第225話 お風呂に入りたい!
小烏道場に着いたのでとりあえず
元々、レンタカー代ももちろん先生への謝礼も小烏がインスタグラムで稼いでる収入からちゃんと払おうと思っていたのだが先生はこのぐらいはカッコつけさせなさいと言って受け取らない。
受け取らないけど延滞料金を気にするのはカッコがついているんだろうかと思ったら最後に捨て台詞を残して帰っていった。
「延長料金取られちゃったらレズ風俗に行ける回数が一回減っちゃうじゃない!」
はぁ……本当に惚れそうなくらいカッコイイ先生なのになんでそこでそういうことを言っちゃうんだろう。
俺の高校時代の恩師の思い出をレズ風俗で上書きしないで欲しい。
小烏は足が痛いのかペタンと道場の床に座り込んだままで眠たそうにうつらうつらしており、そうすると年相応というかなんだか可愛らしく見えた。小烏の親父さんは近郷練習会の打ち上げに参加しているそうで、小烏の捻挫を伝え忘れてしまっていたのでまだ戻っていなかった。
日頃集まれない剣道の指導者同士で集まるので毎年近郷練習会の日は帰りがいつも遅くなるのだそうだ。
「小烏、俺はこれで帰るけど大丈夫か? 親父さんにはちゃんと連絡しておけよ」
「お風呂に入りたい……」
「は?」
「お風呂に入りたい! うちのお風呂はしゃわーもないからこの足では一人で入れない。お湯をかけるのだけでも手伝ってくれ」
一回目の「お風呂入りたい」は多分寝ぼけた小烏の半分寝言、俺が聞き返したことでちょっと意地になった小烏の意地っ張り発言が二回目の「お風呂に入りたい」だ。流石に小烏とは付き合いも長いしそのぐらいは俺にもわかる……けどお風呂って。
足首は防水のテーピングだし治療前にしっかり拭いて貰ったらしいからビニール袋にでも入れて口を縛れば大丈夫、今日はあれだけ汗をかいたから体を拭くだけじゃ無理、絶対頭も洗いたいといつもの小烏からしたらありえないほどのワガママを言う。
顔が真っ赤だから完全にテンパっているんだと思うが、理屈だけは通っているのが凄い。
陽菜やしずく、藤岡に助けを求めることも考えるがもう夜も遅く皆も家についたばっかりで疲れているだろう。こっちに来てもらったらヘタすると来てもらってお風呂に入れてる間に終電が出てしまうかもしれない時間。
ダメだ、諦めよう。
「分かった。お風呂の入れ方を教えてくれたらお湯を張ってくるから着替えとかタオルの準備をしておいてくれ」
「本当か!? 恭介は絶対ダメっていうと思っていたのに」
「流石に今日あれだけ汗をかいたのを知ってるのに風呂に入るなとか言わないって」
「ひょ、ひょっとして私は今すごく汗臭いのか!? 汗臭い私を哀れに思って恭介は優しくしてくれているのか」
謎の取り乱し方をする小烏。もう、今日はどうしちゃったんだよ。
ギュッと抱きしめてやって小烏の頭に自分の鼻を押し付ける。
「大丈夫、汗の臭いはするけどひよりの匂いはいい匂いだよ。だから一緒にお風呂に入ろう」
あれ? お湯をかけるだけのはずが勢いで一緒にお風呂に入るって言っちゃった!?
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次回お風呂回!
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