第226話 背中を洗うのが慣れているみたい
小烏家のお風呂は大きかった。うん、本当に大きい。
湯船を張って入浴の準備をするが6人くらい湯船に浸かれそう。
全体的に木製で、床も湯船も木張り、桶や椅子まで全部木で出来ていた。
脱衣所も広く銭湯みたいに棚があってそこに服を脱ぐようになっている。今日の俺の下着は剣道仕様でふんどしなのでふんどしを脱がずに入浴させて貰うことにした。
さすがに水着やいつもの★型のニプレスは持って来ていなので
どうでもいいけど本当にそんなにガン見しないで欲しい。
「ああ、すまない。本当に良く鍛えたのだな。思わず見とれてしまった。それじゃあ私も服を脱ぐから手を貸してもらえないか」
小烏は向こうを出る前に汗で濡れた道着から替えの道着に着替えていた。だから綺麗な汚れていない道着を脱がせていく。紐をほどいて道着から腕を抜いて脱がせ、後ろに回り込んで袴を脱がせて道着の下に着ていたTシャツまで脱がせた。
俺の裸を小烏に見られないように、俺は明後日の方向を向いて極力小烏の肌を見ないようにする。
小烏の後ろにいる俺から見ると小烏のブラ紐とパンツだけが見える状態。小烏が背中に手を回してブラのホックを外す。パサッ……ブラがカゴに置かれる。
貞操逆転世界の女の子だから小烏としては俺に裸を見られるのは恥ずかしいけど我慢できるレベルなのだろうけど俺の心臓がヤバい。
片足立ちが出来ないので小烏の左側に回り込んで少しかがんで肩を掴ませる。俺の肩を支えにするようにして小烏が片足ずつパンツを脱いでいく。痛む左脚を持ち上げたせいか一瞬小烏がぐらつく。
慌てて手で腰を支えてやると「ひゃんっ」と可愛い声を出す。
さすがにこの段になるともう無理で俺の股間はふんどしの中でガチガチになっていた。ある意味ではしっかり絞めている褌でよかったともいえる。
左腕を支えるようにして洗い場までエスコートする。小烏はひょこひょこと歩くようにして木製の椅子に腰かけた。ふぅ……ちょっと落ちつく。
いや、目の前には全裸の小烏の真っ白い背中と綺麗な曲線を描くお尻があるから落ち着けるはずはないんだけど、小烏がペッタンコなおかげで後ろから見ると全くおっぱいの存在を感じずに済んで少し気が楽になる。同じ体勢で陽菜かしずくあたりが座っていたらそのままでも横乳が見えそうだし。屈んだ拍子に先っぽが見えたりしそうだけど小烏ならその心配はない。
「ムッ、なんだかすごく失礼なことを考えられている気がするのだが!」
勘がいいな!? この勘が強さの秘密か?
後ろからお湯をかけてやる。湯加減はちょうどいいみたいで小烏が気持ちよさそうな声を上げる。
「ああ、生き返るな」
「じゃあ頭にもかけていくから髪はシャンプーで自分の手で洗ってくれ」
「分かった」
それからは二人とも極力事務的に頭と体を洗ってかけ湯していく。
多分小烏も少し冷静になって自分がとんでもないことをしていると痛感しているところだろう。
「どこかかゆいところはないか?」
小烏の背中をタオルで洗ってやりながら聞く。真っ白い小烏の背中は染み一つなく滑らかでいつまでも洗っていたい。
「大丈夫だ。ずいぶん背中を洗うのが慣れているみたいだが誰かの背中を洗うことなんてあるのか?」
「小学生の頃はよく陽菜とお風呂に入って洗ってやったなぁ」
考えてみるとあの頃の陽菜は今の小烏と同じくらいの胸だったかも。
「……」
小烏がちょっと無言になる。他の女の子の名前を出すようなデリカシーのないことをしたから機嫌を損ねたかな。
小烏を介助して湯船に浸からせる。俺も手早く頭と体を洗って一緒に湯船に浸かる。叩かれた打撲の跡が染みて結構痛い。
二人で湯船に浸かっている今の方がお互いの裸がお湯で見えなくてかえって落ち着くくらい。風呂が広いので同じ方向を向いて二人分くらい間をあけて湯につかっている。
横を見てしまうと洗った髪をタオルで巻いてアップにしている小烏がいるので真正面を向いて心の中で般若心経を唱える。
「恭介、試合の話をしていいか?」
試合が終わってから二人で互いに落ち着いて話が出来るようになったのは今が初めての時間だった。
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