話はしずくちゃん達がお風呂から上がってくるまで続くのだった。
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週四日の18時に最新話公開中
次回更新は8月6日です。
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