第239話 創作意欲が刺激されたのかもしれない
翌日の保健体育の試験を含んだ期末テストの最終日、結局俺はしずくにはお仕置きをしなかった。
八つ当たりでお仕置きが間違っているからとかじゃなくてしずくが薄いA4のノートくらいの厚さの本が入った紙袋を俺に渡してきたから。
「恭介さん、これ……この前はお世話になったから感謝の気持ち」
「えっと……しずくには逆にお世話になってばかりの気がするけど……」
実際にお弁当作りは陽菜と俺が付き合い始めた後も続けてくれちゃってるしな……流石に陽菜の手前悪いからと断ろうとしたら、陽菜がお弁当は三人でいいって言ってそのままになっちゃってる。そんなことを考えながら袋を開けて中を見ようとするとしずくに止められた。
「は、恥ずかしいから今は見ないで……それにひよりちゃんに見つかったら没収されちゃうから」
そうか……ひよりは風紀委員だから不要品を見つけると友達からでも容赦なく取り上げるもんな。
あの辺の融通のきかなさはひよりの性格を知った今ならあえて厳しくやってるって分かるけどね。仕事熱心で友達相手でもルールを曲げないのはカッコいいと思う。
まあ、ひよりに見つからないように家で見ればイイや。
……なんて思っていた時期が俺にもありました。
テストが終わって光画部に顔を出して、その後水泳部で間近に迫った夏の大会にむけて泳ぎまくり疲れた体で家に帰ってきた俺は紙袋を開いて衝撃の事実に直面することになる。
「きょうすけくんとしずくちゃん vol.4 イチャイチャ妊娠エッチ編」だった。
しかも自家製コピー本試し読み版! 全部がコピー用紙で表紙にでかでかと「サンプル」と書いてある。
何を言っているか分からないかもしれないけど、しずくはこのテスト週間にせっせと同人誌を描いて見本を製本していたらしい。パラパラめくってみると妊娠してボテ腹になったしずくときょうすけがせっせとエッチしていた。
保健体育の授業内容が妊娠から出産までを中心にしていたから創作意欲が刺激されたのかもしれないけど……しずくさん……これでまた学年1位とかとったら学年2位の子が可哀想だからせめて1位から陥落してあげて……
はぁ、無理なんだろうなぁ。また1位をとっちゃうお嬢様の涼しい顔が思い浮かんでため息が出そう。
それはそれとして陽菜の裸とかが描かれてなくて良かった。
いくら女性向け同人誌とはいえ元の世界の感性を持っている陽菜が自分の裸を精細な描写で全世界に公開されたら引きこもりになりそうだ。
一緒にお風呂に入ったらしいから釘を刺しておかないと……流石にライバルキャラで出した図書委員でしずくと同じ現視研の芥川は本人許諾があるから使ったんだと思うけど、
本気で内容を解説するとまたこの小説の存続が危ないからちょこっとだけ触れると、今回の「きょうすけくんとしずくちゃん vol.4 イチャイチャ妊娠エッチ編」はその名前の通り妊娠初期から出産までのイチャイチャ妊娠エッチを描いた全36ページの力作である。
前半は妊娠の発覚から妊娠初期でエッチが出来ない時期をお口やおっぱいできょうすけの
授乳手〇キされるきょうすけくんの顔がだらしなくて泣ける。しずくさん……俺こんな顔する時があるんですか? あるんですね……
「今飲んだ精液が赤ちゃんの一部になるんだね」とかちょっとドン引きするセリフが書いてあってしずくさんが怖いです。
その後マタニティブルーなんかを二人で乗り越えて最後は安定期のイチャラブボテ腹セッ〇ス! 圧巻でした。
えっと……こっちの貞操逆転世界の男性は性欲が薄いので妊婦相手だとまず勃たないみたいでこの時期のお腹が大きくなった自分まで愛して貰えるっていうのは女にとっては最高の幸せみたい。
とにかくこの最後のエッチ、きょうすけは何回射精したのっていうくらい射精する。結果しずくはぶっかけAVみたいにドロドロになってエッチが終わってる。その後、出産シーンで病院の一室で母子と父親が対面するシーンでハッピーエンド……なんだけど、頭が痛いよ。これがまた一般販売されるんだよね? 女性向けとはいえ……
あと、きょうすけの
これは陽菜の天然暴露とみおとした
前までの俺は彼女がいないフリーだったから同人誌のモデルにされても別にどうということはなかった(なかったのか?)けど、今の俺は陽菜という彼女がちゃんといるわけだし、これを見て陽菜がイヤな思いをしたら嫌だしなぁ。
タイミングを見てこの同人誌のことを陽菜に相談したいけど今はタイミングが悪い。
しずくの同人誌のせいで陽菜がエッチに不安を覚えているのに妊娠してもこんな風にぶっかけられてドロドロにされるとか陽菜が思い込んだら本当にエッチなんて出来なくなっちゃうかも。
うん、この同人誌は封印しよう。……封印するけど今勃起しちゃってるんだよね。内容的にはお腹が大きなしずくもすごくエッチだったし。
元の世界だと妊娠してる女の子にも需要があったしね。
しずくさん! お世話になります!
いつ抜くの? 今でしょ!
……
うん、スッキリしたけどこれは浮気って言われたら困るからこのことも陽菜に秘密かな……あれ? 隠し事の無いカップルを目指すはずなのにどんどん隠し事が増えてないか!?
でも今日はテストが終わったということで陽菜の部屋でお泊りの予定。
明日の土曜日の夜は陽菜の部屋に久しぶりに女子が集まるって一週遅れの陽菜の誕生日会およびパジャマパーティーをするそうだから陽菜と一緒にいられないし今夜のうちに陽菜成分をたっぷり吸収しておこう。
そのために一回ヌイて賢者モードになったと思えば浮気どころか陽菜のためみたいなもの!
嘘です、ゴメンなさい。そんな言い訳ばかりをしていたら本当に浮気者になりそうだ。
愛情と性欲は別っていう言い訳は通用しないからなぁ。
まあ、とにかく風呂に入って夕食を食べに陽菜の家に行こう。今日は午前中の授業だけで帰った陽菜が俺の好物を用意して待っててくれるってことだし。
ああ、そういえば剣道大会直前までは陽菜はちょくちょく水泳部のマネージャとしてお手伝いに来てくれていた。立場的には本気でマネージャーのつもりらしいのだがこの前倒れたばかりなのと夏が近づいてきて流石に日差しが強くなりすぎて来たので俺がストップをかけている。夏の地区予選がもうすぐだからそれは応援に来て欲しいけどね。
それでも免疫抑制剤を飲んでいる陽菜があんまり日焼けして欲しくないというのは本音なので。
元の世界のヒナの黒ギャルもあんまり焼いて欲しくなったんだけどね。どうしてるかな? ヒナ。
夕食の時間になったので陽菜の家に。
「いらっしゃい恭介くん。今日は凝った料理じゃないんだけど食材と料理方法を工夫してみました! じゃーん!」
そう言って俺の前に出されたのは一見ただのカツ丼だった。
「おお、美味しそうなカツ丼だね。食材ってカツに特徴があるとか?」
「うん、一口食べてみて。じゃあいただきま~す」
「分かった、じゃあ俺も……いただきま~す」
陽菜とさちえさんと三人の食卓でみんなで手を合わせて食べ始める。
パクッ……モグモグ
こ、これは!?
「チキンカツ? めちゃくちゃ美味しい!」
「そうなの、いい地鶏のお肉が手に入ったからチキンカツにしてチキンカツ親子丼にしてみたの。どうかな? 恭介くん親子丼が大好物だもんね」
ニコニコしている陽菜を前にチラッと横目でさちえさんを見るとこっちは怖いくらい満面の笑み。全てを包み込む聖母のよう。
いや、そんないい笑顔で見られても……何回も言いますけど親子丼はお断りですから。
いつになったら陽菜とエッチできるんだろう?
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※追記 コメントを頂いたので前話238話にて女性用コンドームの下りから書き足しました。まだ検討の余地はあるけど貞操逆転世界の避妊はこういう感じってことで理解して貰えればと思います。
興味のある方はお手数ですが前の話に戻って読んでいただければ思いますのでよろしくお願いします。
仲良くなった作家さんが気付いたら垢BANされておりました。
攻めた作品を書く人だったので仕方ないかと思いつつ、他山の石で自分も気を付けようと思います。って言ってもこの作品って全然エッチに書けないんで大丈夫かなぁって思うんですけどね。みどりのはエッチシーンが下手です。
流石に恭介と陽菜の初めてのエッチを全力で書いたらBANされるんでしょうか?
でも誰にも望まれてないそんなエッチシーン書いてもしょうがないし、余裕余裕♪
週四日の18時に最新話公開中
次回更新は8月4日です。
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